うちの女神様のマイブームが異世界転生でして
「よっしゃ、異世界転生できそうな人間ぶっ殺してこい」
「いや、こわいこわい。朝陽をバックに部下の家に無断侵入して言っていい言葉じゃない」
朝陽を丁寧に編み込んだ輝く金髪に、職人が丹誠込めて磨き上げた宝石のような金の瞳、そして、薔薇色に染まった頬。
麗人。
数多の画家がどうか貴方の絵を描かせてくださいと希うに違いない美貌の化け物がソコにはいた。
我が麗しき上司である。
そして、女神。
人々の安寧を願う美と豊穣の神。
美と豊穣は合っているが、人々の安寧を願うにはかなりの疑問が残るタイプの一柱なんじゃないかなと私は常々思っている。
なにせ前科がありすぎるので。
まぁ、ここで前科なんて並べ立てなくても冒頭の発言でも分かって貰えるだろう。
人々の安寧(笑)だと。
上司が邪神の類であると言われても私は別に驚かない。
むしろ納得である。
なんなら「だと思ってました」と言ってもいい。
いや、その次の瞬間には消滅させられそうだから、やっぱり言えない。
だが、神というのは別に人間のための存在ではない。
身勝手で自由で奔放で時に何よりも邪悪。
それが神である。
で、あるならば、うちの女神様はとても神らしき神なのだといってもいいのかもしれない。
「性格の悪い子を異世界転生させましょ!」
「皆、貴方には負けるでしょうよ」
「は? なんか言った?」
「何も」
豊穣の女神らしく豊満な身体を私に預けてきたせいでちっぽけな私は潰されそうになる。
「ちょ、タンマタンマ!!」
「またまた、ダブルブッキングして転生者同士で争わせるの! 面白くなるわよ~」
「それやって戦争起きかけて怒られたじゃないですか!」
「未遂ですんだも~ん」
「私が必死で介入して止めたからですからね!!」
「もう、生け贄ちゃんってばおかた~い」
「女神様の代わりに主神に怒られるの私なんですよ!!」
「え~お願いお願い~」
「・・・・・・」
もう何百年も前に神々への生け贄に捧げられ、この方に拾って貰った身だ。
どうしても、この方には甘くなってしまう。
だから、前回なんて戦争が起きかける異世界に行って第三の聖女、異世界人と共に世界を平定する羽目になったのである。
「・・・・・・戦争が起こりそうになったら・・・・・・いや、危なそうなら介入しますからね」
やはり、私はこの女神に甘い。
いや、主神も含めた男神は皆この女神に甘いのだ。
その分、他の女神には煙たがられているわけだけど。
女神の方も私が彼女に甘いのが分かっているのだろう。
「はいはい、わかった、わかった~。でね、今回は聖女に一人と呪いの子一人を世界に渡らせてね~」
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