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学園F・N・F解明部  作者: 山神賢太郎
当たる占い師
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占い

  最近、女子の間で占いが流行っている。その理由は、二年の三組にいる男子生徒“坂崎浩之(さかざき ひろゆき)”の影響があった。

  坂崎君は、一年の頃は同じクラスだった。その時は、マジックを披露してみんなを驚かせていた。

  そして、二年に上がり今度は占いを始めている。それもこの占いはよく当たる占いなのだ。

  水島さんや奈央ちゃんも坂崎君の占いをしたことがあるようで、よく本当に当たると言っていた。

  そんな話を部室でしていた。

  すると、祥ちゃんがゲームを一時停止した。

  「その占いってタダか? 」

  「いや一人五百円で十分間っす」

  奈央ちゃんの発言に祥ちゃんは拳を握った。

  「あいつは、また金をむしり取ろうと言うのか」

  坂崎君は一年の時もマジックでお金を取っていたのだ。

  最初は無料で見せる。そのうち客が増え出すとマジックを見せてそのタネを何円かで売るのだ。

  どうやら今度も最初はタダで占い、客が増え出すとお金を取るようになったらしい。

  正直、僕も祥ちゃんも坂崎君のことを好きにはなれなかった。

  彼は、自信過剰で基本的にエゴイストだ。

  そして、お金にかなり執着しているらしい。そのせいで僕たちは彼を好きにはなれなかった。

  「でも、よく当たるし五百円で未来のことがわかるんだったら安いと思うよ」

  水島さんが祥ちゃんを落ち着かせるために言ったのだが、それは逆効果だった。

  「いいか、占いっていうのはな、ハズレのない当たりくじみたいなもんなんだよ」

  「えっどういうことっすか」

  「お前ら、その占い予約制じゃなかったか」

  祥ちゃんは水島さんと奈央ちゃんを指差して言った。

  「そうっすよ」

  「うん、そうだよ」

  二人は当然のように答えた。

  「じゃあ、自分の過去のことや現在のことをばっちり当てられなかったか」

  これも同様に二人は肯定する。

  「まず、予約制にすれば、占いをするまでに客を調べる時間ができる。そこで過去や現在を調べて、あとは、占いの枕として調べたことを話すだけ。それだけで、客はすごいと思い、そいつの占いを信じてしまう」

  祥ちゃんの話を聞き二人は驚いていたが、それでも坂崎君を信じているようだ。

  「いやでも、あんなバッチリ当てられるなんて中々ないですよ」

  「そうだよ。それに、坂崎君が私のことを調べたり、誰かに聞いてたらいずれバレるよ」

  二人の反論に祥ちゃんはため息をつく。

  「坂崎本人が調べたり、誰かに聞く必要はない。仲間にやらせればいい」

  それを聞き二人は驚く。

  「でも、未来のことが当たるのはどうなんすか」

  奈央ちゃんの言葉に水島さんも頷く。

  「それは、例えば、一ヶ月中に恋人ができるだとか言う占いをしたとする。この時、好きな人が誰なんてことは知ってても知らなくても別にいい。要は、そいつの顔だ。高校生なんて顔がいいか運動ができるかそう言う理由で好きになるやつが多いだろ。だから、占いをするとき客の顔を見てこいつだったら告白したら大丈夫だと思ったらそういうことを占いで言うんだよ。占いなんてそいつの背中を押してやるようなもんだからな」

 たしかに、その通りだ。僕はそう思いうんうんと頷く。

  「じゃあ、外れた場合はどうするんすか」

  「簡単だよ。外れないようにする」

  祥ちゃんの言葉に、二人は意味がわからないのか、首をかしげている。まあ、僕もわからないけど。

  「どういうことっすか」

  「占いの最後にあなたの行動や言動により運命は変わってしまいます。なので、普段にいい行いをして過ごしてください。とか言って占いに保険をかけとくんだよ。もし外れたら、自分の普段の行いが悪かったんだ。て思うわけだ」

