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春の訪れ、春の出会い

色々調整中~。

『桜は~~に満開予定です』


もう、そんな時期か。

スマホ越しに見るニュース。カメラが向けられる先、蕾が実る大きな桜の木が映し出される。

ついこの間まで雪や寒さの話ばかりしていたというのに、時間が経つのは早い。

今やニュースもYouTubeで見る時代。テレビを使わなくなって久しいと感じながら横になったまま背伸びをする。

これをやらなきゃ朝は始まらない。心地の良い弛緩を感じながら、僕は起き上がる。


「今日のシフトは夕方からだっけ?」


気になりスマホのカレンダーを見れば、Dの文字。夕方勤務を指す文字が書かれていた。

予想が当たり良かったと、僕は胸を撫で下ろす。これが早朝勤務であれば遅刻は確定、僕は店長に叱れてしまう。

店長の怒鳴る姿を想像しかけ、全然イメージできないと笑う。


如月(きさら)さん、ミスっても笑って許してくれるからなぁ」


さすがに大きいミスは叱るだろうが、そんなミスは今のところ無いため、余計にその姿が想像できない。

あの人が怒ることはあるのだろうかと思いつつ、軽食を作り、朝食として食しながら動画を楽しむ。

なんてことのない日常。変わらぬ日常に飽きつつも、嫌いになれない日々に変化が訪れるのはいつも唐突だ。

ピンポーン、とチャイムが鳴る。

まだ朝の8時で、荷物が届くような時間ではない。

勧誘だろうと、この時間はまだ働いていない筈だ。

訝しげに眉を顰め、テレビドアホン越しに外を見る。


「ッ!」


絶句した。家の外、玄関に居たのは1人の浮浪者。髪はボサボサで、髭は生え放題、着ている服も解れが見てとれる。

知り合った覚えのない相手に僕は訝しみ、どう対処しようか悩むその前で、見られていると気付かない浮浪者は独りごちる。


『もしかして、寝てんのかな? 起きるまで待つか? ……はぁ、仕方ない。また改めて来よう』


とても聞き覚えのある声だった。

久しく聞いていなかったその声の持ち主はーー僕の兄だった。

背を向けて去ろうとする兄さんの姿に、僕は慌てて玄関に向けて駆け出し、靴を履くのも忘れて外に飛び出す。


「待って!!兄さん!!」


僕の発した大声に兄さんはびくりと体が震え、ゆっくりとこちらへと振り向く。

懐かしい視線だった。記憶の頃とは姿が変わろうと、僕を見る優しげなその視線は昔から変わらない。


「なんだ、起きてたのか。なら、早く出てこいよな」

「兄さん今まで何処に行ってたんだよ!? 僕達がどれだけ心配したか!! 何が、家出するだ!! そんな置き手紙残して居なくなるなんて普通しないだろ!!」


心の鬱憤を張らすように、兄さんに向けて文句を垂れる。


「はは、すまん。あれは若気の至りだ」


ジト目を向けるが、兄さんに効いた様子はない。これは駄目だと、首を横に振る。


「それで納得できると思ってんの? それに、その格好。何があったか聞かせてもらうよ。家の中でね!」


朝の、それも道行く人の多い時間帯だ。

道行く人が、隣家から、なんだなんだと言った様子で僕達を見ている。

そんな状況で話せるはずもなく、また、これ以上の迷惑を掛けないために、聞きたい欲をグッと堪えて、家の中へと案内する。

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