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第七話 揺らぎ始める心

「うーん、何だか彼氏というよりは子ども扱いされているような……」

 家に帰った後、小川さんとの関係を改めて思い直してみるが、やっぱり彼氏として扱われている感じがしなくてイマイチ釈然としない。

 俺が男としてしっかりしてないのが悪いんだけど、小川さんも今みたいな関係で満足なんかな。

 そもそも彼女は俺のどこを好きになったんだろうか?

 別に小川さんに好かれるような事もしとらんし、俺が沙月に熱を上げる前から、俺が気になっていたんかな?

 その辺の事も後で彼女に聞いてみるか。


「あ、そうだ。さっきもらったたこ焼きでも食うか」

 デート中に謎の女からもらったあのたこ焼きを今、食べてしまうことにする。

 変な女性だったけど、毒とか入ってないだろうな……まあ、俺に毒なんか盛ってどうするんだって話だけど、ちょうど未使用の爪楊枝も付いているし、頂くとするか。

「いただきます。うん、美味いじゃないか」

 あそこのフードコートのたこ焼きは初めて食べたが、なかなかの味だ。

 タコも結構大きいのが入っているし、食べ応えもある。

 小川さんも一緒に食べておけばよかったのにな。といっても、今更遅いので、俺が全部いただいてしまおう。

 毒もなさそうだし、このたこ焼きをくれたお姉さんに感謝しないとな。


「ん? 何だこれ?」

 たこ焼きを何個か食べると、パックの底に紙切れが入った小さなビニールのパックがあったので、ちょっと取り出してみる。

 ソースでちょっとベタ付いているが、何だこれ?

「メモ用紙か? えーっと……電話番号が書いてあるな。『ここにtel』って、なんだよ気味悪い」

 あの変な女が入れたっぽいが、やっぱり何かの勧誘だったのか。


 もしかして闇バイト? それとも変なモノを買わせる気か?

 怪しさ満点なのでさっさと捨てちまうべきだが、何となく気になってしまい、ちょっとだけ試しに電話してみたい誘惑に駆られてしまった。

(おいおい、はやまるなよ。絶対にヤバい番号だぞこれは)

 そう思いながらも、電話番号を入力していき、電話をかけてみる事にする。

 だって気になるじゃん。

 好奇心を抑え切る事ができずに、電話をかけてみるが……。


『ただいま電話にでることが出来ません。ピーッという発信音の後に……』

「なんだよ、やっぱりイタズラか」

 留守番電話のメッセージが出て来たので、やっぱりイタズラだったか。

 くそ、俺の電話番号を相手に提供しただけじゃねえか!

 ムカつくからブロックしてやろうっと。

 これで向こうからかかってくることはないから、一安心だな。

 まあ、もう会うこともないだろうよ。


「あ、そうだ。今日見たアイドルの子、名前何ていうのか、調べてみるか」

 デート先のモールでライブをしていた金髪の子の名前を知りたかったので、ユニット名で検索してみる。

 確か『スプリングスターズ』だっけ? その名前で検索をしてみればすぐに出てくるだろう。

「出てきた。えっと、あの金髪の子は……この子か」

 ユニット名で検索すると、公式サイトが出てきたので、あの金髪の子の名前もすぐにわかった。


「何々、『宮下メイ』っていうのか……オーストラリア人とのハーフ? へえ、だから金髪だったのか」

 ということはあの金髪も碧眼も素のままなんだ。

 年齢は……俺より一個上の女子高生。身長は百六十二センチで、趣味はスポーツと歌を歌う事。

 ライブをするのが大好き

 動画サイトで彼女の動画を見てみようっと。


『はーい、皆さん、こんにちは。スプリングスターズの宮下メイでーすっ! 昨日は、私たちのライブ、たくさんの人が見に来てくれて、とっても嬉しかったです! ありがとうございます!」

 動画サイトでトップに来た動画を見ると、メイちゃんがすごくハキハキした明るい声で話しており、聞いているだけで元気が出てきそうであった。

 笑顔もマジで可愛いし、本当に太陽みたいな子だな。

 ライブを見た時も感じたけど、小川さんに結構雰囲気が似ている気がする。

 その小川さんを更にレベルアップさせた陽キャと言った感じだな。


「うーん、これはちょっと推してしまうかもしれない」

 さっき俺と目が合って手を振ってくれたことからも、ファンサービスの良い子なのは確かだ。

 こっそりフォローしておこうっと。

 別にアイドルをフォローするくらい良いよね。これで浮気とか言われたら、流石に敵わない。

 今日はこのメイちゃんに会えただけでも、良い日だったな。

 何て思いながら、スプリングスターズの動画を見て、一日が終わってしまい、すっかり宮下メイのファンになってしまったなと思いながら眠りに就いたのであった。


 翌日――

「ふわあ……ちょっと、寝不足だな」

 遅くまで動画を見ていたので、寝不足気味のまま学校へと向かう。

 小川さんは今日は柔道部の朝練があるらしく、俺とは一緒に学校へ行けないようだったが、ちょうどよかったかもしれない。

 彼女のテンションに付いてこれるだけの元気が今はないので、俺も朝くらいはゆっくりしたいと思いながら、電車に乗り込んでいった。


「おはよう、タカちゃん」

「あ、おはよう」

 時間ギリギリに教室へ着くと、朝練を終えた小川さんが俺にポンと挨拶してきた。

「どうしたの? 何か疲れた顔をしているけど?」

「ちょっと寝不足で」

「ふーん。まさかと思うけど、昨日のアイドルの動画とか見てないよね?」

「う……うん、見ていたよ。やっぱり気になってさ」

「あっさり認めないでよ! そんなにあの金髪の……ああ、そうだ。宮下メイって言うんだっけ、あの子。気に入っちゃったの?」

「気に入ったというか、気になったというか。良いじゃん、動画を見るくらいさ」

「ああ、もう。良いじゃんじゃないよ。私以外の女子に目移りしちゃダメって言ったじゃない。確かにあのメイって子は可愛いけどさ」

「うんうん。小川さんに似ていたよね」

「そ、そう……って、誤魔化されないんだからね。全く、もう」

 メイちゃんが小川さんに似ているというと、小川さんも一瞬、嬉しそうな笑みを浮かべたが、すぐにそっぽを向いてしまう。


 アイドルに似ていると言われて、まんざらでもないのかな……まあ、顔が似ているというよりは、雰囲気や性格が似ているというかね。

 小川さんもアイドルデビューしたら人気出るかな?

 背も高いしスタイルも良いし、運動神経も良いからな。そう言えば、あのメイちゃんもスポーツ得意なんだってな。

 まあ、小川さんはアイドルというよりはモデルが似合いそうだけどな。

 スカウトとかされないのかな……されても不思議じゃないけど、もしそうなったら、彼女との差が更に開いてしまうなと考えてしまった。


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