Ⅳ:軍勢(レギオン)
この話は説明しかしません。
さて、ここで少し僕がいる軍勢について話をしようと思う。
もともと侵略者達の侵略行為のおかげで現在の日本の最東は三重県である。そこから東は全部悔しいかな侵略者達に滅ぼされた。じゃあ、西は安全だったのかといわれたらそうでないと僕は答える。
西は西で侵略者達に攻撃されていた。現在でも復旧作業は続いている。しかし侵略者も待ってくれるわけがなく復旧地を攻撃してくることなんざ珍しくもなんともないのだ。さらに、侵略者達にも階層みたいなものがあって、SSSが一番上でDが一番下って感じになっている。だが、SSSは一体しかいない。名前も正体も分かっているのだが、手なんざ出せない。そいつの名を全龍という。一説ではあの地球が出した懺悔もあの全龍の仕業じゃないのかって噂されている。だが、所詮は噂なので真偽を確かめることはできない。
しかも全龍の周りには全龍を守護する龍達がいる。そいつらと全龍を合わせて十大龍席という。因みに、階層Sから上は全部、型龍である。AからBは型獣、CからDは型虫となっている。昨日あたりに戦った。あの型獣もおそらくAからBあたりだと思うのだがいかせん、あいつが水魔法を使ってきたのも疑問点の一つである。
本来魔法などを使ってくるのはせいぜい階層Aの上のやつとS以上だけだったのだ。それを階層AからBであるはずの型獣が使ってくるのは不思議な話である。勿論、やつがほんの一握りのAランクのやつだったら杞憂かもしれない。だが、僕は何故かそのことが気になって仕方がないのだ。
まぁ、悩んだところで答えが出るわけではないのだが……。
っと、少し路線がずれてしまった。話を元に戻そう。軍勢の話である。簡単に言ってしまえば人類が侵略者達に抗うために作った組織のことである。
こう言ってしまえば少々味気ない気がするかもしれないが事実それだけのことである。だが、それだけではなぜ僕らが討伐者や覚醒者や狩人等々のよくわからない厨二的な感じでよばれているのかは全く分からないだろうから、勿論、そこらへんの説明はきちんとする。
じゃあ、討伐者から説明を始めたいと思う。討伐者とは、言ってしまえば侵略者達に対抗する人類たちのことである。要は最前線で侵略者達と戦う人をさすのだ。だから、最初型獣のやつと戦っていた人は全員討伐者だったということである。
前線に立って戦う人のことを討伐者と呼ぶなら、他に言われていた覚醒者や狩人は何なのかということになってくるだろうから説明する。
まず、覚醒者なのだが、これに関しては僕はあまり詳しくはないので知ってることや分かっていることについて話そうと思う。覚醒者とは覚醒した人類のことをさす。それだけある。はぁ? とおもうかもしれないが覚醒者の説明するときはこの説明が一番手っ取り早いのである。
分かりやすくいうと、『星が断末魔を上げた日』や『地球の懺悔』と呼ばれた日から、いきなり不確定に超能力が使えるようになった人をさす。誰が発端かは分からないし、どんな人にその力が出てくるのも分からないし、そもそも地球に住む全人類がこの能力が使えるのかも全く分かっていない。
気が付いたらいきなり体から炎が出るようになりなしたとか、壁を破壊できる力が出てきたとか、そんなわけのわからない科学じゃ説明できやしなくて、摩訶不思議の力が働いてそうなっているとしか言いようのないものが、人類の中から出てきた。そういう科学じゃ証明できないような不思議な力を出す人を、総じて人々は人から覚醒したもの、故に覚醒者と呼び始めたのだ。
勿論、侵略者達がこの世界を蠢いている状況でのこういった物の発言は世界を揺るがせた。中にはこの覚醒した力を悪用するものも現れた。別にこの力を悪用するものが現れるのも無理はない話なのだが、その時は人類は非常に冷静ではなく、この力を悪用するものを弾圧しようとして身内同士で殺し合いをしたところもあったそうだ。っていうか珍しくもなかった。
