表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

OK×桜 第1章 第3話 「声の余白 ― だいたいOKな再会 ―」

福田朋広は、ベンチの端に腰かけていた。

右手には使い慣れた杖。雨上がりの夜気が、頬をなでる。

向かいに座るOKが、録音機をそっと置いた。

「福田さん、あんた……覚えてはるか? 桜交差点の夜を。」


男はゆっくりと目を細める。

「……夢ん中で、よう見るわ。誰かが泣いとる夢をな。」

桜の花びらが夜風に舞い、街灯に照らされて淡く光る。

その光の中から、桐生さくらが姿を現した。

制服のまま、少しだけ背が伸びた彼女は、はにかむように笑う。


「覚えてへんのですね。でも、いいんです。助けてもらったことだけで十分ですから。」

朋広は、ゆっくりと笑った。

「ええやん、それで。……まあ、だいたいOKや。」

OKは録音を止めた。マイクが拾った最後の音は、風と桜の音。


彼らの周囲には、街の残響が重なっていた。

過去と現在、記録と記憶。

誰もが、自分だけの“意味”を抱えて生きている。

桜はそれを包み込むように咲いていた。


「なあ、桜さん。」

「はい?」

「人が人を助ける理由に、意味なんて要るんやろか。」

「意味より、想いが残るほうが……きっと、だいたいOKですよ。」


その瞬間、交差点の光が強く瞬いた。

桜の残滓が宙を舞い、スマホの画面に浮かぶ“記録”が淡く揺れる。

現実と記録の境界が、ひとときだけ曖昧になった。

彼らは知らない――その“余白”の向こうに、他の世界がすでに共鳴を始めていたことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