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第1章第2話「“だいたい”の彼方で」
リフォルドの空に、いつもより柔らかい光が満ちていた。
ナオは真語典を閉じ、シアと並んで丘に腰を下ろす。
「空が、桜色やな」
シアが呟くと、ナオはあくび混じりに笑った。
「ま、だいたい春やし。どっかで誰かがええことしたんやろ」
真語典のページが勝手に開き、知らぬ文字列を描き始める。
〈他界感応:守護定義更新〉
「OK、これ……誰かの“助け”が言葉になっとる」
「他の世界?」
「うん。誰かが“意味”を守った。その波が、ここにまで届いたんや」
風が丘を撫でる。
曖昧な世界の中で、ナオは小さく微笑む。
「完璧やなくてええ。だいたいOKでええ。
そんくらいの奇跡が、一番強いんや」
その瞬間、桜色の光が彼の周囲を包んだ。
リフォルドに届いた一片の想いは、現実の“定義”を少しだけ優しく書き換えていた。




