Ⅱ:颯飋(イグザクション)
6月は三回いけるかもしれない。(死亡フラグ)
今回のタイトルは颯飋です。飋の方は環境依存文字なので見えないかもしれません。そんなときはこっちを代用してね。喪失です。
結論から述べよう。玖凱 十三が率いる水虎討伐作戦に参加した討伐者計33名と十大龍席第Ⅴ席 嵐龍ストームブリンガーとの戦いは僅か5分未満で終了した。秒に直すとたった300秒未満で戦闘は終了した。
水虎との戦いで疲労状態であったとはいえ、計33名の近畿領域(東エリア)の兵共はたったの300秒で仕留められたというわけである。嵐龍ストームブリンガーが強すぎたのか彼らが弱すぎたのかは今となっては全く明らかにはなってない。
この戦いから明らかになっているのは玖凱 十三というキヲテラウはこの戦いから始まったということだけである。彼が初めて戦った十大龍席がこの嵐龍であったことが救いだったのかはたまた、危なかったのかは、この歴史から読み取ることはできないのだろう。なぜならば、その時を戦っていたのは彼らであり、決して私たちではないのだ。
彼らの気持ちは彼らにしか分からないだろうから。それでも一つ我々が言えることがあるとすれば、この戦いは彼らにとっていろいろな意味で大切になったのだろうということだけだ。何故ならば、この嵐龍の強襲により生き延びられた討伐者は僅かに三人だけだったのだから。
侵略者との戦闘~~~嵐龍の章・颯飋から抜粋~~~
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地力が違ったと言えばいいのか、それとも疲労状態だったからなのか、そんな無意味な考察をしても結局のところあまり意味はない。万全の状態で挑んだとしても、きっとやつと僕らの差は絶望的だったのだろう。戦闘が始まって数分後にそれを深く思い知らされた。
一瞬だった。仲間を組んで特攻を仕掛けた僕らに待っていたのは圧倒的までの力の差だった。やつの周りを蠢く風が様々な形を成して僕らに襲いかかった。最初は突風を吹かし、風の刃を成す不可視の鎌鼬が襲い、最後にはすべてを飲み込もうとする深し竜巻が渦を巻き吹き荒れた。
たった三撃で僕らは吹き飛ばされ討伐者の惨劇が出来上がった。言うにも及ばず。僕らは一気に壊滅状態に陥った。
α(アルファ)もβ(ベータ)もγ(ガンマ)もΔ(デルタ)もμ(ミュー)もΣ(シグマ)もやつの相手にはならなかった。γに関しては遠距離系は風を司る龍だったのも作用して相性は最悪だ。遠距離の攻撃はやつが纏っている風に邪魔され、かといって近接は風のせいでまともに近づけないし、たとえ、近づけたとしても身に纏う風が攻撃をやつの本体まで届かせないようにしている。まるで極小の台風を自分の身に纏わせてるみたいだ。流石は嵐龍といったところだろうか。
嵐龍が声をあげる。
「強気ものたちよ、これで終わりか? 我はまだ何も見せてはもらってはないぞ。貴様らの意志はどうした? こんなものか。その程度で意志が砕け散ったか」
そんな吐き捨てるような言い草に腹がたった。周りの皆も同じなのだろう。僕は震えながらも歯を食いしばって立ち上がり、嵐龍に言い返す。
「誰が諦めたっていったよ。僕らは全員まだまだやれるにきまってんだろうが! こちとら、てめぇのいうところの意志を見せてねぇんだよ。こんなところで砕けるわけがねぇんだよ!! なめんな!!! 人間の力思い知らせてやるぞぉ、ゴラァァァッッッッ!!!!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」
ボロボロになりながらも声を響かせる仲間がいる。ならばこそ、ここで諦めていい理由がない。力が足りないのなら、策を弄して罠にはめろ。弱点がないなら、見つかるまで探せ。突破口がないなら、特攻でもして見つけ出せ。死にたくないなら生き残れ。一人で勝てないのなら、仲間で倒せ。覚悟は既にある。ならば意志を持って成すだけだろが!!!
