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命運玉座のキヲテラウ  作者: 古卯木 悠右人
第一章 吹き荒れし颶風の覇者
13/22

Ⅵ:飂飅(カッティーヴォ・テンポラーレ)

 今回のタイトルは飂飅です。環境依存文字なので両方とも見えない人はこちら。

タイトルは凌流です。読みはりょうりゅうです。


 次回更新、21日。

三重加速突風アクセル・オブ・ゲイル・トイプル


 グレイがその技名を告げた時、あいつの体に変な模様が浮き出て、更には、常に『風衣』を纏っている状態になっていた。ピリピリした感じが体を刺激している。思わず足が後ろに下がった。そんな僕とは裏腹に宴は銃剣『パンドグリュエル』を構えて、いつでも対応できるようにしている。僕も慌てて劔『ガルガンティア』を握る手に力を込めたが、気付いた時には、宴が隣にいなかった。


「は?」


 思わず声が出る。前を見ればグレイもいない。どういうことだと後ろを向くと、そこには、ふっとばされた宴と、その真ん前に何ともないような感じでそこに立つグレイの姿だった。急いで、宴の方に駆けるが一向に近づかない。むしろ、遠ざかっているような気がする。どうしてだ? という疑問が浮かんだが、その直後の音によってその理由が分かった。


 ドゴッ、バゴッ、ゴキッ、バキッ、グシャ!


 とおおよそ人体からなってはいけない音が僕の体からなりだした。


「ぐわわわわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


 いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。唯ひたすらに体に痛みが駆け巡る。僕が宴に近づけなかったのは、グレイが僕が宴に近づく度に僕に攻撃していたからだ。恐ろしいのは、それを僕が認識というか、体に痛みが走るよりも速く攻撃したということ、その恐ろしさが体だけではなく心もむしばむ。『二重加速突風』は目で追えなかったが、決して戦うことが無茶ではなかった。感覚でなんとか戦えたのだ。だが、グレイが使ったあれは、それこそ、次元が違う。痛みより速く攻撃する。感覚よりも速く攻撃ができる。それは、高速ではなく、まさしく、音速や光速、神速のレベルだ。人が届きえない領域にいるということを指し示すのに他ならない。


「さて、悪いがこのまま一気に行かせてもらうぞ。俺とてこれを使用している以上無傷ではないし、制限もあるんでな」


 グレイがそういっている間に何とか宴と合流した。あいつがしゃべっている時間が合流できる唯一の時間だと本能的に理解したからだ。それは、僕だけでなく宴もそうだったから、この合流はできた。僕たちは言い合うこともなくどちらからとは言わず、互いの片手を握り合う。こうでもしなければ、また離れ離れになって、ぼこぼこにされる。


 僕らがあいつと渡り合っているのは二人の力を合わせているからだ。1+1を2にして戦っている。分断されたら1だから勝ち目はほとんどなくなるのは目に見えている。それ故の判断。手を握ってない方の手で武器を持つが正直冷や冷やものだ。これは言ってみれば、離れないためにどちらかが攻撃をくらったら、もう片一方も一緒に吹っ飛ぶことを意味する。ふざけている。死なば諸共といっても変わりはないのだ。


「どうするよ、目でも感覚でも今度のは無理っぽいんだが」


「さぁな、というか私としては、感覚の方が遅れてやってくるなんて馬鹿げた話だと思うんだが」


「そりゃあ、同感だよ。全くな!」


 殺気を感じたので宴を自分の方に寄せる。だけど、今度は僕の方に何かがやってくるような気がする。と、すると、今度は僕が宴に引っ張られる。ヒュン!と音がして、さっきまでの場所にグレイが居たと思ったら、今度は僕ら二人とも仲良く吹っ飛ばされた。


