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文化祭の次の日が体育祭だ。この日のために今まで応援練習を頑張ってきた。私たちのチームが優勝して嬉しかったけれど、岡下先輩と顔を合わせるのもこれが最後だと思うと名残惜しい。他の友達は同じ部活の応援団員や団長と写真を撮っていたのもあり、私も岡下先輩に「写真を撮ってください」と言えばよかったかなと思った。そうしたら周りから噂されそうなのもあり、できなかったけれど。
数ヶ月後、バスケットボール部の子たちが岡下先輩について話しているのを私は聞いてしまう。
「洲先輩、推薦で集大の経済学部に決まったらしいよ」
「えっ? じゃあ指定校推薦ってこと?」
「そう。校内選考に受かって面接にも受かったって」
「えー、すごいじゃん集大って」
私はあわよくば岡下先輩と話してみたいと思っていたけれど、受験の邪魔になるのではないかと懸念する気持ちもあった。しかし推薦で進路が決まったことを知り、それなら岡下先輩が隣県に行ってしまう前にやりとりするきっかけを作ろうと思ったのだ。
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2月になり、私は岡下先輩にバレンタインデーでチョコレートを渡そうと決める。いきなり手作りだと怖がられそうなので、市販のチョコレートを買うことにした。手紙があった方が誰からかわかりやすいかなと思い、私は手紙も書いたのだ。
岡下先輩へ
初めまして。いきなりすみません。
1年1組の仲川です。
応援練習の時に岡下先輩を見かけて以来、気になっていました。
良かったら連絡ください。
インスタ:@tomoka_n0515
1年1組 仲川朋香
キャラクターものではないけれどシンプルでかわいい便箋に、このように手紙を書いた。これで連絡がなければ、私はもう岡下先輩のことはあきらめるつもりでいる。それくらい覚悟して書いたのだ。岡下先輩が学校に来る回数も残り少なくなったのと、直接渡す勇気もなかったので、私は岡下先輩の靴箱にチョコレートを入れる。これで連絡が来たら嬉しいし、来なかったら来なかったでもういいやという気持ちだった。
その日の夜、私のスマートフォンにインスタグラムの通知が来る。開いてみると岡下先輩からメッセージが来ていて、このように書かれていた。
「仲川さんですか? チョコレートありがとう! 岡下です」
私はまさか岡下先輩から連絡が来るとは思っていなかったので、嬉しくて1人でベッドでふふふと笑った。そこから私と岡下先輩はインスタグラムのダイレクトメールでやりとりを始めることになる。