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学園F・N・F解明部  作者: 山神賢太郎
学園F・N・F解明部
31/37

誕生日パーティー

 「ちょっと待ちなさいよ。これほとんど私たちじゃないの」

 京ちゃんはあるメモ用紙を僕たちに突きつけて怒鳴っていた。その紙には一学期に探した七不思議が書かれていた。

 学園七不思議

 一、消えた教室

 二、屋上の幽霊

 三、御身代様の伝説

 四、謎の男子生徒

 五、当たる占い師

 六、新生徒会の陰謀

 七、ミズの精

 たしかに、半分以上が僕たちの関わっている七不思議だ。それに四と七は学園外のことだし。六は七不思議と呼べるのかも謎だ。

 「まあまあ落ち着いてよ京ちゃん。今日は京ちゃんの誕生日なんだからさ」

 「それとこれとは別よ。みんなが集まれる日なんだからこういう時に一学期のまとめという物をしないといけないわけ。これは部長の仕事なんだから」

 だったら一人でしてくれたらいいのに。

 「みんないい? 一応、一学期の目標はこれで達成したということにするわ。いろいろと面白かったということで納得することにしたから」

 だったら怒鳴らなくても良かったんではないでしょうか。 

 「次は二学期の目標を決めようと思うんだけど何かいい案はある? 」

 京ちゃんは僕たちの顔を一人ずつ見ている。

 二学期もまた何かしなければならないのかと思うと憂鬱になる。京ちゃんは僕の目をまっすぐ見ている。京ちゃんにはなにか見透かされているような気がして、目を逸らしてしまった。

 「ちょっと何目を逸らしてんのよ。真逆、何もしたくないなんて思ってんじゃないでしょうね」

 本当に見透かしてきましたよ。本当にこの人は恐ろしい人だ。

 「いやいや、そんな訳無いじゃん。ただ、まだなにも思いつかなかったから申し訳なくてね」

 笑顔を取り繕ってみるけど引きつった笑顔になってしまう。

 「ならまあいいわ。あんたもちょっとはやる気があるみたいだし」

 ごめん。やる気は一つもないです。

 「さて、まあいいわ。今日は私の誕生祭だからこういう部活の話は後にしましょう」

 京ちゃんが言い出したんじゃないかよ。この人は本当に暴君だよ。

 京ちゃんのその一言で、誕生日パーティーの準備が行われた。

 僕は買ってきたケーキを机に取り出し、ロウソクを立てる。十七本のロウソクを立て終わり、それに火を灯そうとライターで火を点けようとした。

 しかし、手が震えて火が点けられなかった。

 僕の異変に気がついたのか祥ちゃんが僕に手を差し出してくれた。

 「大丈夫か? 俺が着けるからお前は他の事してろよ」

 「ごめん」

 「謝ることじゃない。俺たちにとってそれはあまりいいものじゃないしな」

 僕はそれを祥ちゃんに任せ、他のことをしようと買い物袋を漁ってみた。買い物袋の中には、パーティークラッカーなんかのパーティーグッズが入ってあった。他の買い物袋も漁ってみる。おかしい、お菓子がない。それに気がつき席を立つと一言

 「お菓子がないみたいだから、買ってくるよ」

 そう言って買いに出かけた。

 近くのコンビニへ向かいお菓子を手当たり次第に買っていく。その時になにか妙な映像が頭に浮かんだ。その映像は、京ちゃんの部屋で四人でジャンケンをしている。ジャンケンで負けた人が買い出しにいくそんなどうでもいいことだった。僕はそのジャンケンでどうやら勝ったみたいだ。そんな至って普通のことを思い出していた。

 まあ気にすることでもないと思い、買い物を終えるとすぐに京ちゃんの家に向かった。

 京ちゃんの部屋に戻るとなぜか祥ちゃんが伸びていた。まあ、京ちゃんが伸したんでしょうけど。一応祥ちゃんの心配をしておこう。

 「なにがあったの? 」

 その質問に伸した張本人が答えてくれた。

 「このバカが部屋に飾り付けをしていた奈央ちゃんのスカートの中を盗撮していたのよ」

 それはもう同情のしようがないよ。ただの変態じゃないか。

 「いやこれにはワケがあるんだ」

 「そう。そのワケを聞きましょうよ」

 京ちゃんが仁王立ちをして祥ちゃんを見ている。

 「奈央が脚立で部屋の飾りをつけてる時に声を掛けたんだよ。そして、その振り返った瞬間がまるで美少女ゲームのスチルのように見えて、それで写真を撮っただけだ。決してやましい気持ちがあってスカートの中を盗撮しようなんて思っていない」