「ゲホッ、おいおい、あの一瞬で三回曲がりやがった。二段ジャンプよりもメンドくせぇ」


「ゴホッ、私としては、それより、また音の方が遅れて聞こえてきたことが最悪だよ、感覚に惑わされる」


 僕と宴は互いにグレイに悪態をつく。それは悪態といっていいかは分からなかったが、その次の瞬間には、またしてもグレイが目の前にいて、技を使用されぶっ飛ばされてしまった。


真空衝シュトルム・トゥ・ウェイブ


 幸い手を繋いでいたから、離れ離れになることはなかった。っ、それよりも、また地面にいればやつの独壇場だ。ここは空に行くしかない。と僕は『空渡うつほわたり』を使おうとしたがグレイに感知され、叩き落とされそうになったが、宴が銃弾を発砲して、距離をとってくれた。その隙に僕は宴を背負って空へと駆けた。


「飛んで駆けろ 空渡」


 とりあえずは空にいることで、距離が取れた。だけど、グレイのやつは『嵐風之回転弾ライフル・イン・ラファール』で捨て身の空中攻撃をしてくる。とりあえずは、それの警戒をしなければならない。それさえ避けることができたら、ことに空中で作戦が考えられる、まぁ、常に空気の層を弾かなければ僕だって耐空できないのだが。


「どうするよ、とりあえずは、逃げれたけど、不利には変わりがないぜ」


「それについては同感だ。だが、一応、私にも隠し玉はあることにはある。それに、やつとて、言ってた通りノーリスクであれを使ってないみたいだ。見ろ、最初に纏われていた『風衣』が消えている」


「何だって?」


 宴に言われた通りグレイを見てみると、確かにグレイが最初に纏っていた『風衣』は消えている。それに、辛そうだ。やっぱりノーリスクであれはきついか。と思ってたらいきなり消えた。まずい、来た! 一瞬で判断して、技を使う。


「廻って躱せ 浮転帆!!!」


 後ろで宴がウワァァァ!っていっているが、無視する。そのまま体を回転さして、大きく緊急回避した。次の一コマにはさっきいた場所にグレイが『嵐風之回転弾』で体当たりしていた。周りの風で少し切り裂かれたが、僕も学習していたので、そこまでの鎌鼬はくらわなかった。これで、ひとまずは一回防いだと思ったら、真横から僕は吹っ飛ばされた。


~~~~~

「な!?」


 私は驚愕の声を上げざるおえなかった。十三はキチンと二段構えだったあの『嵐風之回転弾』をかわしたはずだった。それなのに私たちは今こうして、地面に落下している。どうして!? そう思い、上を見たら、なんと、グレイが体から血を出しながら、空にいた。それが、示すのは、あの『三重加速突風』を使っている今は、グレイは無理やり体から血をだしながらなら、空でも戦えるという事実だった。


~~~~~

 咄嗟に宴を上にして、僕の体は地面にたたきつけられる。血を吐く暇もなく、痛みが襲ってくる。僕が叩きつけられた地面ではそこに、咲いていた花が空中に浮き、そして、地面に着いた時、花びらをすべて散らしていった。まるで、今の僕みたいだな。とか思って血を吐いて、僕は再び立ち上がる。宴も僕が守ったから無事だ。澪標さんの言いつけは守りたかった。


 しかし、腑に落ちない。どうして、僕は攻撃をどうやってくらったんだ。二段構えの攻撃はキチンと避けたはずだったのだ。いったい何が僕を攻撃したのか?疑問に思っていると宴が言った。


