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学園F・N・F解明部  作者: 山神賢太郎
謎の男子生徒
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部発足

  僕が高校に入学して数日が経った。今日は部活の説明会だ。いろんな部活が部活内容を説明している。僕は中学の頃特になにもしていなかったので、高校も帰宅部でいいやと考えていた。

  それから数日が経ち、僕は京ちゃんと祥ちゃんと一緒に放課後の教室に集まっていた。

  「この学校、普通の部活動しかないわね」

  京ちゃんは窓から空を見ながらそう呟いた。

  「そりゃ、だいたいの学校はここと同じだと思うよ」

  「全部の部活回ったけど、本当に普通過ぎて、全く入ろうという気が起きなかったわ」

  「そ、そうなんだ」

  京ちゃんは部活を見に回り、体験入部もしてみたようで、その時のプレイがすごかったのか全運動部にすごい勧誘を受けていた。京ちゃんは、勧誘されて疲れたのか空を見て黄昏てる。

  「あっそうか。自分たちで部活を作ればいいんだわ」

  京ちゃんは僕たちの方に振り向いた。

  「あんたたち、私と一緒に部活を発足しなさい」

  「えーーーーーーーーー」

  僕は驚きのあまり叫んでしまった。

  「ちょっと待て、別に部活をするのは構わんが」

  祥ちゃんそこは構って欲しいな。

  「学校の規則によると、部活を作るには正規部員が五名以上と書いてあるぞ」

  「なにー」

  京ちゃんは祥ちゃんが見ている生徒手帳を奪い取ると、開いていたページを読み出した。

  「部を新規に発足する場合、正規部員五名以上もしくは、部活動を掛け持ちしている部員を三名で正規部員一名として計算し、正規部員五名と同等の人数になれば部を発足することを認める。めんどうくさい規則ね」

  「しょうがないだろ、規則は規則だ」

  京ちゃんは、何かを考えているのか、教室の中をウロウロとしている。

  「よし。あんたたち、部活をやってない子を見つけて入部させなさい」

  京ちゃんは僕たち二人を指差しながら言った。

  「いやだよ」

  「これは、命令よ。さっさと行きなさい」

  僕と祥ちゃんは仕方なく学校を東奔西走して、手当たり次第に誘ってみた。

  しかし、誰一人として、入部してくれる人はいなかった。僕たちは白紙の名簿を京ちゃんに渡す。

  「あんたたち、全然ダメね」

  京ちゃんは先ほどと同じようにしてなにかを考えながら教室をウロウロとしている。

  「よし、いいことを思いついたわ」

  「何を思いついたの」

  「秘密」

  また良からぬことを思いついていないといいけど。

  

  そして、日が変わり、放課後。

  僕が放課後に教室に残っていると男子生徒が十人集まってきた。

  「あまり集まってないわね」

  京ちゃんは集まった男子生徒を見ている。そして、右手を上にあげた。

  「これより、春風京子争奪戦を行います」

  京ちゃんがそう宣言しながら、右手を振り降ろした。

  「春風京子争奪戦ってなに」

  「大丈夫。今回、あなたの出番はないわ」

  京ちゃんは僕を見てニヤリと笑う。

  「まず、チャンピオンの紹介です。完全無敗の男。宮城祥悟」

  祥ちゃんが教室に入り、メガネの位置を人差し指で直す。そして、京ちゃんが指定する席へと座った。

  「そして、彼らが挑戦者です」

  十人の男子生徒たちが祥ちゃんを睨む。

  「ここで、試合のルールを説明します。挑戦者一人が指定するゲームのジャンルで、チャンピオンとその挑戦者が戦います。そして、チャンピオンが勝てばこちらの部活に名前を貸す。挑戦者が勝てば、私、春風京子と一日デートができます」

