学園F・N・F解明部VS坂崎
そして、占う日が来た。
僕たちは、坂崎君がいる教室へと向かう。
二年三組の教室には人集が出来ていた。
僕たちは教室に入る。京ちゃんが坂崎君の元へ歩いていく。京ちゃんは今占いをしてもらっている女子生徒の後ろの席に座り、順番を待つ。
その生徒が席を立ち、坂崎君に礼を言うと教室を出ていった。
「次は私よね」
京ちゃんは坂崎君に問う。
坂崎君は京ちゃんに微笑んでいた。
「ああそうだよ、春風さん。まさか君のような占いを信じていない人が本当にここに来るとは思わなかったよ」
坂崎君は京子ちゃんに椅子に座るように促した。
「どうも」
京ちゃんは一言礼を言うと椅子に座る。
「じゃあまず、誕生日を教えてもらおうか」
「七月二十九日よ」
「なるほど」
坂崎君は京ちゃんの誕生日をメモに書いた。
そして、分厚いノートを取り出すと、ペラペラとページをめくり出した。自分が目当てのページにたどり着くと京ちゃんの誕生日を書いたメモに何かを書く。
「では、次は手相を見るので、両手を見せてください」
「はい」
京ちゃんは無造作に両手を机の上に置く。坂崎君はその手を手に取り、まじまじと見ている。何かがわかったのかうんうんと頷くとまたメモに何かを書いていく。
そして、メモを書き終わると、京ちゃんを見た。
「なにがわかったの」
京ちゃんが乱暴に言う。
「ええいろいろとわかりましたよ。あなたは小さい時に大切なモノを失いましたね」
「そんなの誰でもあることでしょ」
京ちゃんはイライラし始めた。まあ、坂崎君の喋り方や仕草が京ちゃんの嫌いなタイプであるからそうなるのも仕方ない。
「そうでしょうかね。それは大事な人なんじゃありませんか」
「あんた何が言いたいのよ」
京ちゃんは机をバンと叩くと立ち上がり坂崎君を睨む。
僕の横にいる祥ちゃんも苛立ち始めていた。
「気に障ったのなら申し訳ありません。では、話を変えましょう。どうぞ、椅子にお座りください」
坂崎君は笑顔を絶やさずに京ちゃんに言った。
京ちゃんは椅子を強引に引き足を組んで椅子に座る。あきらかにイライラしている。
「あなたは最近何かを落としませんでしたか」
京ちゃんの顔がピクっと動く。
「ええ、そうよ。友達からもらったものなんだけどそれをどこかで無くしてしまったの。なんでわかったの」
若干のぎこちなさがそこにはあった。横にいる祥ちゃんは笑っている。どうやら作戦がうまくいっているようだ。
「あなたの誕生日や手相から現在のことがわかるのですよ」
坂崎君はニヤリと笑う。
「今日はその落し物がどこにあるか教えて欲しいのよ」
「本当にそのことでいいんですか」
坂崎君は、不気味に笑い、京ちゃんを見る。
「えっ、ええそうよ」
京ちゃんはどもりながら演技を続ける。横にいる祥ちゃんは何か焦っているように見えた。
「もう一度、手を見せてもらえますか」
「いいわよ」
京ちゃんは冷や汗をかきながら、手を机の上に出す。坂崎君はその手を取り、じっくりと見る。
そして、また不気味に笑い、京ちゃんを見る。気のせいかもしれないが、後ろにいる僕たちの方も見てきた気がした。
「あなたはわざと落し物をなくしたのではないでしょうか」
京ちゃんは僕たちの方に振り向いた。あの顔は焦っている顔だ。祥ちゃんも難しい顔をしている。
「い、いやそんなことないわよ」
祥ちゃんと京ちゃんは焦っている。これは、僕たちのやろうとしていることがバレたのか。でもどうして。
僕は、考える。
その時だった。祥ちゃんが口を開く。
「もしかして、この中に裏切り者がいるのか」
祥ちゃんは焦りからなのか僕たちを見た。
「お前か」
祥ちゃんは奈央ちゃんの肩を掴む。
「何もやってないっすよ」
奈央ちゃんは、首を何度も横に振った。
「じゃあお前か」
今度は僕の肩を掴む。
「僕じゃないよ」
僕も首を横に振る。
「じゃあ、お前か」
祥ちゃんは水島さんの目を見た。水島さんは祥ちゃんの視線が耐えられなかったのか、祥ちゃんから目をそらす。まさか、裏切り者は水島さん? 僕は昨日、水島さんが部室に来なかったことを思い出した。
「なんで、そんなことを」
僕は水島さんに近づき言った。
「私はただ……」