そんな僕らの言い草に嵐龍は喜ぶように笑う。
「くか、くかかかかかかっかかかかかかかっかかかかか!!!!!! よい、ヨイ、善い、好い、良い。それでこそ人間。意志ありしもの。下らぬ喝破なぞ無礼でっあった。そこまでいったのなら早う見せてもらおうか!!!???」
嵐龍が笑ってる今のうちに、作戦を考えろ。即興でいい。完璧な作戦なんてどうせたてられねぇ。一分一秒でも長く戦い、一矢報いるような一撃を、または弱点を、見つけ出せ。
無線に連絡を入れる。
『こちら、隊長だ。作戦をいう。Σの二人は梁山の千里眼でやつの出だしを伺い、無線で連絡を入れてくれ。転移者は梁山を守ってやってくれ。そんで、α、β、γ、Δ、μ悪いけど死ぬ覚悟はしてくれ。今から行うのはただの無謀な策だ。無謀で、無望で、無防で、無忘で、無冒で、無亡なんだろう。それでもついてきてくれるか?』
僕のそんな言葉に苦笑をするように討伐者の声が返ってくる。
『「『「『たりめぇーだ、隊長!!!!!?????』」』」』
『ふっ、お前ら揃いに揃ってバカばっかだよ! そんなバカたちにバカなリーダーが作戦を告げる。無理無茶無謀の三拍子が揃った特攻だ!!!!! 弱点がないなら見つけ出して、死にたくなかったら生き残るために、一人で勝てなくても仲間で勝つぞ!特攻開始!!!!!!! かかれや、野郎ども!!!』
『「『「『オオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッツッッッッッ!!!!!!!!!!』」』」』
その大いなる怒声とともにボロボロになりながらも傷つきながらも決して勝つことを、生きることを諦めやしない者たちの文字通り死力を尽くした攻撃が始まった。
そして、その者たちにが抗うべきである嵐龍は心からこう思う。
「その心意気や是非も無し。語るに及ばず。素晴らしきかな、意志の力!!! 汝らの死力の特攻こちらも敬意を表し、技を使わせてもらおうか」
そう言い切り、嵐龍は己に纏う風の量をわずかばかり調整して、解き放つ。
「風陣波衝撃」
嵐龍が纏っていた風が地面から天に至るまでまるで小嵐を形成するかのように変形し、そのあと360度に吹き荒れた。ゴウッ! っと音をなし、嵐龍に特攻をかけようとした討伐者達を吹き飛ばした。皆それぞれ様々な方向に吹き飛ばされ、地面にたたきつけられる者や、コンクリに直撃する者、はたまた、廃墟から落ちゆく者まで飛ばされた。
「グボォ!」
玖凱は自分から血の塊が一気に出てきたのが分かった。叩きつけられた体で周りを見渡す。見えるのは地面だ。自分は地面にたたきつけられたことを直後に理解した。骨が軋む音を無視し、体が悲鳴を上げているのは錯覚と思うことにした。フラフラになりながらも立ち上がると、皆様々な形で責めていたのに吹き飛ばせれ転がっていた。おそらくだが、先ほどやつが放った一撃は360度上と下意外に全部に攻撃してきたのだろう。皆ばらけて、攻撃したのだがこれでは意味をなさなかったらしい。
仕方ないと玖凱は思う。だけど、一撃をもらっただけでくたばるほど彼らはやわではない。それを証明するかのように皆、幽鬼のように立ち上がる。武器を壊されたものも今度は拳を構えているし、覚醒者は身体能力の補佐になるような魔法を遅くなりながらもかけている。
そんな彼らを嵐龍は何もしなく、黙ってみている。おそらく彼が攻撃してくるのは自分たちが補佐魔法をかけてもらい、また攻撃したら応じてくるだろう。あくまでもあの型龍は悪魔なまでに意志が見たいがために何もしない。本来ならばここで攻撃すれば何の補佐もないのに、まるで攻撃する方が無粋だとでも言わんばかりの態度をとっていた。
やがて、覚醒者達の補助魔法が終わり、皆フラフラになりながら、またしても嵐龍に特攻をかけた。しかしながら、彼らの攻撃は意味をなさなかった。嵐龍は既に風の衣を纏っていないのに攻撃ははじかれた。やつの鱗が固かったのか、それとも武器にもう切れ味がなかったのかは定かではない。ただ、弾かれながらも彼らは攻撃をした。勝つ為に、生きる為に、弱点を見つけて、次に繋ぐ為に、決して諦めやしないのだ。
されど、現実は無常だ。嵐龍が更なる言葉を紡ぐ。
「鎌鼬」
それは不可視にて深しなる一撃。死神が猛威を振るう鎌。風で固められた幾つもの大気の刃が彼らを襲った。腕、脚、腹、背中、腰、膝、肘、頭、顔、そして首。至る所に風の刃は彼らを切り裂いていった。前に喰らった鎌鼬とは何かが圧倒的に違った。