  挑戦者である男子生徒たちは「おー」と喜びの声を出していた。なるほど、たしかにこれは僕はなんにもする必要がないな。

  「今回、ラウンドガールを務めるのは神山真志君です」

  「えっ」

  今なんて言った。

  「今回の衣装はメイドさんの衣装です」

  京ちゃんは、自分のカバンからメイドの衣装を取り出した。

  「絶対やだよ」

  挑戦者の何人かはそれを聞いて「よっしゃー」と叫んでいる。なんだ、この人たち。京ちゃんが僕の方に向かってくる僕は必死に逃げる。

  しかし、あっさりと捕まってしまった。必死の抵抗も虚しく、無理やり衣装を着せられた。

  「やっぱり、似合うわ~」

  京ちゃんがさっきと同じようにニヤリと笑う。なんで、こんなフリフリの衣装を着なきゃいけないんだ。なんか、涙が出てきちゃった。グスン。

  「さて、最初の挑戦者は誰だ」

  挑戦者の一人が前に出る。

  「ジャンルはなににしますか」

  「格ゲーでお願いします」

  僕は、京ちゃんに渡されたスケッチブックに第一試合、格闘ゲームと書いて、上にあげた。僕は一体何をしているんだろうか。

  すでに、学校のテレビにゲーム機が接続されている。いつの間にゲームを設置したのだろうか。

  僕はわからないまま、テレビの電源をつける。テレビが映し出した映像は格闘ゲームの金字塔ストリートキングファイターのタイトル画面だ。

  祥ちゃんと挑戦者がコントローラを握る。キャラクター選択画面でお互い自分の持ちキャラを選んでいる。祥ちゃんの選択するキャラクターは赤い髪の男キャラ。

  このキャラは技の癖が強く、隙が大きい技が多い。しかし、ガードを崩したり、コンボを決められる点が大きい。

  挑戦者は、ヴァンパイアの女性キャラを使うようだ。

  そして、試合が始まった。

  挑戦者が最初に攻撃を仕掛けた。

  祥ちゃんは華麗に避け、弱パンチを当てる。挑戦者は何度も攻撃を繰り出すが、祥ちゃんはその攻撃をすべてガードし、一切ダメージを受けない。

  さらに、その攻撃の後に隙の少ない技を出し、挑戦者のヒットポイントを確実に減らしていった。

  挑戦者は焦りからかコマンドのミスをしてしまう。そんなミスを祥ちゃんが見逃すはずがなく、必殺技を繰り出し、最初の勝利を収めた。パーフェクトゲームだった。

  僕は二ラウンドとスケッチブックに書いて掲げる。

  二ラウンドは、先ほどと同じように祥ちゃんがパーフェクトゲームで勝利する。泣き崩れる挑戦者。圧倒的な力の差を見せ付けられた。祥ちゃんは、持ちキャラの勝利デモと同じように挑戦者を見下し、笑っている。

  「はい、これに名前を書いて」

  京ちゃんが敗れた挑戦者に名簿に名前を記入するように言った。挑戦者は、自分の名前を書くと教室からトボトボと出ていった。

  「次、二人目の挑戦者は誰」

  二人目の挑戦者が前に出る、彼が選んだのは落ちものゲーだった。ゲーム機にセットされたのは、ポニョポニョだ。同じ色を四つ揃えて消すゲームである。僕は、第二試合落ちものゲームと書いたスケッチブックをあげる。

  そしてすぐに、試合は始まった。しかし、この勝負も始まってすぐに祥ちゃんの勝ちだと思った。挑戦者がポニョポニョを設置するスピードと、祥ちゃんが設置するスピードが明らかに違う。僕は、祥ちゃんのスピードが早すぎて何が起こっているのか全くわからなかった。

  勝負はあっという間についた。当然、祥ちゃんの勝利である。挑戦者は、自分の名前を名簿に書くと教室から足早に出ていった。

  残り七名の挑戦者も祥ちゃんには勝つことができず。名簿に名前を書くと教室から出ていく。やはり、祥ちゃんには誰も勝てないようだ。僕は、初めてこの宮城祥悟という男がすごい人間だと思った。

