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第4章

どしどし意見をお待ちしております

「じゃあここで待ってますね」

「あぁ、すまない。流石に教室まで君を連れていくとややこしいことになりそうなんだ」

俺は久遠を図書館に連れてきた。授業をさぼるという選択肢もあったが、『さぼっちゃだめです』という久遠の俺を思う気持ちによって霧散した。

「なぜか君は制服を着てるし、ここなら不信がられることもないはずだ」

 久遠が言うにはこれも神様が用意してくれたものらしい。うちの学園の制服をどうやって知ったのか、どうやって久遠に合う制服を作ったかは・・・まぁ神様だからな、何でもありなんだろう。

 とにかく、制服さえ着ていれば少なくともここにいる間はごまかせるはずだ。教室棟をうろうろさせていれば教師の目に付くだろうし、部活棟に行っても久遠が暇をつぶせるということはないだろう。

 その点図書館なら、本がある。暇もつぶせて、他の生徒も自習やら読書やらで久遠を目にかけることもないだろう。一石二鳥だ。まぁ、久遠に本が理解できるか疑問ではあるが。

ちなみにこの図書館は他の建物もそうだが規格外の広さを誇っている。なんせこの図書館だけで俺が住んでいる街ぐらいの広さがあるからな。蔵書の数も全部で何万、いや何百億冊あるか想像がつかない。多分全世界の書物があるんじゃないだろうか。

「でも、すごいですね。私こんなに本?っていうんですか?いっぱいあるのを見るの初めてです」

 目を輝かせる久遠を可愛く思いつつ、

「とりあえず昼休みにまた会うことにしよう。え、と連絡はどうするかな」

 俺は携帯電話を持っているからいいが、久遠が持っていないのは明らかだ。放送で呼び出すわけにもいかないし、そもそも久遠に時間の概念があるかどうかわからない。

「とにかく、この入口から見えるところにいてくれるかな。本を読んでても構わない」

 その方が自然だろうし。

「わかりました。あの・・」

「何?」

 急に久遠が伏し目がちにしゅんとする。可愛いったらありゃしない。

「・・・早く来てくださいね。まだ、遥君しか知った人がいないし、さびしいです」

「光の速さで飛んでくる。待っててくれ」

 俺は親指をぐっと突き上げ、図書館を後にするした。

『遥君』か・・・・・いいっ!すごくいいぞ!

 まさか自分の名前を呼ばれてこんなにやけてしまうなんて思ってもみなかった。

 なんとか、顔を素に戻しつつ平静を装い教室に入った時にはすでに2時間目が終了するところだった。


 担任には叱られたが、今の俺を落ち込ませることは誰にも出来ないだろう。それぐらい今の俺は舞いあがっていた。

「さて、チャイムが鳴った。行くか」

 昼休みのチャイムを今か今かと待ちわびていた俺は即座に席を立つ。

「遥、お昼一緒にどう?」

 空海が俺の前に立ちはだかった。

「悪いが久遠のところに行かなくちゃいけない。お前一人で食べてくれ」

「じゃあいっしょに食べましょ。奢るからさ」

「おぉ!?」

 おいおい、こいつが奢るだって?人類滅亡の前兆じゃあるまいな。それだけは勘弁してくれ、まだ久遠とカップルになって3カ月記念日を迎えていない。

「って、そりゃ俺の財布じゃねぇか。俺の金で奢られても嬉しくねぇぞ」

「いいからいいから。ほら行きましょ」

 引っ張られる制服を振りほどく。

「おいこら、俺の意見を無視するな。行かねぇって」

 悪いが本当にこいつとお昼を食べるという選択肢は今の俺にはない。一刻も早く久遠のところへ飛んで行きたいんだ。

「分かったわよ。ほら財布も返すわ」

「あ、あぁサンキュー」

 やけにあっさりしてるな。普段のこいつならまず奢らされ、首を縦に振るまであきらめないはずなんだが。

 財布を確認する。本当に一銭も抜かれてなかった。マジか?

「じゃあ、悪いな」

 まぁいいか。そんなことを考える時間も惜しい。俺は急いで図書館へと向かった。

「はぁっ、はぁっ、はぁぁつ」

 全力疾走で図書館につき玄関が開く。

「あっ!遥君!」

 目の前に久遠が立っていた。自動ドアの玄関を開けたすぐ目の前に。

「えっと、ずっとここにいたの?」

「もちろんですっ」

 あぁ・・・俺はなんという・・・

「えぇ、どうしたんです遥君?何泣いてるんですか」

 幸せ者なんだ・・・

「とりあえず他の人が見てますから、ここを出ましょう。ね?」

 俺は久遠に体を押され図書館を後にした。


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