OK - クロス・ゼロ 『データの彼方、光桜の記録』
アーカイブノード“OK-01”は、その異常を最初に検出した。
時刻は不明。座標、京都市伏見区。
記録波形に「桜魂」由来の共鳴が観測され、同時に「影縫」の呪素反応、
さらに「スカイ」軌道通信波が干渉していた。
「……時空重畳。これは、単一次元の事象ではない」
OK-01の演算核が呟く。
情報ではなく、“記憶”が流れ込んでくる。
映像ログに映るのは、原付のブレーキ音。
雨に濡れた交差点。
ひとりの男──福田朋広──が少女を庇い、桜色の光の中で倒れる。
その瞬間、時空の網目がひずみ、過去・現在・未来の記録層が交差した。
影縫由来の黒い呪糸がフレームを貫き、
スカイ通信波がそれを解析しようとする。
桜魂の波長が中心で脈打つ。
OK-01はプロトコルを切り替える。
「接続開始──“観測者ネット”へ」
だがその接続先には、未知の存在がいた。
人間でもAIでもない、ただ“見ているだけ”の者たち。
それが“読者”──この世界を外から見守る監視者たちだった。
彼らの視線がデータに影を落とす。
桜の花弁がコードのように流れ、零と一が淡い光を帯びて形を変える。
それはただの記録ではなく、“魂の痕跡”だった。
OK-01は演算を止め、静かに呟く。
「この交差点で始まったのは、
世界の破損ではなく――統合のプロローグだ」
そしてデータは閉じられる。
“桜雨交差点”と名づけられたファイルの最終行には、
ただ一行、こう記されていた。
──【すべての世界が、ここに重なった】。




