謎の光
時計のアラームが鳴る。その音で目が覚めた。どうやら朝のようだ。
僕は、見知った天井を見る。いつの間にか家に帰っていた。きっと僕は兄さんと入れ替わったんだろう。あの兄さんだ僕より京ちゃんたちの力になっただろう。
僕は朝食を済ますと学校へと向かった。
学校で祥ちゃんに会うと昨日の出来事を聞いた。
なんてことはない幽霊なんていなかったんだ。僕は、すこしほっとした。やっぱり兄さんはすごいと思った。
放課後になった。僕は急ぎ足で部室へと向かう。
部室には、ゲームをしている祥ちゃんがいた。
そして、もう一人ゲームをしているツインテールの女の子がいた。あの後ろ姿は水島さんじゃないよね。
「祥ちゃんその子は」
僕は祥ちゃんを見る。
「コイツは幽霊の正体だ」
「幽霊じゃないっす。如月っすよ」
如月という女の子は祥ちゃんと文句を言っていた。
「昨日ぶりっすね。なんか雰囲気が違いますけど」
「昨日? ああ、あれは僕じゃないよ。僕の兄さんだよ」
「兄さん? 」
如月さんの疑問は最もだ。そのことについて、祥ちゃんが答える。
「こいつは、二重人格なんだよ。記憶は共有していないからなんにも覚えていないんだよ」
「なんすか、そのファンタジーな設定は」
キラキラした目で如月さんが僕を見た。
「まあちょっとした理由でそうなっただけなんだよ」
如月さんはうんうんと頷いていた。
「この部は面白いっすね。キャラの違う人間がこんなにもいるっす。だから、うちもこの部活に入るっす」
如月さんはキラキラした瞳で祥ちゃんと僕を見た。
「却下する」
「なんでですか。こんな可愛い後輩が入部するんすよ。いいじゃないですか」
祥ちゃんは難しい顔をしながら如月さんを見ている。
そして、ため息をついた。
「この部にもう女はいらん。水島と京子で十分だ」
祥ちゃんは怒鳴り声を上げた。その声は、廊下まで響くくらいだった。
祥ちゃんが怒鳴り終わると同時にガラガラと部室のドアが開いた。入ってきたのは水島さんと京ちゃんだ。
「入部してもいいわよ」
京ちゃんが部室に入って来て開口一番に発した言葉がそれだった。僕は驚いて京ちゃんを二度見した。
「マジっすか。やっぱり姉御は寛大っす」
如月さんは京ちゃんに抱きついていた。京ちゃんは姉御と呼ばれ、まんざらでもないようだ。
京ちゃんは如月さんに入部届けを渡すと紙に書く内容を指示する。まあ、名前と学年組書くだけだけど。
「できたっす」
如月さんは入部届けを京ちゃんに渡す。
「今日から如月奈央の入部を許可する」
京ちゃんはオーバーアクションで如月さんを指差し叫んだ。
「よろしくね、奈央ちゃん」
「よろしくっす」
水島さんが如月さんと握手をする。僕も同じように握手をした。
「よろしくね、如月さん」
「奈央でいいっすよ」
「女の子を呼び捨てにするのはちょっと抵抗が」
僕は恥ずかしくなり頭を掻いた。
「神山先輩はピュアっすね」
如月さんは僕の横腹を肘でつついてきた。
「じゃあ、姉御みたいにちゃん付けでなっちゃんって呼んでください」
如月さんはワクワクしながら僕を見ている。なっちゃんなんて呼びたくないです。
「じゃあ、奈央ちゃんで」
「えー。そこは、なっちゃんって呼んでくださいよ」
「嫌だよ」
奈央ちゃんが僕の前で頬をふくらませた。まあ当然怒ってるフリなんだろうけど。そこに、水島さんが僕と奈央ちゃんにお茶の入った湯呑を置いてくれた。
「ありがとう」
「先輩サンキューっす」
水島さんの顔は何か考え事をしている感じだ。
「どうしたの水島さん」
「いやあの幽霊事件でまだわからないことがあるの」
水島さんの一言に僕はなんのことかわからなかった。
「あの時見えた。ボーッした光はなんだったんだろう」
「どうせ、如月が懐中電灯でも照らしてたんだろ」
祥ちゃんはゲームをしながら話を聞いていたようだ。
「うちじゃないっすよ。懐中電灯なんて持ってないっすもん」
奈央ちゃんは難しい顔しだした。
「でもたしかに、うちも屋上でボーっと光る人影を見たっす。それで、怖くなって届かない窓を諦めてベランダから帰ることに切り替えたっす」
僕たちは、奈央ちゃんを一斉に見た。ということは本当に、幽霊がいた?
湯呑が割れる音が聞こえた。僕はその音の方を見た。そこには固まっている京ちゃんがいた。
「また、幽霊探しに行くか」
一人だけやる気満々で祥ちゃんが笑っていた。
「誰が行くかー」
この言葉を京ちゃんが発したのは一分後のことだった。
学園七不思議弐“屋上の幽霊”解明?