そんな事態が急速に収まり始めたのは覚醒者となった少年少女たちが侵略者達をその力を使って倒しているという話が出てきて始めてからだ。その話を聞いたものは子供たちが戦っているんだ覚醒したはずのお前ら大人が戦わなくてどうするんだと責めるものと、そんな話嘘だろうと鼻で笑うものがほとんどだった。だがその話が嘘でないと分かるのはすぐのはなしだった。前に覚醒した子供たちが侵略者達と戦っている話を信じて戦わない大人の覚醒者や鼻で笑った者たちがいたところに侵略者が攻撃してきたのだ。
そんな彼らのピンチを救ったのが話題になっていた覚醒した子供たちだったのだ。子供たちに助けられた大人たちは子供たちに礼を言うとそのあとに、戦わなかった覚醒した大人たちを責めた。「どうして、力があるくせに戦わない」「子供の方がしっかりしている」「恥を知れ、恥を」などと好き勝手言い始めた。
そんな彼らに怒りをぶつけたのは、彼らを救ったはずの少年少女たちだった。その中でリーダーを務めていた青年が
「みっともねぇことしてんじゃねーよ!!! 俺らの中にも覚醒してないガキ達がいる、でもそいつらはなぁ、自分の家族を探す為に覚醒もしてねぇのに侵略者達に立ち向かってるんだぞ! 大怪我だって何回もしている。でも一度も弱音なんざはいたことなんざねぇのに、アンタらはなんなんだよ! やれ、子供に戦わして恥ずかしくねぇのか、なんていいやがって、確かに覚醒したのに、戦わずここにいるのはおかしいと思うかもしんねぇが、それはあんた等も同じだろが!!」
自分たちを助けてくれた少年少女達が、自分たちに怒りの感情をぶつけてきている。その事実が重くのしかかる中、彼らのリーダーである青年は続ける。
「覚醒した力もってないから戦えないなんて誰が決めたんだよ。戦ってもねぇやつが同じ戦ってねぇやつを責めてるんじゃねぇよ! 俺達みたいなガキが戦ってることを不思議に思わねぇのかよ、自分たちも戦わなきゃって思わねぇのかよ! ガキが何してるんだよって思わなかったのかよ! こんなとこで誰が悪いかなんて身内で争ってることに、あんた達が恥を知れよ!! これ以上子供に大人のみっともねぇとこばっか見せんなよ!!!!!」
彼の悲痛な叫びは大人たちの心を抉った。誰かのせいにしてプライドを守ろうとした行為は、救ってくれた子供たちに大人の醜いところをみせつけるという皮肉的な結果になってしまった。
何より、子供にここまで言われて言い返せる言葉が一つもなかった。それもその筈、これで言い返すというのはもはや、恥や醜態をさらす以上の行為であったからだ。それがなおのこと滑稽さを出してしまったのだが……。
彼の叫びを聞いた大人たちはこれまでの行為を恥じ、ある侵略者達と戦うグループを結成した。まぁ、つまるところ軍勢の始まりでもある。……少し話がずれてしまったが軍勢の結成秘話みたいなのが語れたのでよしとしよう。
補足であるが、覚醒者には一人に一つだけ固有概念魔法が存在している。この固有概念魔法は覚醒者一人一人により違うのが特徴である。それ以上の情報は僕は覚醒者ではないか分からないがきっといろいろあるのだろう。
んで、次は狩人の説明に移る。狩人は覚醒者にならなかった一般人つまりは、旧人類の戦う人である。僕も狩人の一人である。狩人の説明は覚醒者の説明に比べて随分としやすい。要するに、戦争の兵士だ。ただし、明治時代から昭和時代のように赤紙で選ばれてお国のために戦うのではなく、自分達自身の意志でだ。命の保証なんざない。常に生きるか死ぬかを地で行くわけである。強制はないので自由参加、募集人数無制限、即加入OK! だ。辞める時も一応引き留めはしないらしい。だが、辞めるやつを僕は見たことがないので分からないが……。
まぁ、補足をすると、辞めるやつを見たことがないと先ほど言ったが、より正確にいうと家族を見つけるために狩人になったがはいいが、侵略者達にやられるか、家族が侵略者達にやられていて家族の敵討ちとして侵略者を倒したら、今度は自分みたいなやつを生まないために、自ら進んで侵略者達を狩りに行くようになるわけだ。そんなことから僕は、狩人というか討伐者自体を辞めるやつを見たことがないわけである。
