第2章
短めですが、更新です
「ふぁあああ」
なんだかよくわからない夢だった。朝、目を覚ました俺が抱いたのはそんな感想だった。
「なんで俺はあんな夢を見たんだか」
いつもなら断片的なことしか覚えていないのに昨日の夢はまるでさっきまで現実に起こったかのようにはっきりと記憶に残っている。こんなことは初めてだった。
「・・・!」
目覚まし時計に目をやる。とっくにいつもの起床時間を過ぎ今家を出ても遅刻になるかどうかのギリギリの時間だった。
「やばっ・・・」
慌てて身支度を整え、朝ごはんも食べずに家を飛び出る。空海ももうとっくに登校したようだ。姿は見えなかった。
「くそ、こんなこと一度もなかったのにっ」
天才たるもの皆勤賞すら逃してはならない。もはや義務感すら抱いていた俺は全速力で学園を目指す。
「あの~」
「なんだ、俺は急いでるんだ」
「私はどうすればいいんでしょうか・・・」
「急いでると言ってるだろ!」
誰なんだ。全速力の俺に後ろから声をかけてる奴は!
「あなたにそんな態度されたら悲しいです」
「あぁっ、たく」
横断歩道の信号が赤になり、振り返る。
「あぁぁ!お前、じゃない君は!」
俺と同い年ぐらいだろうか。俺より背は若干低いぐらいで腰まである烏の濡羽色の黒髪はその見た目に対し軽やかに風に揺れている。ぱっちりとした二重の眼、透き通った白い肌、白魚のような指、控えめだが形のいい胸、すらりと伸びた細い脚。
そして・・・そして!
彼女の美しい目をより一層引き立てているその眼鏡!自己主張に走らずあくまでも彼女にアクセントを与え、それでいて一つのチャームポイントとしての役割を果たしている。
昨日夢で見た俺の理想を一部の狂いもなく再現したパーフェクトガールじゃないか。
「夢じゃなかったのか!?」
「はぁっ、はぁっ。だからそう・・言ってるじゃないですか・・・」
俺の全力疾走に追いついたのは流石だが目に見えて疲れている。肩で息をするのもなんと可愛らしい。
「でも、あれは夢で、えぇ?」
いかん。なんだかよくわからずパニックに陥りそうだ。
「と、とりあえずどこか落ち着けるところで話しませんか?」
「そうだな。ぜひとも仲を深めたいところだ」
「あっ、でも学校の皆勤賞がかかってるんでしたよね」
「皆勤賞?何それ、おいしいの?」
そんなもん知らん。君をよく知ること以上に大切なことなど今この時にはないさ。
「それで、君は本当に昨日の君なんだね」
近くの喫茶店に腰をおろし、注文したホットコーヒーをすする。眠っていた脳がコーヒーの苦みでさえてきた。
「はい、こうして出会うまで信じてもらえないとは思ってましたけど」
彼女も同じくホットコーヒーをすすっている。目の前に出された時はこの黒い液体に不信感を募らせていたようだが一口すすると、感激を覚えたようだ。今は2杯目を飲み終え3杯目を待っている。
「しかし本当に現実に起こった出来事だったとはね」
無理もない。昨日の時点ではこれが現実に起こっているなんて思ってもみなかった。すべては夢の産物、そうとしか思えないだろ。
「でも私はあなたの目の前にいる。納得してくれました?」
そりゃあもう。
よく考えたら、現実である方が良いに決まっている。確か昨日神様が言うには目の前にいる彼女を文字通り彼女にしてくれと言った。
ならば、
「あの、もう一度確認するけど、本当に俺の彼女になってくれるん・・だよね?」
「はい」
「よ、よし。あの、それは、ありがとう」
「いえ、そのこちらこそこれからよろしくお願いします」
ふたりの間に沈黙が訪れる。えーと、せっかく念願の彼女が出来たのに言葉が続かない。
「そういえば」
「はいっ、なっ何かな」
「神様が言ってましたけど、私にあまりひどいことをしない方がいいっておっしゃってました」
どういう意味だろうか。あれか、子を思う親心みたいなものだろうか。
だが心配しないでもらいたい。それに関しては自信を持って言える。俺は彼女を傷つけるようなことは決してしない。文字通り、神に誓ってもいい。
「それを聞いて安心です。聞いた話だと、最悪地球が無くなってしまうようなので」
「え?」
それはちょっと、いや大分リスクが大きいような。
「じゃあ行きましょうか」
「・・・・!あぁ。と、どこへ?」
「学校です」
何故だ。