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恋愛にトラウマのある俺が、超陽キャの女子に一方的に付き纏われているんだが  作者: beru


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第十五話 お友達になりたい

「そ、そんな……こ、こんな事があるなんて……タカちゃんっ! 何で黙っていたのよっ!?」

「いや、そうは言ってもさ! こんな事、言える訳ないじゃん! 俺だって信じられなかったんだし!」

 思いもよらぬ先輩の告白に血相を変えて小川さんが俺の胸倉を掴んで、凄んできたが、こんな事、彼女に言えるわけがない。

「まあ、落ち着いてよ。高俊を責めるのはかわいそうだと思わない? 文句があるなら、私に言うべきだと思うけど」

「あなたは黙っていてくださいっ!」

 ニコニコ顔で宮下先輩がフォローを入れてくれたが、すっかり頭に血が昇っていた小川さんは聞く耳を持ってくれず、先輩を一喝する。

 てか、これは俺が責められないといけない話なの?


「と、とにかく俺だってまさかと思ったんだしさ……本当に先輩とは何もないから、落ち着いてくれ」

「何もないね……本当なんですね?」

「んー? まあ、まだ付き合ってはいないけどね」

 烏龍茶を飲みながら、他人事みたいな口調で先輩は答えたが、頼むから俺にキスしたことは絶対に口にしないでくれ……この状況だと、そう祈るしか無かった。

「何がまだですか! アイドルなのに人の彼氏にちょっかい出すなんて、非常識過ぎます! 彼は私と付き合っているんですから、あなたの入り込む隙なんてありません! それだけですから!」

「入り込む隙はないねー。本当にそうかしら? まあ、最終的には高俊が決めることじゃないかしら? そうよね〜?」

「これは私と彼の問題なんですから、あなたには関係ありません! さあ、もう行くよ! これ以上、この人と話すことなんかないでしょ!」

「ちょっ、引っ張らないでっ!」


 まるで子供を強引に連れ出す母親のように、俺の手を引いて、小川さんは強引に部屋を出ようとするが、先輩は俺の腕を掴み、

「待ってよ。どうせカラオケに来たんだから、三人で歌いましょうよ」

「私、カラオケ好きじゃないので結構です」

「ふーん。そうだ。千波、連絡先交換しない?」

「な、何でですか?」

「いいじゃない。あなたともお友達になりたいから。あ、私の事、麻衣って呼んでくれると嬉しいなー。高俊とはもうしているから、千波も良いでしょう」

「う……」

 小川さんとお友達になりたいって言う神経が、俺には全く理解できなかったが、先輩に眩しいばかりの無垢な笑顔で連絡先の交換を迫られ、小川さんもかなり動揺してしまい、言葉を詰まらせる。

 俺としては二人が仲良くするのは一向にかまわないんだけど、先輩には俺の


「えへへ、ありがとうー。これで、三人ともお友達だね」

「別にあなたと仲良くするつもりはないですから」

「まあ、良いじゃない。宮下先輩もあんま煽るような事を言うのやめてくださいよ。こっちも胃が痛くなりますから」

「あのさー、高俊。私の事、呼び捨てでも良いって言ったでしょう。宮下先輩とか、いつまで他人行儀な呼び方しているのよ」

「いえ、流石に呼び捨ては……」

「じゃあ、下の名前で呼んでよ。麻衣ってのが私の本名なんだからさ」

「わ、わかりました。麻衣先輩」

 まだ知り合って間もないのに、呼び捨てにするのは抵抗があったので、下の名前で先輩を付けて呼ぶと、麻衣先輩も顔を赤くし、

「くううう……なんか、距離が近くなった感じ。これからも仲良くね、高俊」

「も、もう行くよ! いつまでもデレデレしてないっ!」

 俺の手をがっしりと握って、感激の表情で俺に笑顔でそう言うと、小川さんがまた俺を引っ張って、今度こそカラオケボックスから連れ出していく。

 呼び方ひとつで、何か距離が近くなったような気分になってくるな……不思議だ。


「全く、こんなことになるなんて……これ、夢じゃないよね?」

 カラオケボックスから出た後も、小川さんは憔悴しきった顔をして、そう呟くが、確かにアイドルが自分の彼氏にいきなり言い寄ってきたとか、悪夢でしかないわな。

「タカちゃんが、しっかりしないからこうなるんでしょう! いつもだらしないから……」

「いや、だから俺はちゃんと断ったんだよ。小川さんと付き合っているから、付き合えないって。それでも麻衣先輩が……」

「それよっ!」

「え?」

 必死に言い訳すると、小川さんが俺の顔をびしっと指で差し、

「いつまで私の事、『小川さん』って呼んでいるのよっ! もう付き合っているんだし、私達、知り合って何年も経っているでしょう。それなのに、未だにそんな呼び方して……だから、交際を疑われちゃうんじゃない!」

「あ……」

 言われてみれば、付き合っているのに、小川さんって呼ぶのは確かに変だな。

 しかも同級生なんだから、別に遠慮する間柄でもないんだし、つい今までの癖でこう呼んでしまっていた。


「私の事も千波って呼んで。ほら、早く」

「え? 今から?」

「当り前でしょう! むしろ、遅すぎるくらいじゃない」

「わかった。千波」

「~~……っ! そ、そう……やれば出来るじゃない」

 意を決して、小川さんを千波と呼び捨てにすると、千波も顔を赤らめて、照れくさそうな反応を示し、視線を逸らしてしまう。

 同級生で、もう何年も仲良かったって仲なのに、いざ下の名前で呼び捨てにするとなると、やっぱり緊張しちゃうな。

 まあ、これに関しては俺も悪かったのかもな。


「俺の事も、呼び捨てにしてよ」

「駄目だね。タカちゃんは子供っぽいし、麻衣先輩の事がケリがつかないと、一人前の彼氏とは認めてあげない」

「はあ? それ、ちょっと勝手すぎじゃない?」

「当然でしょう。今ので私のタカちゃんの株が大暴落しているんだから。信用を取り戻したければ、もっと男らしく、彼氏らしく振舞うこと」

 おいおい、俺の事を半人前扱いするのは流石に酷いんじゃないか?

 麻衣先輩の事も俺に非がある事だとは俺は思ってないんだが、それにしても俺を子ども扱いするのはちょっとね。


「はあ……本当、どうしよう……あんなのがタカちゃんに言い寄るなんて」

「本当に嫌なら、どっかの雑誌にタレこむとかどう?」

「私がそんなことをして、どうするのよ? 一応、私もまだ話し合いで解決したいの、鬼じゃないし。それに麻衣先輩は非常識にもほどがあるけど、アイドルとして終わらせたら、今度は遠慮なくタカちゃんを押し倒してきそうじゃない、あの人」

 ああ、それはあるかもしれないな……今はアイドルという立場があるから、あれでも麻衣先輩なりには自重している部分もあるんだろう。

 外を歩く時もカツラして、変装しているくらいだし、素顔で堂々と付き合えないのはやっぱり不利だろうしな。


「へえ、千波も結構良い人なんだな」

「何か棘のある言い方が引っかかるんだけど、私はタカちゃんのことを許したわけじゃないからね。お詫びにあれ奢って」

「え? あのクレープ? 良いけど、そんなんで良いの?」

「取り敢えず、今日はそれで機嫌を直してあげるってだけ。これで許されるわけないでしょう」

 千波が近くにあったクレープ屋の屋台を指差して、クレープをねだってきたので、それくらいならと思い、俺が奢ってあげることにした。

 何だか本気で怒っているのかどうなのかもよくわからなかったが、とにかく千波が俺と別れる気がなさそうなのは良かったかな。

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