新キャラ続々
自宅から自転車で10分弱の場所に僕が勤めるコンビニは存在した。
店舗の名前はレイトコンビニ。店長含め、5人の店員が働く個人経営型のコンビニだ。
駐車場の隅、邪魔にならない場所に自転車を停めて店内に入れば見知った顔がレジに立っていた。
彼女の名は成瀬 雅。おだんごヘアーが特徴の30代の女性だ。
子育ての傍ら、ここで働いている。接客中ではないことを確認して成瀬さんに僕は声を掛けた。
「おはようございます」
「おはよ、成川くん。今日も頼りにしてるわ」
「成瀬さんの期待に応えれるように頑張ります」
「肩肘張らない程度の頑張りで良いわよ。真面目なのは美徳だけど、無理しちゃ駄目よ?」
「はい、ありがとうございます」
苦笑する。子育てをしているからか、成瀬さんは時々、年下の僕のことを子供のように扱うことがある。
本人に自覚はないようだが、そう接される度に僕は実家の母さんを思い出す。
家の母親は優しい人でははあるが、兄さんの件があるからか、心配性だ。
やれ、困ったことはないか、飯は食えてるかと、月に1度は必ず電話が掛かってくる。
心配してくれるのは嬉しい反面、少々煩わしいと感じてしまうのは親不孝者だろうか。
そう言えば今月はまだ電話がなかったと、思い出していれば成瀬さんが思い出したように声を上げた。
「あっ、そうそう。店長が成川くんのこと待っているわ。なんでも頼みたいことがあるそうよ」
「頼みたいことですか?」
店長こと如月さんから頼まれることはこれが初めてではないが、いったいなんだろうと、首を傾げる。
「さぁ? 私も分からないわ。あっ、でも。この前、面接していたからその件かも知れないわ」
「了解です。具体的な話は如月さんに直接聞いてみます」
「えぇ、そうしてちょうだい」
客が向かって来るのを確認して会話を切り上げ、僕はバックヤードへと向かう。
飲料水の棚の近く、スタッフオンリーの扉を抜けて中に入れば見慣れた部屋の姿が視界に入る。
部屋の中には髪をオールドバックにした男性が1人いるだけで、同じシフト帯の同僚の顔は見えず、僕が一番乗りみたいだ。
扉が開く音に気が付き、男性ーー如月さんがこちらに振り向いて、来たのが僕だと知るや否や僕に向けて手を持ち上げた。
「よっ。日見人、待ってたぞ」
「おはようございます、如月さん。僕に頼みたいことがあるんですよね?」
「聞いてるなら早い。今日、家に新人が入って来るからその教育を頼みたいんだわ」
「やっぱり、そんなところだと思ってましたよ。たまには自分で教えてくださいよ」
「日見人の方が教えるの上手いんだから、俺がわざわざ教える必要はないって」
「それでも店長ですか……」
「なら、日見人が店長やるか? 日見人なら安心して任せられるし」
「それ、面倒臭がってるだけですよね?」
「バレちゃったか! だけど、任せても良いって思ってるのはホントだ。なんたって、俺の次に長いからな」
「はぁ~」
如月さん。本名、如月 隆次。レイトコンビニの店長にして、|この店一番の面倒臭がり屋だ。
長くなりそうなんで、分けます。