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私以外は愛さないで  作者: 遠藤 敦子
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 岡下先輩は4月から集大に行くとのことで、隣県で1人暮らしをするという。あとは私が現時点で考えている高校卒業後の進路の話やお互いの話など、他愛もないやりとりを重ねた。岡下先輩の卒業式の日が近づいてきたので、私はさりげなく

「卒業式の時にお見送りに来てもいいですか?」

 と聞いてみる。岡下先輩は「あーいいよ! ありがとう」と快く了承してくれた。卒業式の後に会えないかと聞くと、

「卒業式の後は彼女と会うことになってて。ごめんね」

 と返ってくる。彼女いたんだ、と私は頭が真っ白になった。むしろ岡下先輩のような爽やかな雰囲気の人に恋人がいない方がおかしな話ではあるけれど。私はショックを受け、ベッドの上でしばらく放心していた。岡下先輩には他校に彼女がいるそうで、これ以上私とのやりとりに付き合わせるのも申し訳なく思う。そういうわけで、私は卒業式の日を境に岡下先輩のことはもうあきらめようと決心した。


     *


 卒業式当日、私は学校近くのフラワーショップで小さめの花束を購入する。岡下先輩は太陽のような明るい雰囲気を持つ人なので、黄色やオレンジを基調とした花束を作ってもらう。どんな反応をされるか楽しみだった。また彼女がいることを知ってしまった以上、これ以上踏み込むことはできない。岡下先輩への想いを断ち切るよう、区切りをつけたかったのもある。


「ともかちゃんがどの子かわからないから、写真とか送ってもらえる?」

 と先日岡下先輩に言われ、私は友達と一緒に撮ったプリクラを送った。私の顔さえわかれば良いかという思いと、友達2人のプライバシーを守るため、彼女たちの顔は加工アプリにある犬と猫のスタンプで隠す。ブス過ぎて驚かれるかなと思ったけれど、岡下先輩からは

「わかった、ありがとう! また卒業式当日に待ってるね」

 とだけ返ってきた。ああそんなものかと、私は拍子抜けする。後輩の女子の容姿に触れるような発言はしないという優しさなのだろう。


 私は体育館近くの通路で卒業式が終わるのを待っていた。数分後、卒業生たちが担任の先生に連れられてどんどん退場してくる。岡下先輩は1組だったので最初に出てきた。バスケットボール部の子たちが岡下先輩に色紙やプレゼントや花束などを渡している。私もそのタイミングで

「卒業おめでとうございます……!」

 と花束を渡した。緊張していたのもあり、声がうわずっていたかと思う。岡下先輩は私から花束を受け取り、高く掲げて嬉しそうに花束をみんなに見せていた。その様子を見て私も嬉しく思ったのだ。

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