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第1章 第5話 「終端の笑顔 ― 未来を掴む手 ―」
夜明け前の街は、霧に包まれていた。
オーケーはゆっくりと歩を進める。冷たい空気が頬を撫で、足元のアスファルトが湿った光を反射している。
胸の奥に残る微かな痛み――それは過去の自分が抱えていた“無力”の証だった。
「俺は、まだ終わってへん」
小さく呟く声が、静かな路地に溶ける。
かつて救えなかった人々、消えていった笑顔、交差点で見たあの眩しい光。
何もかもが彼の中で、もう一度形を成そうとしていた。
ポケットの中で鳴る通信端末。
そこには「接続:安定」の文字。
仲間たちの信号が微かに並んで点灯していた。
――誰も一人ではない。
オーケーは空を仰いだ。
雲の切れ間から差し込む朝日が、濡れた街を黄金に染める。
「約束したんや。もう、誰も泣かせへんって」
その目には、確かな決意が宿っていた。
遠くで桜の花びらが風に舞う。
まだ季節には早いはずなのに――。
その瞬間、彼は微笑んだ。
未来は確かに、今この瞬間から始まっている。
歩き出す足取りは軽く、迷いはなかった。
過去の痛みも、失った時間も、全てを抱いて前へ進む。
オーケーの物語はここから、新たな章へと続いていく。




