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不思議なオトドケモノ

作者: V't

「だから私は、ゴーヤを植えた。」


私は42歳のサラリーマン

会社に勤めてから今年で20年が経過した。

独身ではあるが、ペットのわうがいると癒される。

そんな事を考えていると、ようやく家に着いた。

「ただいま」と言うと、リビングからわうが走ってくる。

「自分も自由に色んな事をやりたいな」

そう思いながらスーツを脱ぎ、風呂に入る。

すると、突然玄関に大きな音が鳴った

「ん、何だ」と思い、着替えを済ませた後に玄関に行く。

「何だこれ!?」

私の目の前にあるのは、犬よりも大きいゴーヤだった

そして、横にある手紙を読んでみる。


「貴方が一番好きな食べ物よ、チャンプルーにして食べなさい。」


それをまた私は、驚きとともに幼少期を思い出した。


「茂一くん、あなたは本当にゴーヤーチャンプルーが大好きね」


こ、これは10年前に亡くなったお母さん!?

ど、どういう事だ?いたずら、いや、誰にも自分はゴーヤが好きということは言っていないはず、、


これは母からの届け物だ。


そう気づいた私は、早速スーパーでコンビーフと豆腐と卵を買ってきて、ゴーヤーチャンプルーを作った。


「味見してないけど大丈夫かな、」

そう思いながらご飯と共に口に入れる。

「んんっ!」

頭の中に電撃が走った。

「こ、これは、母の味、、」

約20年食べていなかった母のゴーヤーチャンプルーの味がするのだ。

私は思わず涙を溢してしまった。


そこから、1ヶ月ごとに玄関にゴーヤが届くようになった。

私はすっかりその日が楽しみになってしまった。

まるで、お小遣いかのようだ。

しかし、ちょうど半年が過ぎたある日。

「ない、ない!」


半年同じ日に届いていたゴーヤが届いていないのだ。

「あのゴーヤが食べたい。」

それを思い半年生きて来た。

その希望が無くなるのだ。

私はその次の日から、仕事を無断欠勤した。

もちろん会社からの着信は拒否し、携帯の電源も切った。

給料も無いので電気も水道もガスも止められた部屋で1人やけ酒をする事でしか、この悲しみを忘れられなかった。


大家さんが怒鳴りながら、部屋に来るが部屋の中の酒を見るなり、怖くなって逃げていった。

恋人もいない、仕事も無い、希望もない、そんな僕の心頼りは暗い部屋の横でひたすら遊んでいるペットのわうだった。


「わうは無邪気で楽しそうだな。」


酒で汚れた部屋の中1人そう思うしか、精神が持たなかった。


1ヶ月後、家賃の未払いで家は追い出された。

わうも、面倒を見切れなくて仕方なく地域の小学校に譲った。

寒い12月、寒空の下公園でひたすらぼーっとしておくしか、私には希望が無かった。


2027年1月1日

私は1人の女性にあった。

最初は、心配して声をかけてくれたが口がかじかんで上手く喋れない。

その女性は36歳の会社員で公園をウォーキングしている際に私があまりにも動かなく、死んでいるのかと思い声をかけてくれた。


それから私は女性の家に居候させてもらう事になった。


そこから2人で色々な所に行って、遂に付き合い、結婚することになった。


結婚式の日は、母の誕生日にやり、天国にいるお母さんも喜んでると思いながら結婚式を終えた。


それから10年、私は53歳になり妻は46歳になり、子供も2人できた。

幸せな家庭を育んでいたとある日、一つの手紙が届いた。


茂一へ

私が亡くなって20年になってしまったみたい。

あの時はたくさん悲しい思いさせてごめん、お母さん、10年目に1ヶ月ずつゴーヤを送ってたでしょ、あれはあなたのお父さんのゴーヤだったの。

生まれてすぐにお父さんは死んじゃったから、食べれなかっただろうけど、あの人は死ぬ前にいっぱいゴーヤを作って、私に残してくれたの。

この手紙の裏にその種を入れてるから、育ててね。

                  母より」


私は、紙がぐしゃぐしゃになるまで泣いた。

妻もこれを読んで、共に泣いた。

10年前の不思議なお届け物も、全てお母さんの愛情で届けていた。


私はそして、実家に行った。

5年前に来たとは言え汚れていたが掃除すると、母の棚から、一つの写真があった。


それは、僕が生まれた時の写真だった。

今まで見たことも無かった父と母が泣いている写真を見て私も泣いてしまった。


そこから私は、ゴーヤ農家になった。50歳からの挑戦だったから色々難しい事もあったが、大成功し、自分のブランドを持つことができた。


亡き父親が残した、宝物を、これからも永遠に継いで行くために、私は今日も畑へとゆく。



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