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学園F・N・F解明部  作者: 山神賢太郎
ミズの精
26/37

汽車に乗って

  そして、休日。

  僕と祥ちゃんと京ちゃんは、列車を待っていた。

  田舎の列車は乗り遅れると次の便が一時間以上もあるから、早めに行動しないと乗り遅れる危険性がある。

  僕たちが汽車に乗ると奈央ちゃんと水島さんが乗車していた。

  僕たちは一言挨拶を交わすと、まるで貸切のような汽車に一列に座った。

  目的地は、妖怪伝説が多く残っている。あと世界でも有数のラフティングの名所らしい。

  僕は、地元だけどラフティングだけはあまりしたいと思わない。あんなとんがった岩がいっぱいある激しい流れの川を下るなんて考えただけで体が震える。

  そんなことを考えていると目的地についた。

  僕たちは、無人の休憩所を通り過ぎ、外に出た。

  外は、クーラーの効いた列車と違って蒸し暑い。坂道を上り橋を渡って目的地を目指す。

  ここから徒歩で一時間歩かなければならない。

  僕は歩きながらバスの時刻表を見たけど、今から二時間後にバスが来るらしい。僕は落胆しながらダラダラと歩き続けた。

  みんなも暑さでかなりの汗をかいていた。まあ、体育会系の京ちゃんはまだ元気なんだけど。

  そうして、一時間僕たちは歩き続け、目的地である川についた。

  川の水を汲んで顔を洗う。ちょうどいい冷たさで気持ちが良かった。

  京ちゃんは持ってきた麦茶を一杯飲むと立ち上がり、いつもの仁王立ちをしている。

  「みんな例のものは持ってきたわね」

   僕たちはコクりと頷く。

  そして、近くに合った休憩所のトイレへと向かった。

  

  僕と祥ちゃんは支度を整えるとトイレから外に出る。

  休憩所のちょうど影になっているベンチに陣取り京ちゃん達を待った。

  しばらくして、京ちゃん達の話し声が聞こえた。

  僕の横ではなぜか、祥ちゃんがカメラを構えていた。

  そして、休憩所に水着姿の京ちゃん達がやってきた。その瞬間祥ちゃんはファインダーを覗き、連写をしている。

  「ちょっと、祥悟あんた何してんのよ」

  京ちゃんが祥ちゃんの構えるカメラのレンズを睨みつける。

  祥ちゃんはカメラから覗くのをやめて京ちゃんを見ている。というか、京ちゃん達の胸を見ているようだ。

  「いや、お前らの水着姿を撮っているだけだが」

 再び、カメラのファインダーを覗き込み京ちゃん達を撮っている。たまに、ズームしている音が聞こえるんだけど。

 京ちゃんは白いビキニで仁王立ちして祥ちゃんを睨んでいる。

 まあ、僕も男子高校生であるから少しは見てしまいます。 

 京ちゃんは胸も大きい方で、ウェストも細くまるでモデルのような体型だ。

 水島さんは水色のビキニを着ていた。着痩せする方なのか京ちゃん以上の胸の大きさだった。祥ちゃんに撮られて恥ずかしかったのか京ちゃんの背中に隠れている。

 奈央ちゃんは、まあ残念です。なぜこの人だけスクール水着なのだろうか。

 奈央ちゃんは祥ちゃんが自分を撮っていないことに気付き、祥ちゃんに近づいてきた。

 「宮城先輩は、胸が大きい方がいいんですか? 」

 奈央ちゃんは怒りながら祥ちゃんの持っているカメラを鷲掴みして揺らしていた。

 祥ちゃんはその奈央ちゃんの手を掴み奈央ちゃんをじっくりと見ている。

  そして、一度だけ大きく頷くと

  「合格だ」

  と一言言うと奈央ちゃんの肩に手を置き何度も頷き、カメラを構えて連写している。

  僕は久しぶりにこの人が変態だということを思い出した。

 「じゃあ、川へ行くわよ」

  僕は京ちゃんのその一言で、荷物を肩にかけベンチから立ち上がった。

  「その背中のアザみたいなのなんすか」

  祥ちゃんに激写されている奈央ちゃんが僕の右肩を指差していた。

  「ああ、これは火傷だよ」

  「あ……すいません」

  奈央ちゃんは聞いちゃまずいと思ったのか、申し訳なさそうにする。

  僕は気にしないでと手を振った。

  兄さんが死んだあの日についた火傷は右肩から左脇腹にかけてアザになっている。僕はあの日のことを思い出そうとしていた。

  しかし、思い出そうとすると頭が痛くなる。僕は、あの日のことがトラウマになっているんだ。だから、兄さんの人格が出来たんだ。

  僕は、その痛みに耐え切れず、こめかみを抑えながらしゃがみこんでしまった。

  「大丈夫っすか」

  奈央ちゃんが心配そうにこっちを見ている。

  「大丈夫。いつものことだから」

  その時声が聞こえた気がした。

  ―――思い出すな。

  この声は、兄さんの声。ノイズがかった声が頭の中で響いていた。

  「本当に大丈夫っすか」

  奈央ちゃんが僕の顔をのぞき見ていた。

  「大丈夫」

  僕は、本当は大丈夫じゃなかった。頭痛がいつもよりひどい。視界も白くぼんやりしてきた。

  左手に違和感がある。誰かが僕の手を持っているみたいだ。その手に助けられ僕は立ち上がった。

  そして、休憩所のベンチに横になる。

  「神山先輩大丈夫なんすか」

  この声は奈央ちゃんか、朦朧とする意識の中でぼんやりと聞こえた。

  「この時期になるとよくあることなんだ。気にするな。お前は京子と水島の方に向かえ。ここは俺が見ているから」

  どうやら僕を助けてくれたのは祥ちゃんらしい。僕の意識はそこで無くなった。

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