脱出作戦
たこさんとの夢を見た。
たこさんが能面顔のイケメンだった。
ぽかぽかと温かいベッドの中で、先ほどの夢について考える。
ルリエルの事が嫌な訳では無いが、ルリエルの力に怯えながら暮らすのは神経が滅入る。
それに、魔法使いだったのは初めて知ったが、長い間友人の様な存在だったたこさんの所に行ってみたい。
取り敢えず、この屋敷の外に出てみるか。
ルリエルの反応を伺いつつ、穏便に進む方向を探そう。
そう決めて、そっとベットを出て身支度をはじめる。
そうこうしていると、ルリエルが部屋を訪ねてきた。
「おはよう、花嫁。入ってもいいかな?」
「はい、どうぞ」
「もう起きていたんだね、今日の花嫁も素敵だよ。では朝食に行こう」
「はい」
青い目を細めて満足そうに微笑んだルリエルは、そっと私の手を取る。
そのまま手を握って、食事の用意された別室に向かう。
「あの、ルリエルさん、良かったら今日、街に出てみたいんですけど」
「何か欲しいものがあるなら僕が用意するよ」
「ものが欲しいのではなく、人々の暮らしを見てみたいんです。この世界の人の暮らしを。」
「…そう。分かった良いよ。君が望むなら。その代わり僕から離れないでね。」
「ありがとうございます!嬉しいです!」
「…!そうかい。君が喜んでくれるなら、僕も嬉しいよ。」
花嫁が自分以外に関心を向けるのをルリエルはあまり面白く思っていない。街に下りる事もあまり気乗りしていなかった。
しかし、嬉しそうに顔を綻ばせる彼女を見て、偶になら連れて行ってもいいかもしれないと思った。
他人の思いに関心のないルリエルも愛しい人に、あまり狭量だと思われたくはない。