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軽作業の合間に

おひさ~(*´∇`)ノ

「へぇ、最近ここに引っ越してきたんだ」

「はい。大学を機に一人暮らしを経験しようと思って。実際にやってみるとお金の管理やら食費やらいろいろとやることがあって大変なんですよね……」


そういってため息を漏らす姿からは、苦労してるのが伝わってくる。

僕は思わず苦笑した。


「わかるよ。僕も一人暮らしをしているんだけど、最初の頃はよく苦労したよ。家電揃えようとして値段の高さに、『家電ってこんなに高いんだ!』てとても驚いたね」

「あっ、わかります! 高いことはわかってたんですけど、実際に目にするとほんと高いですよね。親がお古を持たせてくれなかったら確実に詰んでました」


僕は笑い声をもらし、すぐに声を殺す。

雑談しているここは飲料棚の裏。ふとした拍子に戸を開けられてしまえば聞こえてしまう距離だ。

関係を円滑にしようと始めた話だけど、予想以上に話が合い長引いてしまった。

反省しなきゃな、と思いつつ立ち上がる。


「っと、次の作業に移ろうか」

「はい!」


次にするのはスナック菓子やカップ麺などの長持ちする商品の品出し。ストックが店の奥の倉庫にあるため、そこから出していくのだが。

その前に、


「まずは売場に出て、足りてないのを確認します」


そこを怠っては始まらない。

というわけで、さっそく売場に出て補充する商品を確認していく。


「はい、これリストだから、それにチェックを付けながらやっていくよ」

「いっぱいありますねー」

「これでも絞ったほうだけど、やっぱり多いよね」

「はい。でも、これだけ扱ってるんですね。こうしてリストで見るとコンビニの品揃えの良さがよくわかります」


なんとも嬉しいことをいってくれる。

このお店は個人店ながらもチェーン店にも負けない品揃えの良さを誇っている。

その分、管理も大変なため、こうして褒められると頑張ってきた甲斐があると嬉しく思う。


「じゃあ、まずは近いところからやって行こうか」


南智さんは「はい!」と元気な返事を返してさっそく作業に取りかかる。

空きのある商品を見つけてはチェックをつけていく姿を後ろから眺めながら、都度アドバイスをしては効率的になっていく姿に、順調そうだと何度もうなずく。

ある程度みていて問題なさそうだと判断した僕は、見守りながら別の作業を行う。

とはいっても、そんなに時間がかからないだろうから、売場の整理とかお客さんへの声がけが精々。

あとはレジが混むようなら応援に行くぐらいかな。

なんてことを考えつつも、作業をしていればあっという間に時間は過ぎ、


「終わりました!」


南智さんが紙を両手にもって報告してきた。


「じゃあ今度は倉庫のほうに移動しようか」


倉庫の場所は飲料棚の裏側の、さらに裏側にある。

倉庫へとやってきてすぐ出入口よこにあるスイッチを押せば、カチッと音が鳴って灯りがつき、天井に取り付けられた3本の蛍光灯が部屋を満遍なく照らして全貌を露にする。

倉庫の中にはスチールラックに納められたいくつもの段ボールがあり、手書きやPOPによって種類分けが成されている。


「沢山ありますね」

「種類が多いとどうしてもね。見てもらえればわかると思うけど、棚ごとに種類が分けられているから、それぞれの棚から必要なものだけを取り出してあの台車に乗せてほしいんだ」


そういって僕が指さすのは部屋の隅に置かれた折りたたみ式の台車、その中でも多くの段ボールや大きな物を乗せるのに特化したものになる。

組み立てられた状態の台車を見て、南智さんは「あっ」と声をもらす。


「これ、配達の方が使ってるのを見たことあります」

「たしかに、見る頻度としては多いね。冷蔵庫とかを乗せて運ぶ姿を見たことあるよ」

「けっこう重たいはずですけど、丈夫なんですね」


感心した様子で台車に触れ、こちらに顔を向けたかと思うと「試しに乗ってみても良いですか?」と提案された。

一瞬悩むものの、大丈夫だろうと許可すれば、さっそく乗ろうとしたため慌てて止める。


「ストップ! それ動くから支えもなしに乗ると怪我するよ」

「あっ、そうですよね。ついうっかりしてました」


僕は思わずため息をもらす。

良い子なんだけど、意外とドジっ娘かもしれない。


「僕が支えるから、ゆっくりと乗ってね」

「分かりました」


取手部分を掴んだ僕が「良いよ」と促せば、南智さんはおっかなびっくりといった様子で1本づつ足を乗せて台車の上に立つ。

それから視線を足下に向けた南智さんは、左右を見回した。


「ちょっと揺れ動きますけど、安定性抜群ですね」

「人が乗った程度で壊れるようなら採用されるわけないしね。……飛び跳ねないでよ?」

「しまんせてっ!」


僕が冗談めかして言えば、南智さんは恥ずかしげに大声を上げる。

それが可笑しくてたまらず笑えば、南智さんは不服そうに唸り、台車から降りて、そのままそっぽを向いて、僕を無視して作業に取りかかり始めた。

その背中は怒っていると語るものの、真面目にこなす姿からは、心から怒っていないと感じられる。

それでも弄りすぎたことには変わらないため、今度からは気をつけようと改めた。

ちなみに、ここで出てきた台車の正式名称は『手押し台車』ていうそうですよ?

はじめて知りました。

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