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第九話 押せ押せアイドル

「え? ちょっと、何で?」

 いきなりの超展開に困惑してしまい、言葉が続かない。

 本当にあの宮下メイなの?

 見た目はそのまんまだし、声も全く同じだけど……え? 嘘だよね?

「やっと思い出したみたいね。よろしくね」

「あ、あの……よろしくと言われましても……俺達、何処かで会いましたか?」

「ううん、あの時、初めて会ったんじゃない」

「じゃあ、何で?」

「うーん、何ていうか、運命を感じたっていうか。あなた、名前高俊っていうんでしょう」

「は? な、何で知っているんですか?」

「へへ、昨日電話してくれたじゃない。そこで電話番号を検索したら、SǸSのアカウントが色々と出てきちゃって。あ、私の番号も教えるから」

「なあっ!? な、何て事を……」

 しまったっ! あの時、電話しちゃったせいで、彼女に色々と個人情報が漏れてしまったのか!

 ブロックしたから安心していたら、まさかそこまでしてくるとは……。


「それに、一緒に制服を着た女の子といたでしょう。あの制服、この近くの高校のでしょ。だから、あなたも同じ高校だろうなって思ったら、やっぱりそうだったのね」

「は、はあ……あの、それでオレに何かようですか?」

 動画サイトで彼女が喋っている動画は見たが、その時と同じかそれ以上の勢いで迫ってきているので、完全に押されてしまっていたが、一体、このアイドルが俺になんの用なんだ?


「うーん、そうだなあ。まずはお友達にならない?」

「な、何でです?」

「あなたの事、気に入ったの。一目惚れって奴? きゃー、そういうのあるのね。だから、まずはお友達から」

「…………」

 何を言い出すかと思ったら、一目惚れってさ……流石にふざけているのかと思い、頭が痛くなってきた。

 こういうの何だろう? アイドルの営業の一環とかだったりするのか?

 どうせならもっと金のありそうなの狙えば良いのに、俺はただの高校生で、しかもスプリングスターズもあのライブで初めて知った新参だぞ。


「友達が嫌なら恋人でも良いわよ」

「いきなりぶっ飛び過ぎじゃないですか! あの、いきなりそんなことも言われても困りますよ」

「あははは、高俊って、随分とシャイなんだねー。まあ、見た目通りかな。取り敢えず握手して。これからよろしくね」

「よろしくって……は、はい……」

 そう笑いながらメイさんが手を差し出してきたので、ひとまず握手はしておく。

 これで交際成立とかそんなぶっ飛んだ展開にはならないよな?

「あ、もう行かないと。今日もレッスンがあるんだ。んじゃ、バーイ♪」

 握手した後、メイさんはまたウィッグと眼鏡を装着して俺の前からさっそうと走り去っていった。


「な、何だったんだ……」

 本当にあの子がアイドルの宮下メイだったのか、未だに信じられなかったが、それ以上にあまりのテンションの高さに終始圧倒されてしまった。

 これは小川さん以上かもしれない……ま、まあ流石に冗談だよな?

 人気アイドルが俺に一目惚れ? ないない。

 いくら何でもおかしすぎるので、きっと営業の一環とか冗談なんだよ、うん。

 そう言い聞かせて、深呼吸を繰り返しながら、家路へと着いて行った。


「はああ……色々あり過ぎて、疲れてしまった」

 今日の出来事を思い出しただけでグッタリしてしまい、その場に崩れ落ちそうになる。

 小川さんからいきなり結婚してくれと言われ、その帰りにアイドルの宮下メイに……嘘だ!

 こんな事が一日の内に起きるはずはない!

 何かの夢に決まっているじゃないか。

「そうだよ、夢に決まっている」

 はは、色々あって疲れているんだろうな。

 一日寝れば、またいつも通りの朝が待っていると思いたかったが、そう言い聞かせている間に、電話がなったのでスマホを見ると、小川さんからの着信だった。


「はい」

『やっほー、タカちゃん。今、部活終わったところなの』

「あ、そうなんだ。お疲れ」

 しばらく一人でゆっくりしたかったんだが、小川さんから電話がかかってきたので、しばらく彼女と話し込まないといけなくなってしまった。

『何、その声? まるで私が電話してくるの嫌みたいな感じじゃない』

「そ、そんなことはないよー。どうして、そんな酷い事を言うのさ」

『ふーん。なら良いけどさ。ところで、さっきの返事なんだけど』

「さっきのって」

『私と結婚してくれってやつ。返事』

「…………」

 おいおい、まだ言ってきているのか。

 さっき今すぐには返事が出来ないって言ったはずだけど、小川さんもかなりしつこい子だな。


「いやー、はは。流石に高校生でそんな結論を出すのは無理ですって。本当、頼むよ。まだそんなことを考えたくはないんだ」

『まだねー。じゃあ、いつになったら良いのかな?』

「大学を出て就職してからがベストじゃないかなー、はは」

『それ何年後よ? 最低でもあと七年はかかるじゃない。そこまで待たせるなんて、タカちゃん酷いよ。私をキープし続ける気?』

 酷いも何も、高校生で結婚できないんだから、しょうがないじゃん……やっぱり、小川さんも色々とおかしい子だよ。

 もしかして地雷って奴なのかなこれは?


「とにかく返事は無理だから。そんな焦らなくても良いじゃん。俺、信用ないかな?」

『アイドルにデレデレするような子は信用できないかなあ』

 う……アイドルって、宮下メイの事だよね?

 さっきバッタリと会って、一目惚れしたとか言われましたって告げたら、どんな反応が返ってくるか。

「何度言っても無駄だよ。返事は無理って事で」

『あーあ、全く私も思っていた以上に愛されていないのかな。もう良いよ、じゃあね』

 返事を頑なに保留し続けると、小川さんも不貞腐れてしまったのか、電話を切ってしまった。

 機嫌を損ねちゃったかな……これで小川さんとの関係も終わりだと悲しいけど……。


「ん? また電話……これ誰かだ? はい」

『やっほー、高俊。元気している?』

「えっと……」

『私だよ、宮下麻衣。あ、今はメイとして活動中かな。レッスンの休憩中なのー』

 今度は宮下メイかよ……小川さんが電話を切ったすぐ後にこれとはすごいタイミングだ。

「何の用でしょうか?」

『用がないと電話しちゃダメなのかなー? 私ら、もう知らない仲じゃない』

「は、はあ……」

 そりゃ知り合いとは言えるかもしれないが、いきなりそっちから話しかけておいて、知らない仲じゃないとか言われてもね。


『今、家に居るの? 今度、二人で会わない?』

「えっと二人でですか?」

『そう。良いじゃない、会おうよ。デート、デート』

 アイドルがそんなことを気軽に口にして、大丈夫なのかとこっちがヒヤヒヤしてしまうが、この子もやっぱり小川さんと同じくらいおかしい。

「あー、そうですね……」

『明日、レッスン休みなんだ。二人で会おうよ、ね? 学校は何時に終わる? 四時半に駅前に来てね。それじゃー、もう休憩終わるから』

「え? ちょっ!」

 一方的にそう告げた後、宮下メイは電話を切ってしまった。

 えっとこれってデートに誘われてしまったって事?

 明日も小川さんは部活があるから大丈夫だろうけど……じゃなくてさっ! ど、どうすれば良いんだよこれ!?


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