「十三。君をブッ飛ばしたのは、グレイ自身だ。どうやら、あの『三重加速突風』を使っている間は体から血を流しながらだったら、空でも戦えるらしい」


 そんな事実を告げられた。思わず声に出る。


「ふざけんな! メリットとデメリットが割に合ってねぇぞ。チートじゃねぇか」


「仕方がない。っ、来るぞ。十三!」


「クソッタレ!!!」


 何回かの攻防が終わり、このままじゃ負けることだけが確実に分かった。僕らはそろって息を荒げる。僕の技は未完成の技を一つ抜けば全部見せた。未完成も相手が早すぎて、使えない。どうすりゃいいんだよ。目線が思わず下がる。そして、一つの花を見つけた。それは僕があの時、地面に叩きつけられて、空中に浮いて、地面に落ちて散った花だった。いつの間にか、またこの場所にまで戻ってきていた。……待てよ、空中に浮いて、地面に落ちて散る? ……いけるかも知れない。とっさに思い浮かんだ技だが、もうジリ貧で戦っているんだ。これにかけるしかない。宴に確認を取る。


「宴さんよぉ、ちょいと今から無理なこと言うんだが、聞いてくれるかい?」


「なんだよ、十三くん。言ってみなよ」


「時間稼ぎして欲しいんだわ」


「おいおい、わかった。引き受ける。私も成功するか分かんない隠し玉使うさ」


「任したぞ!」


「任された!」


 僕は『空渡』を使おうとすると、グレイがいきなり現れた。流石のこいつも息が上がっている。だけど、それでも僕よりは速い。多分僕が空中移動の技を使うよりも先にグレイの『風纏爪ウェントス・クロウ』が僕に当たるだろう。だけど、お構いなしに僕は使う。僕は信じているんだ。あいつを。そして、グレイの後ろに幾つもの弾丸が迫ってることに気付いた。だが、グレイは笑って、僕から離れて、避ける。このままいけば僕が技を使うよりも速く、宴の弾丸が僕に直撃するだろう。このままいけばの話だが。


 宴が放った弾丸は僕に当たることなく、グレイが避けた方向に追尾する。そう、追尾弾ホーミングだ。宴は追尾弾を使ったのだ。そして、僕は高く高く駆け上がる。おおよそ、地上が見えなくなるまで。

そして、使う。さっき思いついた、即興の技を。


「落ちて散れ! 落花散!!!」


 それは、天空から落ちる。一つのつるぎ。まるで、流れ星のように、僅かな火を灯して、急速に落ちていった。


~~~~~

 私の追尾弾を避け続ける、グレイ。流石のやつも、もう『風衣』を使う余力はないらしい。グレイ自身が制限時間があるといっていたし、そういう意味では私たちのしぶとい生命力が勝ったといえるだろう。だが、これでは意味ない。それ故に、私は何発もの追尾弾を使って追撃した。微かに、隠し玉の成功を祈って。すると、やつは空へと逃げた。だが、空へと、逃げても多数の方向から迫りくる弾丸に、体力を消耗しまくったグレイは技を使うこともせず、そのままだった。そして、追尾弾が爆発を起こした。


~~~~~

 グレイは困っていた。そう、それは自分と戦う討伐者エクテレスの二人組のことだ。どうやら彼らは自分の主に喧嘩を打ったらしい。そして、彼らと戦っているのだが、これがしぶとい。中々にしぶといのだ。殺してしまっては、我が主は怒るだろうから、殺さずに痛めつけるしかない。おかげさまで『三重加速突風』を使わざる得なかったし、使っても、しぶとく生き残る。そして、そろそろ、自分もヤバくなってきたとき、状況が動いた。彼らの片方の男が空へ駆けようとしたのである。


 今空に駆けられたら、非常にしんどい。そう思って地にたたきつけようとしたのだが、もう片方の女が邪魔をした。そして、自分は今その女が放った追尾弾に追われている。攻撃技はあまり使いたくない。かといって、わざわざ『風衣』も使うまでのものでもないし、そう思っていると、女が追尾弾をまた追加で撃ってきた。そして、グレイは一つ妙案が思い浮かんだ。