水島さんは無言で申し訳なさそうにしている。
「お前いくらもらったんだ」
祥ちゃんが水島さんの肩を揺らす。
「いくらもらったんだ。言え」
祥ちゃんは水島さんを怒鳴り散らした。
「……」
それでも水島さんは何も言わなかった。
そして、坂崎君が笑いながらこちらにやって来た。
「君たち。占いの邪魔だから出て行ってもらえないかな」
坂崎君は僕たちにそう言うと、祥ちゃんを見て鼻で笑う。祥ちゃんは坂崎君を睨みつけている。
「坂崎てめぇ」
祥ちゃんは坂崎君に殴りかかろうとする。僕はそれを必死に止めた。
祥ちゃんは殴るのを諦め、教室から出ていった。
僕はそれを黙って見ることしかできなかった。
坂崎君は祥ちゃんが教室から出て行くのを見ると少しだけ微笑み僕たちを見た。
そして、坂崎君は僕の方を見るとなぜか、首を傾げる。
「君はもしかして……。いや僕の気のせいだろう」
僕はその言葉の先がなんなのか気になったが何も言わなかった。
「それでは占いを再開しますね」
坂崎君は僕たちを鼻で笑うと、京ちゃんの元へと行く。
そして、椅子に座ると占いを再開した。
「あなたの落し物の話でしたね。それをなぜ、わざと落としたのか疑問ですが。それはまあいいでしょう。あなたがわざと落としたのは、紙ではないでしょうか」
「ええ、そうよ」
京ちゃんはもうどうでもいいという顔をしていた。
「誰かを罵るようなことを書いたもの」
京ちゃんは驚いた顔をした。
「違うは私がわざと落としたのは、ゲームの発売日をメモした紙よ」
坂崎君は京ちゃんが言ったことに対して驚いた。
「えっなんでだ。君は僕を罵った紙を落としたんじゃ」
坂崎君を取り囲んでいたギャラリーがざわめき始めた。
そして、祥ちゃんが教室の扉から入ってきた。
「クックック。ハーッハッハ。お前は騙されたんだよ」
「何をした祥悟」
坂崎君は立ち上がり、笑っている祥ちゃんを睨む。
「一週間前のことだ。お前は京子から占いの予約があると、すぐに京子のことについて調べ始めた。その時、京子が何かをなくしたことを仲間から知った」
周りのギャラリーが坂崎君のことを睨んでいる。
「いや違う。僕に仲間なんていない。本当だ」
坂崎君はギャラリーに向けて必死に弁明をする。
「そして昨日、水島からあるメモを渡されたはずだ。それも、お前が落としたと勘違いしたメモを水島が拾い、目の前にいたお前に渡した」
坂崎君は焦りからなのか汗をかいている。
「それを読んだお前は、京子がお前を罵った紙をわざと無くしたことを知る。そこでお前は、水島にポケットマネーを渡し、このことを誰にも言わないように約束させたんだ」
坂崎君は水島さんを睨んだ。
「ああ、お前の思っている通りだ。水島は俺がお前に送ったニセの裏切り者なんだよ」
しかし、坂崎君は焦ることをやめ祥ちゃんを睨む。
「僕がそんなことするわけないだろ。所詮は占いだ。外れることもある。それに、どこにそんなことをしたという証拠があるんだ」
坂崎君は開き直る。
祥ちゃんはそれを聞くとまた、笑い始めた。
「クックック。単純だ。ここまで俺の思ったとおりに動いてくれるとは。証拠はあるんだよ」
祥ちゃんはそう言うとポケットからボイスレコーダを取り出した。
「なんだ、それは。どういうことだ」
坂崎君は水島さんをまた見る。
「これにはどんなことが録音されているか、この場のみんなに聞いてもらおうじゃないか」
「待ってくれ」
「いいや。限界だ押すね」
そう言うと、ボイスレコーダのスイッチを押した。
ボイスレコーダからノイズがかった音が聞こえる。
「坂崎君、これ落としたよ」
この声は水島さんだ。
「いや、僕は何も」
ボイスレコーダから紙を開く音が聞こえた。
「これは……。水島さん、ここで見たことを誰にも話さないで欲しい。君に一万円あげるから」
「えっそんな」
「いいから。その代わり絶対にこのことを誰にも話さないでもらいたい」
そこで、祥ちゃんはボイスレコーダのスイッチを切った。
「これでお前は終わりだよ」
坂崎君は床に手をついた。
「クソー」
その後、坂崎君はギャラリーから罵声を浴びせられた。
僕たちはそれを横目に見ながら、教室を去った。