再び地面に倒れる音を玖凱は聞いた。それが自分なのか、仲間なのかは分からない。もう既にそんな判断が持てる位意識が保てているかも分からない。では、何故彼らが戦えているかそれを解消する言葉は皮肉にも今彼らが戦っている嵐龍の目的である意志の力であるだろう。誰かのためでない、仲間さしては、次という未来のために彼らは意識を失いながらも戦い続ける。一筋の光のために。ここで果てようが構わないといわんばかりの様に。
そして、彼らは何度でも何度でも立ち上がる。決して砕けぬ折れない意志。正に嵐龍が望むような人間の意志が彼らを支える。幽鬼のような彼らはたとえ、数が減ろうと生きてる限り立ち上がる。己の行動が次に生かせるために。そうして、嵐龍が攻撃し、討伐者は倒れ、数は減るがそれでもなお立ち上がる。そんな状態が数回続いた後、無線に連絡が入る。
『皆、聞いて。弱点は見つけることはできなかった。けれども、小さな隙を見つけたわ。嵐龍が「風陣波衝撃」を使った後に少しだけ小さな隙が小さなタイムラグが発生したわ。そこを狙えば、いけるかもしれない。でも、これは嵐龍の罠かもしれない。油断させといて誘い受けを狙ってるかもしれない。ごめんなさい、私だけ安全圏にいるのに、私がもっと役に立てばこんなものじゃないかもしれないのに』
梁山さんの申し訳ないような声に苦笑する。それはどうやら皆も同じようだ。代表して言おう。
『大丈夫だ、問題ない。むしろ、よく見つけてくれたよ。おかげで僕らの行動は無駄じゃなかった。僕らは最後の特攻をかける。皆、逝くぞ!!!』
その言葉を待っていたようにまるで、ボロボロの布きれみたいにみたいになっていた皆の動きが変わった。これは最後の賭け。死化生だ。文字通り死力、否、すべてをかけての特攻。次の為に立ち上がるのではなく、今の為に命を懸けた最後の意地にして意志。火事場の馬鹿力を超える生命のナニカ。人はそれを呼ぶ宛名をいまだに知るまい。
総勢33名もいた彼ら討伐者は今はもうその数半数以下。半分がここまでで命を果てた。生き残っている者を支えるのは彼ら倒れていった者たちの生き様。ここで倒れたては男が廃る以前に人として大切な物を失うだろう。それが分かっているから、彼らは倒れっていった者には何も言わなかった。否、言う必要がなかった。継ぐべき物は既にある。意志が魂にある。ならば、最後まで戦うまでそれだけだ。
討伐者が四方八方に散らばる。嵐龍の小さな隙ができるのは『風陣波衝撃』を使った後だと梁山は言った。だからまずは、嵐龍にそれを使わせなければならない。その為にはやつが最初にあの技を使ったのは彼らがバラバラになって攻撃したとき。その為に彼らは散らばった。
案の定というべきか、当然の帰結とは言いすぎだが、嵐龍は己に纏っている風を調整し始めたように見える。ただ何回も無様にくらい続けたわけでない。少しあの技と鎌鼬に限ってだが、技の前兆が分かる気がした。そして、刻はきた。
「風陣波衝撃」
放たれし風の猛威。玖凱の前に二人の人物が現れる。それは水虎討伐作戦で同じΔ仲間だった槍使いと拳士だった。彼ら二人は玖凱の前に吹き荒れる風を己の体で受け止め続けた。それが自分たちを殺す致命傷となることが分かりながらも、唯ひたすらに彼の前で風の衝撃波を受け続けた。そして、風が吹き終わり彼らの体は全身に血を刻みながら朽ち果てるように落ちていく。最後まで玖凱の盾となり続けたのだ。
玖凱は流れそうになる涙を堪え、嵐龍の元へ駆ける。彼らの行いに報いるのは嵐龍に攻撃を浴びせるという事実だけ。ならばこそ、今は彼らが作ってくれたこの機会を逃してはならないのだから。その余裕ぶった顔を歪ませなければならない。
嵐龍はこちらに近づいてくる玖凱の姿を見て、目を見開いている。梁山のいう小さな隙は今この瞬間だ。本能的に悟った。やつが技を出したようにこちらも技を出す。しかし、灯楼流しのようなカウンターでもなく、陽炎斬りのような斬る攻撃ではなく、突く攻撃だ。捻じり削るような強力な突き技だ。今この刻だけはやつの攻撃が風でよかったと思う。
「喰らえよ、侵略者 螺子って削げ! 螺旋通し!!!!!」
その一撃は風を螺子りながらその場所を削り取るように放たれた。流石の嵐龍もこの一撃はやはり予測した通り隙を狙われて打たれたので防げなかったのだろう。その証拠に嵐龍の体に玖凱の意志を乗せた劔が突き刺さっていた。だが、玖凱は諦めていない。このまま、貫通させるために必死に技を放ち続けている。そんな玖凱の様子を見て嵐龍は笑う。