いっそのこと、追尾弾通しをぶつけて、自分はその瞬間に爆発に隠れて、あの男を先に討とうと。その目論見は見事に成功し、グレイは天空から落ちてくる。十三を見つけた。何やら凄い技を繰り出しているが、当たらなければどうということがない。自分の近くに来た瞬間、この至近距離から『嵐風之回転弾』を当ててそれで、お終いだ。女の方は、男を戦闘不能にしてから爆発が晴れて、男が倒れるのを見て、動転している隙に倒せばいい。そう考えて、グレイはあと少しのとこまで来た、十三に向かって攻撃を当てる準備をした。


そして、皮肉にも刻は来る。十三が迫りくる時に『嵐風之回転弾』を使うとき、謎の衝撃がグレイを襲い、そして、落ちてきた、一つの劔の攻撃をくらった。


~~~~~

 どぉぉぉおぉぉぉおぉぉぉぉぉぉんんんんんんん!!!!!!!!


 そんな衝撃音が地面に響き渡る。そして、そこには、劔に刺されて血をまき散らしたグレイと、バテバテで倒れている宴がいて、僕はガルガンティアは離して、地面に尻をついた。そして、どちらともなく声が漏れる。


「「勝ったーーーぁぁぁ!!!!!」」


 その声は最後には、しぼんでいった。それもそのはず。二人とも、ギリギリだったのだ。宴が口を開く。


「それにしても、十三? 君って技多過ぎじゃない?何個あるのさ」


「ああん? 全部で、今作った落花散と、未完成のを一つ合わせて、九個だ」


「多っ!」


「いいだろ、別に。っていうか、最後何やったんだよ。お前。僕の落花散はあのままじゃギリギリ当たんねぇ起動だった。それなのに、いきなりグレイが何かに押し出されたように、僕の範囲に来たからさぁ」


「ああ、あれ? あれは」


「それは俺も聞きたいな。どうやって俺を攻撃した?」


 いきなりの第三者の声。それはグレイであった。ガルガンティアを刺された横たわった状態で聞いてきた。僕は起き上ってグレイに質問する。


「お前、まだやるのか」


「そんなわけがない。この勝負はまぎれもなくお前たちの勝ちだ。俺はただ、最後の衝撃について知りたいだけだ」


「あれは、私の成功するか五分五分の賭けだった、『跳躍銃弾弾き(マグネッツ)』さ。銃弾通しを跳躍させて、使う技だ。最後に私が弾丸を連発したのは、あのままじゃ、銃弾通しを引き合わせて爆発させられると思ったからね。ほとんど賭けでやった。まぁ、賭けには勝てて良かったさ」


成程なるほど。マグネッツか、覚えておこう。では、健闘を祈るぞ。あれほどの戦いを魅せられて、我が主が我慢できるわけがない」


「ああ、んなの分かってるさ。さぁ、本命といこうか」


「死亡フラグ建てすぎだよ、全く」


 僕に威勢のいい言葉に宴が呆れたように言う。しかし、これで戦うことができる。まぁ、想像以上に傷をくらいすぎたが仕方ない。そこは僕の落ち度だ。そんなことを考えていると、グレイの体が薄くなって消え、ガルガンティアが地面に落ちた。落ちたガルガンティアを僕は拾った時に周りの風圧というか、空気が痺れる感覚がする。それをかき消すような笑い声が響いて、そこに嵐が顕現する。


「くは、くはははははははははははは。いいイイ良い好い。まさか我が影を倒すか、倒しよったわ。ふははははははは。これだから人間は、これでこそニンゲンは、素晴らしいぃ!!!!!!! さぁ、やろう! 今すぐ、やろう!! 何なんだ汝ら。最高ではないか!? そう、意志。素晴らしい意志の力。いまだかつて、これほど心震えた物はない。血肉が踊り、心が高揚したせいで、天候を狂わしてしまったではないか。荒れて、荒れよるわ。されど、我は嵐の龍。これほどまでに相応ふさわしき状況コンディションなどあらんわ!!!」