奈央ちゃんはそれを聞くと顔を真っ赤にして怒っていた。

  「ということは詐欺っすよ。お金返して貰いに行くっす」

  奈央ちゃんは立ち上がり、坂崎君のところへ行こうとした。

  「無理だろ。占いってクーリングオフないからな。それに、占いは詐欺じゃない。占いでツボを買わされたら詐欺だけどな」

  「じゃあどうすれば」

  奈央ちゃんはその場に座り込んだ。

  「知らん」

  その時、部室の扉が開いた。仁王立ちしている京ちゃんがそこにはいた。

  「その話聞かせてもらったわ」

  京ちゃんは部室に入りホワイトボードに何かを書き出す。書き終えると僕たちの方に振り返った。

  「今回は、その当たる占い師『坂崎浩之』を成敗するわよ」

  ホワイトボードには坂崎討伐と書かれていた。

  「それっすよ。返金されないなら悪事を暴いて復讐っす」

  奈央ちゃんが怒りに燃えている。水島さんもその横で小さくガッツポーズをしていた。

  「おいおい、悪事を暴くって言っても、占いを否定するのは難しいぞ。それに、あいつは仲間がいるんだ。そう簡単に成敗出来ると思わないがな」

 祥ちゃんはどうでもいいように言った。

 祥ちゃんと坂崎君は一年の時にあることがきっかけで因縁がある。そのこともあり、あまり乗り気ではないようだ。

  「作戦はすでに考えてあるわ。この智将、春風京子に任せなさい」

  また、おかしなことを考えていそうだ。祥ちゃんもこいつ何言ってんだ的な雰囲気を醸していた。

  「それってどんな作戦なの」

  僕は京ちゃんに恐る恐る聞いてみる。京ちゃんはにっこり笑った。

  「祥悟に坂崎と勝負をさせるのよ」

  それを聞いて祥ちゃんは嫌そうな顔をした。

  「なぜ俺があいつと勝負しないといけないんだ」

  祥ちゃんは京ちゃんに向かって叫ぶ。

  「こんなかで、そういう勝負事に向いてるのはあんたしかいないのよ。それに、この作戦はその勝負の中で坂崎のイカサマを暴くのが目的なのよ。イカサマを暴くなら学校一のイカサマ師に頼むしかないでしょ」

 祥ちゃんはそれを聞いてなぜかはにかんでいた。

  「たしかに俺は学校一のイカサマ師だ」

  この人を調子に乗らせるのは簡単だな。

  「だがな、どういう勝負をするんだよ。相手は占い師だぞ」

  たしかに、占いを暴くにはどういう勝負をするのか。

  「占いで勝負しなさいよ」

  「占いで勝負だと」

 京ちゃんのとんでも発言に僕たちは驚いた。どうやって占いで勝負するというのだろうか。

 「あんたが客で行って、占いのイカサマを暴けばいいのよ」

 「あのな。占いってのは全部がイカサマなんだぞ。占いは話術なんだ。どうやって勝負しろっていうんだよ」

 祥ちゃんの言うとおりだ。客で行ってもただ占ってもらえるだけ。それでどうやって占いのイカサマを暴くというのだろうか。

  「簡単よ。占いを外せばいい」

  「占いは外れることのない当たりくじなんだよ。それを外すのは無理だ」

  「あんた自分が言ったこと忘れたの。占いの枕で過去や現在を言い当てるんでしょ。それを外せばいいんじゃないの」

  京ちゃんの言葉に僕は納得する。過去や現在は変わらない、絶対に外すことのないものを外させる。それができれば、占いのすごさはある程度消える。

  「なるほどな。たしかに占いのイカサマの大部分はそこだ。そこを外させればいい。簡単なことだ」

  祥ちゃんも納得しているようだ。

  「どういうことっすか」

  奈央ちゃんは僕に耳打ちをしてきた。

  「占いのイカサマの大部分は過去や現在を当てることって祥ちゃんは言ったよね」

  奈央ちゃんと水島さんがうんうんと頷く。どうやら水島さんも祥ちゃんと京ちゃんの言っている意味がわかっていないようで、僕の話を聞いていた。

  「イカサマをしている部分があるなら、そこを利用するんだよ」

  「利用ってどうやって」

  水島さんも小声で聞いてきた。

  「それが学校一のイカサマ師である、宮城祥悟の腕の見せどころだよ。目には目を歯には歯を」

  僕は祥ちゃんを見つめた。この勝負面白くなりそうだ。

  「少し、作戦を練らせてくれ。だいぶ時間のかかるイカサマになりそうなんでな」

  「じゃあ今日の部活動はここまでにするわ。各々好きに過ごしていいわよ」

  京ちゃんがそう言い、今日の活動が終わる。

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