「くははははははははは!!!!!! まさか、我が一撃をもらおうとはな。中々やるではないか。やはり、汝らの意志は最高であり、至高であった。そして、まだ我を殺そうとする心おき、真あっぱれ。だが、我もまだ死ぬわけにはいかん。反撃させてもらおうぞ!」
その言葉に周りの討伐者が動いたが、もう手遅れだった。
「喰らえ、ニンゲン。 真空覇」
それは、大気を空気で押し込んだ。もしくは、空気を大気で押し込んだ。凝縮にして縮小、縮小にして凝縮されたモノ。矛盾を孕みながら維持されたモノ。嵐というにはあまりにも的確な一撃。真空波としては大き過ぎる一撃。真空波ではなく真空覇。まさしく、十大龍席が一つ、嵐龍ストームブリンガーに相応しい一撃だった。全てが吹き飛ばされる。
もう何も言うべきことはない。彼らはよくやった。もう頑張った。休んでいいと思う。第三者が見ていれば、そんな無責任にして甘言を言うだろう。だけど、それに飲まれてはいけない。確かに。もう自分たちは勝てはしないだろう。文字通りの命を懸けた一撃。届くには届いたが、仕留めるにはいかなかった。ならば、今からの戦いは次を残す為の戦いに戻る。
Σの二人が生き残る為の時間稼ぎそれが最後の自分たちの生きた証。生き様はやつに残した。ならば次に繋ぐ抗いを行おう。そう思い血だらけで最早、目も当てられないような姿でも玖凱は立ち上がった。他の仲間も同じなのか皆立ち上がる。もう、十人しかいない。二人を逃がすから八人の命を捨てる戦いが幕を上げようとしたとき、無線に連絡が入る。
誰だ? と玖凱は思う。まさかまた糸定か、また鼓舞してくれるのかねぇ、そんな思いを胸に秘め無線の声を聞く。
「皆、聞いてくれ。今から俺は言葉を送る」
案の定、糸定だった。糸定の言葉は続く。
「最終指令だ。ε(イプシロン)を開始せよ」
だが、続く言葉は鼓舞なのではなかった。最終指令? イプシロン? そんなものは自分は知らない。一体全体糸定は何を言っているんだろうか? 糸定に直接訪ねようとしてフラフラの体で移動している玖凱に無線から声が聞こえる。
「十三! 聞こえているか? 無線がまだ繋がっているなら、意志を強く持っているなら、言おう。十三、君はその劔の真実を知れ! その為にラブレーの本を探せ。そこにヒントがある」
何を言ってるんだといおうとした。だが、体が急に浮く感じがした。後ろを向くと、転移者がいた。次の瞬間、意識が突然狩り取られた。
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俺の後ろにふと気配がする。後ろを振り返ると、俺の指示通り十三を回収した転移者が立っていた。梁山も一緒にいる。梁山はいつもの毒舌をいうみたいな意志はない。俺がやることが分かっているのだろう。声をかける。
「あとは頼むよ」
そんな言葉しか伝えられない自分に腹が立つ。もっとこういうべきことがあるのに。梁山とは長い(・・)付き合いだったのだ。それこそ、俺が果たせなかった任務をあいつにはしてもらわなければならないのだから。
「・・・・・・分かった」
そういって、梁山は転移者の元に行った。転移者は何とも言えない顔をしているが、仕方がない。それが俺とあいつのかんけいなのだから。転移者に頭を下げる。なぜか気にするなといわれたような気がした。寡黙だがいいやつなのだ。梁山を抱えて転移者は移動をした。
これで、七人。あとは時間稼ぎに徹するだけだ。そして、前に強大な気配を感じて前を向く。
「あんたってやつは、お約束を地で守ってくれるやつだな。律儀に攻撃をしなかった。俺の固有概念魔法でも見えてきたぞ、あんたの正体」
「ほう、我の正体とな? 言っておくが我は型龍の中でも特別でな。中々わかるやつなどいないと思っているのだが」
「あんたの正体は■■だろ?」
「ほう、これは驚いた。よもや、本当にあてるとは」
「おしゃべりはここまでにするぜ、仲間が集まってきた」
そういう糸定の周りには残った六人が集まり、総計7人の討伐者が集まった。皆の心は一つ。代表して糸定が叫ぶ。
「ここから先はいかせねぇぞ、嵐龍てめぇの攻撃で俺らはあと七人だけしか残っていない。されど七人。人間の力、特と思いしれ!!!!!」
その啖呵に嬉しそうに嵐龍も告げる。
「然り。我は人間の力を一度も侮ったことなどないぞ、故にこちらも最強の一撃で汝らを葬ろう。特としれ、これが型龍、これが十大龍席、これが嵐龍、これがストームブリンガー。嵐を司る龍の技。その身に思いしれ!!!!!」
んじゃ、下旬でお会いしましょう。