「おいおい、ハイテンション過ぎだろ。目が血走ってやがる。興奮してるレベルじゃねぇぞ」


「おおよそ、彼がいったとおり、スイッチが入ってるね、あれ。ヤバいなんてレベルじゃなさそうだ」


 僕と宴はこの状況に対して、苦言を漏らすが、嵐龍はそれも関係ないかのように言い切る。


「さぁさぁ、汝らの意志。奴等の思いという名の意志を継いだ者の意志を、魅せて貰おうか!!!!!」


先制を仕掛けたのは僕でもなく宴でもなく、今一番テンションの高い嵐龍だった。小手調べをするように一気に技を開放するが、僕らにとってはその技さえも恐怖でしかなかった。


大気之アーエール・威風圧アトモスフィア


 襲い掛かる空気をも包み込む大気の威圧。否、それは威風圧。風圧では計り知れない威圧。それに加えての全てを吹き飛ばさんとする嵐龍の風圧。踏ん張らないと一気に持ってかれて吹き飛ばされる。足が竦むし、体は地面に押し潰されるような威圧を受けている。これが、嵐龍の威圧。十大龍席の力の片鱗。ふざけてやがる。これで、小手調べ。さっきのグレイの『真空衝』並みだぞ! だけど、負けるわけにはいかない。僕には戦う理由がある。意志を託してくれた皆の思いを継いだんだから、この程度でひるんじゃ駄目なんだ。


「だっあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」


 思いっきり叫ぶ。やつの『大気の威風圧』を吹き飛ばすように。宴がこっちをビックリした感じでこっちを見てるから笑ってやった。そうすると、宴も破顔した。さぁ、恐怖は振り払った。あの頂に挑む。そう決意し、宴と僕は武器を握りしめ、嵐龍に特攻をかけた。


「穿って崩せ 十字狩り!」


 先制を放つのは、宴ではなく、僕の攻撃。十字を描いた斬撃の衝撃波。距離はかなりあるが、どう対処する。僕が様子見をするように放った一撃は嵐龍にことごとく、潰された。


風陣波衝撃ラファール・オブ・オルヴィート


 風を纏い陣を描いて放たれた衝撃波はおおよそ180°に迎撃し、僕の十字狩りどころか、それに隠れて撃っていた宴の弾丸まで吹き飛ばした。突風のせいで視界が一時不自由になってしまう。急いで視界を元に戻す。なぜなら、嵐龍の攻撃はそれだけでは終わらない。続いて放たれるのは、不可視の攻撃。


鎌鼬デスサイズ


 ザスッザスッザスッザスッザスッ!!!!! と、そんな音が鳴り、僕と宴を傷つける。風で固めた小さな刃が僕らに連続で傷をつけていく。不可視故に見えることもできなければ、音はするが避けることは不可能に近い斬撃。嵐龍の『風陣波衝撃』からの『鎌鼬』。僕らはそのコンボをくらってしまう。


 前の戦いと変わらずたった二撃で僕らと嵐龍の差は明らかだった。でも、負けやしない。戦いは強いやつが勝つのではないのだから。僕のそんな思いに呼応するように、宴が攻撃を開始した。その攻撃は嵐龍に向かってくるが嵐龍は余裕でかわした。されど、宴の放った弾丸は空中でいきなり軌道を変え始める。それは、追尾弾ホーミングだ。僕は宴がやろうとしていることが分かった。


 早速、宴が万全で攻撃できるようにサポートに入る。放つのは五連の斬撃。だが、この攻撃事態に大した意味はないだろう。時間稼ぎになれば、儲けもの程度だ。


「ぶれて刻め 陽炎斬り!」


 僕の放つ五連の斬撃は案の上、嵐龍には通用しなかった。ことごとく、五連の斬撃は普通に全部避けられた。だけど、僕の本来の目的である。宴のサポートは成功した。後ろを見ると、既に宴が数発の弾丸を放った後だった。これで宴がやろうとした、『跳躍銃弾弾き(マグネッツ)』が成功するはずである。しかし、僕らのその目論見は、無残にも一瞬で潰された。


