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鈍感彼女が振り向かない!~隣の家に住む幼馴染が、距離が近すぎて俺を全く意識してくれない~  作者: 西織


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第36話

 一花は何を言われたかわからない、とばかりに目を見開いた。

 華蓮は、小太郎と鈴音に視線を向ける。

 小太郎は竜巻を指差し、鈴音はおかしそうに頬を緩めていた。

 その姿は見るからに仲が良かったし、ふたりとも楽しそうだが、彼女たちは恋人ではない。


 家族。姉弟。

 そんな表現がぴったりの間柄だ。

 一花も彼女たちを見て、目を白黒させた。


「で、でも。伊達さんは、夏目くんや春野さんのお友達でしょう……? 夏目くんの恋愛を応援されないんですか……?」

「しないね。あたし、別にふたりが上手くいってほしいと思ったことないし。正直な話をするけど、今の関係はむしろよくないと思ってる」


 それは一花の手前、いい格好をしたいわけではなく、本心だった。

 一花にもそれは伝わったらしく、彼女は瞳を揺らしてから、「どうしてですか?」と尋ねてくる。


「鈴音の隣に夏目がいるのは、いろんな意味で不健全だよ。鈴音はかわいいし、いい子だし、いくらでも恋人が作れそうなのに、今までろくに告白もされなかったのは、隣に夏目が陣取ってるから」


 それは小太郎の計画どおりなのだが、華蓮にとっては面白くない。


「まぁ夏目はハイスペだから。あんなのが隣にいたんじゃ、敵わないって普通は逃げ出す。別に彼氏でもなんでもないのにね。で、当たり前のように夏目が隣にいるから、鈴音のほうもほんのり理想が上がってる。無意識だけどね」


 鈴音は、恋人は部活を引退してから、と宣言している。

 だが、それもどれだけ上手くいくか疑問だ。

 やけに格好よくて、自分を大切にしてくれて、常に隣にいるのがアレだ。


 実際にだれかと付き合ったところで、「う~ん?」となる可能性は非常に高い。

 そもそも、付き合うことにすら至らないかもしれない。

 鈴音が「彼氏募集中!」と宣言すれば、男はたくさん詰め寄るだろうが、果たして鈴音を満足させる男子はどこまでいるのか。


「かといって、夏目が鈴音に相手されるとも思えない。あいつはずっと弟だよ。その弟が無理に告白して、ふたりの関係が壊れるのが、あたしは一番怖い。それなら、夏目がさっさと鈴音を諦めて、恋人を作ってくれるのが一番丸い。隣から夏目がいなくなれば、鈴音だって高望みせずに済む」


 そこまで話して、華蓮は一花を指差した。


「その相手が、一花ちゃん」

「わ、わ、わたし、ですか……⁉」

「いやいや。意外そうな顔してもダメだよ。一花ちゃんが策を弄して、夏目を文芸部に引っ張り込んだのも、今この状況になってるのも、もうわかってるんだから」 


 それを口にすると、一花はボンッ! と顔を赤くした。

 手をキュッと握り、もじもじしながら俯いてしまう。

 かわいい。

 その初々しさに頬を緩めながら、一花の肩をポンポンと叩く。


「だから、あたしは協力する。一花ちゃんが夏目と付き合ってくれるのが、あたしとしては一番好都合だから。どう?」


 協力を呑むか、と問いかける。

 ここで断られたり、遠慮されたら、それはそれでいいと思った。

 一花の喜ぶ顔は見たいが、こんなのほとんど自傷行為だ。

 けれど、一花ははっと息を漏らす。

 自分の胸に手を当てて、期待を込めた瞳を華蓮に向けた。


「本当に……、応援してくれるんですか……?」

「うん。任せて」

「嬉しい……」


 一花はそこで、ふわりと花のように笑った。

 そのやわらかい笑顔に、華蓮の胸が弾み、すぐにずきりと痛む。

 彼女がこんなにも綺麗な顔で笑っているのは、小太郎のことを想っているから。


 こんな顔をさせる奴に、敵うわけなんてない。

 勝算がないのだから、さっさと次に行ってしまえばいい。

 それはわかっているのに。


 目の前の恋する女の子を、より喜ばせたくて仕方なくなる。

 皮肉な笑みが漏れそうだ。

 ふたり揃って、しっかり女の子してるじゃないか。

 参ったなあ、とため息を吐くことしかできない。

 それでも華蓮は気を取り直し、一花の肩を叩いた。


「よし。それじゃ一花ちゃん――、本気で落としに行こう」

「は、はいっ……!」


 カチコチになりながらも返事をする一花が、愛しくて仕方がなかった。



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