第19話「悪魔」
この人、やっぱり悪魔だな……。
実の娘に対し、同級生の男子の前で裸になれと言った真莉愛さんを見ながら、俺はドン引きする。
よく笑顔でこんなことが言えるものだ……。
「じょ、冗談ですよね……?」
翠玉は血の気が引きながらも、引きつった笑みを浮かべ、真莉愛さんの顔色を窺う。
逆に風麗は、全てを諦めたように俯いたままだった。
まぁ……真莉愛さんがこの状況で、冗談を言うわけがないんだよな……。
「私の命令に逆らうの?」
「――っ」
真莉愛さんの表情が笑顔から冷酷なものに戻ると、翠玉は息を呑み、ガタガタと震えながら自身の服に手をかけた。
風麗も、俯いたままゆっくりと服を脱ぎ始める。
さすがに、可哀想か……と思い、俺は目を閉じた。
「何をしているの、英斗君? ちゃんと目を開けて見ておきなさい」
しかし、目を閉じた直後、まるでそうするのがわかっていた――いや、実際そうするとバレていたんだろうけど、真莉愛さんがこちらを見てもいないのに、俺に目を瞑るなと言ってきた。
「年頃の女の子たちですよ……?」
「何を言っているの? どうせあなたも、雛ちゃんと同じ目に遭わせないと気が済まない、とか思っていたくせに」
うん、なんでバレているんだ。
やっぱりこの人は怖い。
だけど、さすがに全裸にまでしようだなんて、俺は思っていなかったぞ……?
「別に目を瞑ってもいいわよ? 雛ちゃんと、二度と会えなくなってもいいのなら」
「…………」
暗に『逆らうなら、雛を遠くに連れて行く』と言われてしまう。
俺がもっとも恐れて嫌がることを、的確に突いてきた。
だから俺も、この人にだけは逆らえないのだ。
翠玉はともかく、風麗には悪いと思いながらも、俺は彼女たちに視線を戻す。
震えた手でうまく脱げないようだが、それでも段々と時間が経つにつれ、染み一つない白い肌の面積が増えていく。
やがて、翠玉も風麗も、身に着けるものは純白な下着だけになってしまった。
しかし、白くて綺麗だった肌は、赤く染まってしまっている。
風麗は俯いているのでわからないが、翠玉の目には大きな涙が浮かんでいた。
「何をしているの? 私は、全部脱ぎなさいと言ったのよ?」
下着に手をかけようとしない姉妹に、真莉愛さんは更に圧を加える。
今まで一度も男の前で脱いだことなんてなかっただろうし、横暴な態度が目立ってもお嬢様だから、淑女なところもあるのだろう。
これ以上は、本当に酷だと思う。
「真莉愛さん――」
「黙っていなさい」
再度口を挟もうとすると、有無を言わせない態度で睨まれる。
俺がいなくなれば、翠玉や風麗もちゃんと脱げるだろうに、やはり辱めを受けさせなければ気が済まないのか?
それとも、何か他に狙いがある?
若干というか、結構無理なことをさせていることに、俺は疑問を抱いた。
「……っ」
翠玉は、目から涙を流しながら、右手で胸を隠すようにし、ブラジャーをゆっくりと手を伸ばすが――そこで止まってしまった。
風麗も、これ以上動こうとはしない。
「そう――逆らうのね?」
二人が言うことを聞かない。
そう判断した真莉愛さんが、翠玉と風麗に向けて歩を進める。
直後――翠玉が、風麗を庇うように、風麗と真莉愛さんの間に体を割り込ませた。
「ふっ――」
翠玉の妹を庇う行動に、真莉愛さんは口角を吊り上げる。
まずい――そう思った俺は、足に力を込めた。
「あなたの気持ち、汲んであげる」
邪悪な笑みでそう言った真莉愛さんは、翠玉の手を掴み――細腕の女性とは思えない腕力で、翠玉の体を宙に浮かせ――熱湯へと、ぶん投げたのだった。
何か違和感を抱きましたか?
もし抱いていた場合、それは凄いことです!
その違和感の答えは、この物語の最後にお伝えします。(というか、これでも許されるのかな?とちょっと疑問はありますが苦笑)