 嵐龍は追尾弾が幾つも自分についてくるのを見た瞬間、逃げるのを諦めて、迎撃する技を繰り出した。


「風陣波衝撃」


 その攻撃だけで、それだけで宴の跳躍銃弾弾きは阻止された。だけど、これだけじゃ僕らの攻撃は終わっていない。


 僕は嵐龍が風陣波衝撃が終わるころを見計らって、ガルガンティアを振るう。その攻撃はよけられるけど、僕の後ろから宴が放った数発の銃弾が嵐龍に迫る。嵐龍はそれを風でうっとおしい様に振り払うが、まだ終わりじゃない。嵐龍が銃弾を振り払う前、宴は追加で更に連発していた。幾つもの僕と嵐龍に迫りくる銃弾を、僕はガルガンティアの軌道に乗せて、新たな追撃を放つ。


「添って返す 灯楼流し!」


 僕は宴の撃ってきた銃弾を、ガルガンティアで方向を変えさせて、嵐龍の方に向かわせる。それは流石の嵐龍も少しビックリしたようだが、難なく躱す。だけど、本命までは読み切れていなかった。そう、僕が灯楼流しで返した銃弾の中に嵐龍が一番最初に風で振り払った銃弾に当たるように方向を変えたのがある。僕らが狙ったのは時間差跳躍銃弾弾きだ。


「ぬう!?」


 嵐龍はこの攻撃に気付いたようだがどうする。僕と宴のコンビ攻撃は中々上手く効果を発揮する。この攻撃を避けるなら追加攻撃。返してくるなら『篝火ずらし』で逸らして外させるだけ。どちらに転んでも僕らは大丈夫なはずだ。だが、嵐龍はそうはいくまい。


真空覇シュトルム・トゥ・ヴォイド


 されど、嵐龍が選んだのはそのどちらでもない、第三手。破壊だった。流石に銃弾事体を破壊されてしまえば相手に隙はないので、僕も追加攻撃をかけれなかった。思わず舌打ちしたくなる。そんな中、嵐龍が笑う。


「ふはははははははははは、汝ら。攻撃中々良かったぞ。特に今のは。どうやら、汝らは個々で戦うよりも力を合わせて戦った方が数倍も強いな。仲間と力を合わせて戦う。いいかな、それでこそ、ニンゲン。意志在りし者の戦いだ。強き者にも叡智を振り絞り、足りない部分を様々な手で補足する。1+1が2となり、または、1+1が3ににもなりかねる人の力。思いの力。意志の力。どれも我々侵略者アグレションにはないものだ。故に汝らは素晴らしい。さぁ、続きを始めようか!」


「お前がいきなりしゃべりだしたんだろ、けど、負けねぇさ。僕は、いや、僕らはな!」


「ふう、全く熱いねぇ。私は熱いのはあまり好きじゃないんだよ、だから、さっさと終わらせたいね。私たちの勝利で!」


「ぐわはははははははは、ぬかしよるわ!ニンゲン、やれるものならやってみろ! この嵐龍 ストームブリンガーはただでは死なんさ」


 その言葉を合図に僕らの戦闘が再び始まった。駆ける。宴には今からの行動で察してもらう。このままじゃ僕らのジリ貧になる。その前に、グレイを葬った技。『落花散』を使う。その為に隙を作ってもらう。僕は脚に力を入れて使う。空中移動の技を。


「飛んで駆けろ 空渡!」


 その言葉と共に僕は空へと翔け上がる。空を踏み、空を蹴り上げる。高く、高く。駆け上がる。だけど、威圧を感じる。それは嵐龍だ。僕が空に駆け上がるのを見て、僕を落そうとしている。だけど、僕は信じている、宴を、あいつが僕を助けてくれる、そう信じているから、大丈夫だ。僕はまだ翔け上がる。