一応簡潔にまとめると、侵略者を狩るのが討伐者。討伐者の中には魔法を使って侵略者を狩る覚醒者と武器を使って侵略者を狩る狩人の二派がいるというわけだ。そんで討伐者達の集まりを軍勢と呼ぶわけである。
結局最後になってしまったが、軍勢について説明する。っていうかこれを本来するつもりだったんだが前置きが長くなりすぎた。なので、軽く説明する。詳しい説明は追々というわけだ。
最初の方にも説明したと思うが、現在の日本の最東は三重県である。侵略者達の侵略行為によって破壊され跡形もない状態になってしまっているからだ。故に、日本政府は新たな首都と領域を作った。新たな首都は大阪となった。元々西の首都だったし、近畿領域の軍勢は兵庫に基地を置いていたからという理由でもあった。
兵庫なら新たな首都は京都でもよかったんじゃと思う人もいるから説明すると、兵庫の軍勢の基地は淡路島に近い南の方にあったからだ。まぁ、淡路島は現在誰も住んでいない無人島と化しているのだが、京都に首都を置けばいざというときに軍勢の到着が遅れるかもしれないという危険性があったから大阪になったのだ。
そうそう、さっき近畿地方のことを東エリアと称したがこれは、現在ではさほど珍しくはない。今では、近畿領域(東エリア)、四国領域(南エリア)、中国領域(北エリア)、九州領域(西エリア)となっている。それぞれの軍勢の本拠地は近畿領域(東エリア)は兵庫、四国領域(南エリア)は徳島、中国領域(北エリア)は山口、九州領域(西エリア)は福岡となっている。
軍勢の仕組みは意外と簡単なような複雑なようなようわからん感じになっている。今僕がいるのは近畿領域の兵庫支部だろう。そして今から僕はこの兵庫支部しいては近畿領域の最高責任者である紘藤支部長に会わなければならないということだ。
そうそう、支部長の話をするよりかはさっきまで僕がいた部屋について説明した方がいいだろう。さっきまで僕がいた部屋は看護室といって侵略者達との戦いで傷ついた討伐者達の傷を癒す場所、医務室である。
そして、さっきまで僕を看病してくれていた澪標さんがあの看護室の責任者である。ああ見えても、あの人は中々筋の通った人で人望もあるし、あのほわわ~~んとした感じが俺らがこの人を守ってあげなきゃという思いをかりたたせるらしい。昔、一緒に仲間を組んでいたやつが言っていた。
まぁ、確かに仲間を組んでいたやつのいうことは一理ある。っていうか僕もそう思うし。あの人誰にでもあんな風に一生懸命に手当てをしてくれるから実質彼女を嫌っている人なんざほとんどいないというのが僕の見通しでもある。
っていうかあんな人この世のなか探してもそうそういない。見た目にしても、中身にしても。やっぱ、今からでももう一回ぐらい澪標さんのとこに行こうかな?そんなくだらないことを考えていると、
『念のため言っておくが、澪標さんに会うのがくだらないのではなく、会うことによって彼女に迷惑をかけてしまうのがくだらないことである。くれぐれも間違えないでほしい』
支部長室の前についた。
余談なのだが、この支部長室は十階建ての軍勢の基地の中で、一番上の階ではなく真ん中の階にある。なんでこんな面倒くさいことをしたのかと聞くと、支部長は
「え、一番上の階ってなんか登るのめんどいし、狙われやすいし、良い事ないから。真ん中の階にしただけ」
と言っていた。正直、真ん中も真ん中で面倒くさい気がしたのだが、言い出すのが面倒臭かったのでそのままにした。
「はぁ~~」
僕は、思わず支部長室の前で溜め息をしてしまったが、隠す気もなくそのまま覚悟を決めて、支部長室をノックした。
受験なんて消えればいいのに
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