第41話
四人でデートスポットを巡ってから、数日後。
小太郎は、自宅のリビングのソファで、うんうんと唸っていた。
「すずの誕生日プレゼント、どうしよ~~~~~~~~~~~~」
鈴音の誕生日は、五月十九日。
五月に入ってしまった今、あと三週間もない。
しかし、未だにプレゼントの目途は立っていなかった。
四人で遊んだあとも、小太郎は文芸部の部室に通っている。
しょっちゅう一花には相談しているものの、一花が思いつくようなプレゼントは大体既に贈ったものか、ほかの問題で難しいものばかり。
一花自身も異性からプレゼントをもらったことがないし、それほど人に贈ったこともないため、あまりいいアイディアが出てこない。
それは、小太郎も同じだった。
恋愛作品を参考にすると、どうしても恋人関係を前提にしたものばかりになってしまう。
かといって、友人に贈るようなものだと、パッとしないものや、既に贈ったものばかり。
部室でも、う~んう~んと唸る日々が続いていた。
「ねぇ、柚乃はどうするの?」
音を上げて、リビングに寝転がっている妹に尋ねてみた。
彼女はパジャマ姿のまま、スマホで漫画を読んでいる。口には棒アイスが突っ込んであり、リラックス全開だ。
彼女は口から棒アイスを引き抜くと、振りながら答えた。
「わたしは、お菓子作ろうと思ってるけど。マフィン、フィナンシェ、シフォンケーキもいいかな~……。まだ決めてはないけど」
「手作りか~……。いいな……。柚乃のお菓子はおいしいからな……」
「でへへ。お兄ちゃんの分も作ってあげるからね」
柚乃はご機嫌に、だらしのない笑みを浮かべている。
今はだらけ切っている柚乃だが、こう見えてお菓子作りが得意である。
エプロン姿でテキパキとキッチン内を動き回り、お店と比べても遜色ないお菓子を作ってしまう。
手作りのお菓子ならそれほど重くもないし、無二の個性だ。
鈴音の反応もよかった。
小太郎が鈴音にプレゼントを渡すと、一応喜んでくれるものの、「気にしなくていいのに」と若干困ったような、遠慮したような顔を見せる。
反面、柚乃からもらったものは素直に喜んでいた。
自分のためだけにお金と時間を使わせた小太郎と、趣味の延長でかつ本人もおいしいものを食べられる柚乃とは、気の遣い方が違うんだと思う。
鈴音は、どこかで自分のことを長女だと思っているので……。
そのくせ、小太郎の誕生日にはちゃんとそれなりのものを贈ってくれる。
どうしても、お姉ちゃん気質が抜けないのだろう。
そんな鈴音を喜ばせる、プレゼント。
「……俺も、お菓子作りに挑戦してみようかな」
アイスを食べ切り、残った棒をガジガジと噛んでいる柚乃を見やる。
彼女にもできるのだから、自分にもできるのではないか。
柚乃は棒を指でプラプラさせながら、挑戦的な笑みを浮かべた。
「初心者のお兄ちゃんが、わたし以上においしいお菓子を作れるかな。二番煎じのうえにわたしより何枚も落ちるお菓子を作って、すずねえを苦笑させるといい」
「なんでそういうこと言うの?」
「大体、ふたりからお菓子贈られても、すずねえ困るでしょ。ただでさえ、普段からダイエットダイエットって言ってるのに」
「そんな気にするほど太ってないのになぁ。むしろ、細いほうじゃない?」
「乙女心は複雑なんだよ」
ふふふ、と笑う柚乃の言うとおり、鈴音は自身の体重をよく気にしている。
柚乃が手作りお菓子を作ると、わざわざこっちの家にまで来て食べるものの、「カロリーが……」と渋い顔をしながらも、手を止めない。
まぁでも、肉付きはいいほうなのかな……?
思わず、前に見た下着姿を思い出してしまう。
彼女の胸はふっくらと持ち上がり、太ももも健康的な太さをしている。女性らしさを感じる丸みだと思ったし、それでもお腹はぺったりだった。気にする必要がない。
ただ、近くにいる華蓮が文句なしに細いし、一花だってちゃんと食べているのか不安なくらい細いので、比較してしまうのかもしれない。
まぁなんにせよ、お菓子作りはやめたほうが無難そうだ。
「かといって、ほかの手作りもなぁ~……」
手作りの品、は一花との会話でも挙がったものの、やはり消えもの以外は重さを感じる。
大体、小太郎にはそんな技能もなかった。
うーんうーん、と唸っていると、スマホが震える。メッセージの着信だ。
相手は、一花だった。