 途中で『鎌鼬』が来たけど、ギリギリ届かなかった。宴が頑張ってくれているからだ。だから、僕は宴を信じる。そして、最後の最後で一つに纏められた『真空覇』が来たが、僕はそれを無視する。あの時の高さまではもうちょっとだ。あと少し、そして、僕はぶっ飛ばされる。そして、『真空覇』でぶっ飛ばされて、あの時よりも高い空中にいて、笑う。そして、繰り出す。その技を。


「落ちて散れ 落下散!!!!!」


 僕はガルガンティアに全体重を乗せ、地上に落ちていく。グレイの時と違って嵐龍は遥か高い空中にいるけど、それでも、僕と差はかなりある。それまでには重さと少しの火が灯っている。僕の予想通り、僕とガルガンティアは嵐龍に当たる前に一つの流れ星のような速さとなって、僅かな火を剣先に灯して、落ちていく。さぁ、どう来る!? 嵐龍。お前の影を倒した、この技を。お前はどうする。普通なら簡単によけるだろう。この技はあくまで一直線なのだ。僕が自由に軌道を変えることなど、今の僕にはできない。


 それ故によけようと思えば、簡単には避けれる。だが、それを彼の嵐龍がするだろうか。否、しない。僕は確信めいたものをもってそういう。あいつは意志を、ニンゲンの意志を求めていた。それを持っているといって、自信の影を倒したこの攻撃をただ躱すという判断をしないはずだ。やつは迎え撃つ。それか耐久勝負をしてくるはずだ。僕はこれまでの嵐龍との戦いでそう思っている。


 案の定、嵐龍はもう数距離しかないのに、何のアクションを起こさなかった。おそらく耐久勝負かと思った時、事態は急変する。嵐龍の周りにいきなり嵐が吹き荒れる。それで僕の『落花散』に対抗するつもりか?だけど、少し遅い。僕の方が速い。そう確信して、ガルガンティアと嵐龍が接触しかけた時、それは使われた。


嵐鎧ウラガン・アルマドゥラ


 それは嵐の鎧。吹き荒れし嵐の鎧。何人たりとも寄せ付けぬ、絶対防御。台風をその身に纏っているといっても過言ではなかった。僕が放った『落花散』はその嵐の鎧にはじかれた。ガルガンティアと共に、その身を空に投げ出された。僕にはもう、空中移動するほどの体力は既に残っていない。さっきの『落花散』に殆どの力を注ぎ込んだ。今の僕に出来るのはせいぜい、この後狙われた時のように回避する『浮転帆』が一回分くらい。どうする!? そんな考えをしていた僕を嘲笑うかのように状況は変動する。

嵐龍は笑って言う。


「今のは、やばかったな。我の唯一の防御技だ。『風陣波衝撃』と違って純粋な防御技だった。流石の我もあの攻撃はこたえそうだったので、使わせてもらった、文句は言うなよ、本来なら、避けてもいい攻撃だったからな。まぁ、でも、我に防御技をつかせたのだ。中々のものだ」


 そう、嵐龍は言う。だが、続けてこう宣告した。


「汝らは頑張った。十分に楽しめた。意志の力も充実した。もう、いいぞ。汝らにはこれ程という程に魅せて貰った。その礼として、最強の技で汝らを葬ろう。汝らに意志を託した者達を葬った技でもある。敬意評した者だけに使うことにしている。でわな、安心して、逝け!」


 そして、嵐龍は使う。己を嵐龍たらしめる最強の技を。嵐を司り、嵐を体現する技を。の者が型龍タイプ・ドラゴンである証を、十大龍席である根源を、第Ⅴ席の実力を。世界に、ニンゲンに、その日刻み込ませた。


飛翔断空エンド・オブ・暴嵐轟天凱風ストーム・テンペスト・爆纏覇スカイ・エア !」




嵐が、セカイを、喰らう。





 

 厨二満載の必殺技でごめんね。でも、必ず殺すというカッコよさがあるから、必殺技。現状、必ず殺せてないんだけどさ。

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