  「よし、これで十三人分の名簿ができたわ」

  これで、僕たちの部がを作ることができる。でも何をするか一切聞かされていないのだけど。

  「とりあえず、これを職員室に持って行くからここで待ってなさい」

  僕と祥ちゃんは京ちゃんに言われたとおり教室で待機していた。その間に僕はメイド姿から制服に着替えた。

  「これで、部室にゲーム機を置くことができる」

  祥ちゃんが満面の笑みで独り言を呟いた。

  「えっ、どういうこと」

  「この試合で全員に勝ったら、部費でゲームを買ってもいいことになっているんだ。俺も久々に本気の半分を出してしまった。もう少し、手を抜けばよかったな」

  ああ、この試合の裏にはそんな汚い取引があったのか。僕が、着替え終わる頃に京ちゃんが教室に戻ってきた。

  「申請どうだった」

  「通ったわ。部室も確保したし、顧問もいる。これで立派な部を作ることができたわ」

  それから、京ちゃんは僕たちを連れて東校舎一階の教室へと向かった。その部屋は以前廃部になった落研が使っていた場所だったらしい。既に本棚やホワイトボード椅子と机がそこにはあった。

  「意外にいい部室ね」

  僕たちは、部屋を見渡すとそれぞれ椅子に座った。

  「それで、この部は何をするのっていうか。部活名は? 」

  京ちゃんがホワイトボードに向かうと何やら書き始めた。そして、ホワイトボードをバンと叩く。そこには、学園不思議・謎・ファンタジー解明部と書かれていた。

  「私たちは、学園不思議・謎・ファンタジー解明部だ。略して、学園F・N・F解明部」

  京ちゃんが仁王立ちを決める。

  「何それ」

  「学園にある不思議や謎、ファンタジーの真実を解明するのよ」

  僕には京ちゃんが言ってることの意味がさっぱり理解できなかった。

  「ごめんさっぱりわかりません」

  「まあいいわ。とりあえずあんたたちの役目は不思議と謎とファンタジーなものを探してくるのよ。それをみんなで解明するの」

  「俺はゲームをしてもいいんだな」

  「だめ」

  「なんでだー。この部は俺が作ったようなもんじゃないか。俺があの十人の男子生徒をこの手で倒したから今この部があるんだぞ」

  祥ちゃんは、京ちゃんに向かっていく。京ちゃんは祥ちゃんに後ろ回し蹴りをして、伸した。

  「でも、十三人じゃ部費そんなにもらえないわね」

  京ちゃんは、足で祥ちゃんを踏みつけ何かを考えていた。

  「そうだ。いいことを思いついたわ」

  そうか。余計なことを思いついたんだね。

  「部活をしている人にもこの部に入ってもらえばいいんだわ」

  「どういうこと」

  「勝負するのよ。その部の競技で勝負して、私たちが勝ったら部に名前を貸す。私たちが負ければ……私がその部に入る」

  京ちゃんは自分の案に納得したのか、うんうんと頷いている。どうぞ、勝手にしてください。

  「じゃあ、いってらっしゃい」

  僕は、京ちゃんに手を振る。

  「何言ってんの。あんたたちも行くのよ」

  ですよねー。

  「あんたたちも負けたら、罰則あるから」

  「えっ」

  暴君だ。ここに暴君が誕生した。いや元々暴君だったよ、この人は。

  「あんたは、そうね。負けたら、女子の制服で登校しなさいよ」

  「なんでだよ。いやだよ」

  「じゃあ、勝利に貢献しなさいよ」

  誰もこの暴君を止められはしない。

  「それで、祥悟は負けたら全ゲーム機破壊するから」

  「それだけは堪忍してー」

  祥ちゃんは京ちゃんに踏まれながらも必死の抵抗をしている。

  「じゃあ、勝利よ。勝利以外私が望むものはないわ。勝ったらゲーム機部費で買ってあげるから」

  「わかった」

  祥ちゃんはそれだけで納得してしまった。この人はやっぱり馬鹿でした。

  「とりあえず、今から交渉してくるわ。あんたたちは帰ってていいから」

  その日はこれで解散となった。

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