 それはやましい気持ちしかないでしょう。

 「やましい気持ちしかないじゃない」

 京ちゃんのミドルキックが祥ちゃんの右太ももにクリーンヒットした。もうこの人は本当にどうしようもない。

 倒れた祥ちゃんの元に盗撮された本人である、奈央ちゃんが近づいた。奈央ちゃんその人に罵声を浴びせていいよ。

 しかし、僕のその考えは全く違ったものとなった。

 「写真を撮った理由は私が可愛かったからっすよね」

 この子は何を言っているのだろうか。

 「その通りだ。この俺が現実リアルで可愛いと思ったのはお前が初めてだよ」

 祥ちゃんそれは真顔をで言うことかい。あんたは恥とかはないのかい。

 「だったら私、全然写真撮ってもらって構わないっす」

 なんで顔を赤らめてそんなことを言っているんだ。この男はただの変態なんだよ。

 「なら、この白スクに……」

 なぜ持っているのかよくわからない白いスクール水着を取り出したところで京ちゃんの鋭いツッコミという名の延髄蹴りが祥ちゃんを捉えた。

 「今日が何の日かわかる。私の誕生日なのよ。そこでイチャイチャしないでもらいたいわ」

 たしかにその通りだ。今のやり取りで僕は今日が何の日か全く忘れていた。

 「祥ちゃんも奈央ちゃんもそういうことは京ちゃんの誕生日が終わってからにしなよ」

 そうこうして、京ちゃんの誕生日パーティーの準備が整った。

 「誕生日おめでとう」

 僕たちはクラッカーを鳴らした。

 ―――パーン

 「みんなありがとう」

 京ちゃんはそう言うとケーキに刺さったロウソクの火を吹き消した。

 京ちゃんの一息でロウソクの火は一気に消えた。それと同時に僕たちは京ちゃんに盛大な拍手を送った。

 「じゃあみんなプレゼントをよこしなさい」

 その京ちゃんの横柄な一言に、みんなはいつものことだと思いながらプレゼントを出していく。

 「では、最初は私からね」

 水島さんが京ちゃんに渡したものはクマのぬいぐるみだった。京ちゃんにクマのぬいぐるみはちょっと似合わないな。なんてことを思っていたが当の本人は満更でもないのか、照れていた。

 「こ、これは可愛いわね。あ、ありがとう」

 京ちゃんはそのぬいぐるみが気に入ったのか、軽く抱きしめた。

 「じゃあ、次はうちっすね」

 奈央ちゃんが取り出したのは分厚い本だった。

 「これは、世界の不思議が書かれている本っす。姉御にはぴったりだと思いまして」

 京ちゃんの目はすでにキラキラしていた。

 そして、奈央ちゃんから本を奪い取るとペラペラとめくっていく。

 「奈央ちゃん。ありがとう。これは今後の活動にも役に立つわ」

 「喜んでもらえて嬉しいっす」

 奈央ちゃん。余計なものを京ちゃんに渡してくれたようだね。この先、僕たちに待ち受ける過酷な部活動が目に浮かぶよ。

 「じゃあ、今度は僕からのプレゼントだよ。はい」

 カバンから小さな箱を取り出し、京ちゃんへ渡した。京ちゃんはそれを受け取るとすぐに箱の中を確かめる。箱の中身は、桜の花びらの形をした飾りがついた髪留めだ。

 「毎年同じようなものだけど、京ちゃんにはこれが似合うかなと思って」

 僕は照れながら京ちゃんを見ている。京ちゃんも少しだけ照れながら、今つけている髪留めを外し、新しい髪留めをつけてくれた。

 「サンキュー」

 「うん、似合ってるよ」

 「当然でしょ」

 照れ隠しなのか素っ気ない態度だが、それが何となく僕には嬉しかった。

 「じゃあ、最後は俺からだ」

 祥ちゃんは細長い箱を取り出した。その箱を京ちゃんに渡す。

 「お前にはきっと似合うはずだ」

 京ちゃんは、その箱を開けた。その中には、なんとムチが入っていた。

 「祥悟君。これはどういうことかな」

 京ちゃんはメラメラと怒りの炎を燃やしているようだ。

 「お前には何がいいか考えた結果。お前のイメージが女王様だと思い。そのイメージにピッタリな物を贈ろうと思ったというだけだ。ありがたく受け取ってくれ」

 祥ちゃんは満面の笑みで京ちゃんを見ている。

 しかし、京ちゃんは祥ちゃんの顔とは逆にかなりの怒りを見せていた。

 「あんたは毎回毎回、なんでこんな変態グッズを私に渡してくるのよ」

 京ちゃんは今まさにプレゼントされたムチで祥ちゃんの背中をバシバシと叩いている。まさに鬼に金棒と言ったところだ。

 祥ちゃんよかったね、気に入ってもらえたようで。

 祥ちゃんの悲痛な叫びが部屋に響いた。


 祥ちゃんの拷問も京ちゃんが疲れたため終了した。

 「ふぅ。とりあえず、ケーキでも食べましょうか」

  京ちゃんがそう言うと水島さんがホールのケーキを人数分に切ってくれた。水島さんは、それをお皿に一つずつ盛り付けるとみんなに渡していく。みんなの元にケーキが置かれたのを合図に一斉に、

 「いただきます」

 と手を合わせた。

 みんなは、水島さんが淹れてくれた紅茶を飲みながらケーキを食べた。

 「姉御これなんですか」

 奈央ちゃんは本棚にある赤い本を指さしている。

 「それは、昔のアルバムよ」

 「見てもいいですか」

 「いいわよ」

 奈央ちゃんは本棚からアルバムを取り出すと何かの切れ端がアルバムから落ちた。僕はそれを拾ってみる。どうやら、新聞の切れ端のようだ。

 「こ、これって」

 ありえない。どういうことだ。なんで。頭が痛い。頭が割れそうだ。意識が遠のいていく。

 僕の意識は暗闇へと落ちた

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