魔法使い飽和状態
たこさんの不思議な深海の家の中で、まったりと過ごしていた私は、近くを漂っていたたこさんが急に姿を変えたことに驚いた。
能面の様な顔に、黒い胴体、それから手足が蛸足という出で立ちの彼なので、今までも十分姿が不安定ではあったのだが、これまでは違って、伸びたり縮んだり震えたりと、急速に形を変える様は異様であった。
「たこさん?!どうしたの?」
「……ああ、すまない。外で大きな魔力の気配があってな。お前がいた、ルリエルの屋敷の方だ。複数の大きな力がぶつかり合っている」
「えっ、ルリエルさんが他の魔法使いと戦ってるってこと?」
「そうだろうな。これは、ふむ、同じ街にいた銀色か?そしてこの胡乱気で苛烈な気配、赤色だな」
「だ、大丈夫なの?」
「魔法使いとしての年季でいえば、灰色が一番若い、その次が赤色だったかな。銀色は随分と古くからいる気がするが……このクラスの魔法使いが複数集まるとは珍しいな」
「ま、不味いよね?どうしよう」
「どうしよう、とは?」
「え?」
「お前が何かする必要はないだろう。魔法使い共が潰し合おうが、共謀しようが、お前には関係がない。巻き込まれて死ぬぞ」
「そう、かな。ルリエルさんにはお世話になったし気になるんだけど、確かに私が行ったところで邪魔になるだけだよね」
「気になる、か」
「たこさんは何が起こってるか分かるの?」
「詳しい事までは分からない。ただ激しく魔力がぶつかり合っている。この様子だと潰し合っているのだろう。魔法使い同士が向かい合うと大体は殺し合いになるからな。お互いに影響し合い不和を起こす」
「話し合いできないのかな」
「難しいだろうな。誰かの言う事を聞くというの先ず彼らには耐えられん。何百年と己の思うままに生きてきたのだ。そう簡単には変わらんだろう。自身で言うのも変な風だが、私のようなものは珍しい」
「あの、手出ししないにしても、結果を見届けるとか、できないかな?お世話になった人が死ぬかもって知っていて、何もしないのは後から凄く後悔しそうで、嫌なんだ」
「ふむ。そういうものか」
「行ったところで、私は魔法が使えるわけでもないし、何か出来るとは思ってないけど、それでも、行きたい」
「わかった、連れて行こう。しかし、人にとっては危険だぞ。それこそ、命の危険を伴う。着いたら私から離れるな」
「うん。ありがとう」
たこさんから差し伸べられた触腕に掴まって、宙に浮く。
一度感じだことのある、吐き気を催すような、世界がひっくり返るような浮遊感。
視界が歪んたと思ったら、空に浮いていた。
上ってくる吐き気を押さえながら、周りを見渡すと、空にルリエルとジャック、銀色の髪に包まれた綿毛の様な男、青い髪をした細身のが同じ様に宙に浮いてこちらを見ている。
ルリエルが一目散に向かってくる。
「花嫁!帰ってきてくれたんだね!」
「え?ああ、いえ、その、元気そうで良かったです」
「黒色の、貴様よくも僕の花嫁を攫ったね、八つ裂きにしてあげるよ」
「ま、待って待って!あれ?ここでルリエルさん達が戦ってると聞いて心配で来たんですが?!」
「戦ってたよ!さっき赤色の魔法使いが乗り込んで来たから、箱に詰めて封印したんだ」
「ええ?!なんだか、解決してます?」
黒色の魔法とルリエルが花嫁と女が現れた事に皆が一瞬気を取られた隙をついて、銀色の魔法使いは転移した。
助かったよ、黒色の。
礼は何れ、生きていれば、また何処かで。
内心で呟いて光の残滓を残して消える。
「あっ!行っちゃった〜」
青色の魔法使いがすぐに気付いたが、一瞬遅かった。
既に銀の塔まで飛んだ後である。
「残念、じゃあ僕もまた今度だなぁ。今度は何時、出てきてくれるんだろう。また三百年待つのかなぁ」
不満を口にしつつ、捻れた空間の隙間に入り込むようにして消える。
気紛れなもの達だった。
興味の無いものには、関心を寄せないのだろう。
あっと言う間に、ルリエルとジャック、黒色の魔法使いと私だけになった。
今日も何とか更新です
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