後編
☆☆☆聖女市ショッピングモール「イオラ」フードコーナー
「よお、佐々木、中学以来だな。ほい、俺の彼女、愛瑠琉だ。彼女はいいぞ」
「ヨロ~あたし、底変高校~、顎と同級生って感じ~~」
「初めまして、佐々木直也です」
「ウケル~~~ピアスしてない感じ~~」
ジャラジャラ、
「愛瑠琉、そんなこと言うなよ。どーよ。こいつに紹介できるダチとかいね?」
「え~ムリ系?だって、服はダサいし。シマムーラ?もしかして、イオラに服を買いに来た系~~~マジ無理、ごめんね。あたし、はっきりモノを言うカバカバ系、ウケル~ズバズバ系だったし、ギャハハハハハ」
「おい、おい、DTに下ネタ言うなよ。服は、佐々木の家は母子家庭でボンビーなのよ」
「キャー、ウケル~~~」
・・・何だよ。ジャラジャラネックレスとかつけて、地元で有名なヤンキー校にしかいけなかったクセに、こっちの苦労も知らないで
僕は、佐々木直也、婚約者がいる。
「お待たせしましたわ。ナオヤ様」
「ウゲ」
「ゲ、外人系?」
「まあ、ご友人ですか?私は、エリザベータ・ローエングラムですわ。ナオヤ様の婚約者ですの」
「ウケル~~コスプレ外国人、悪役令嬢系?」
「ヒィ、何で、ドレスを着ているんだよ!」
「まあ、ですから。このドレス、動きづらくて、ナオヤ様に平民服を見立ててもらいますの。キャァ」
・・・「キャァ」じゃねえよ。
「エリ姉ちゃん。婦人服2階だってさ行こう」
「ええ、エスコートをしてくださいませ」
「いや、人通りが多いから、迷惑が掛かるよ」
「フフフフ、では、三歩下がって影を踏まずですわね?」
「何で、そんなこと知っているの?普通で良いよ!」
「あ、あの、おれは、顎と言います。親父は中古車販売会社を経営しています。実は、運転手もいて、土日に、ドライブとかも出来ますよ。今週どうですか?」
「顎、チョー、最低!」
・・・・
エリザベータさんが僕の婚約者になったのには理由がある。
彼女は、カエルの声で驚いて、田んぼのあぜ道でうずくまっていた外国人だ。
初めての印象は、
髪は紫がかった黒に、瞳は翡翠、目がつり上がっていて、キツい印象を与えるが美人さんだ。
もしかして、アニメの悪役令嬢?と思った。
☆回想
ケロケロケロ~~~
「ヒィ、ここは、どこですの?魔物の鳴き声?怖いですわーーーー」
キキィーーー
「どうしましたか?あ、外国人?・・・コスプレ?」
「ヒィ、鉄と融合した魔物―――」
「まあ、まあ、落ち着いて、外国人にカエルの鳴き声は不気味かも。だけど、自転車はわかるよね」
・・・
「道に迷ったの?」
「世界を迷いましたわ」
「分かった家に来る?母さんしかいないから安全だよ」
「是非」
家に来たエリ姉さんは、よほど、外国の田舎に住んでいたようで、
「キャアー、お湯が出ましたわ!」
「キャア、箱に映像が、声が出てますわ!」
「キャー、美味しいですわ!」
「キャー、ゲーム、面白いですわ!」
全てに感動する。
家が明るくなって、うれしかったが、一月たってもエリ姉さんは、出て行こうとしない。
「ふう・・・」
「母さん。どうしたの」
母さんが家計簿を見ながらため息をついた。
「エリさんのね。生活費を捻出しようと思ってね。エリさん本当にお金がなくて困っているみたいなの」
「母さん。僕がバイトするよ」
「そんなのダメよ。夏休みとか冬休みに社会経験でしなさい。まだ、子供だから自分のために使うべきよ」
ガラン!
聞いていたのか。エリ姉さんが、飛び出してきた。
「申し訳ございませんわ。余りにも快適で!私も働きますので、どうか。この家においてくださいませ!奉公人になりますわ。メイドをやりますわ!」
「働くって、エリ姉さん。観光ビザでしょう」
「何ですの?それ?新しいピザですの」
「まあ、女神神社の神主さんに相談しましょうか」
☆☆☆女神神社
女神神社の神主さん。佐々木源治郎さんは、遠縁に当たる親戚だ。地元のボス的扱いだ。
「ほお、エリザベータさん。私らに任せてもらおう。そもそも、この神社の由来は、聖女シルビア様にある」
「まあ、私の曾大伯母様のお名前だわ。魔道実験中に行方不明になりましたの」
「まさか」
☆☆☆女神神社縁起
ここは、田吾作村という何とも普通の村でした。
しかし、明治の時代、山奥で叫んでいる外国人女性がいました。
「ここは、どこですの?転移爆弾の実験をしたら、作動してしまいましたわ」
「おやまあ、外国の方かね」
「ヒィ、原住民、助けて!」
「まあ、まあ、オムスビ食べなされ」
「ウグ、有り難う・・・グスン」
「お茶も飲みなされ」
しばらく、おじいさんとおばあさんと一緒に住んだシルビア様は、
「ヒールですわ!」
「「「オオオオオーーーー」」」
「病気が治った」
「骨折が治った」
信じられない数々の奇跡を起こしました。
そして、女神神社が建立され。
聖女村と地名が変わりました。
毎年、火入祭りが開催され、シルビア様役に選ばれる巫女のミスコンも開催されるようになりました。
・・・・・
「エリザベータさんと似ていますね」
「あの、私、奉公人として働きたいですわ。どうしたらいいのですか?」
「まあ、細かいことは私に任せて、直也君は15歳・・・エリザベータさんは、17歳、婚約をしなさい」
「えっ」
「キャア」
「婚約証明書は私が書く。町内会長の証明書は結構、使えるのだ。エリザベータさんを心療内科で見せて、診断書を書いてもらう。おそらく、正直に話せば、記憶の喪失とみるだろうな。
聖女大学の言語学科の教授に知り合いがいるから、エリザベーターさんは、ネイティブな日本語の発音と証明してもらう。
長年、日本に住んでいるが、何らかの原因で、記憶を喪失し、今は、日本国籍の直也君と婚約中であるとの状況だ」
「それって、偽装結婚、いや、偽装婚約では?」
「そうか、君、エリザベーターさんは嫌いかね?」
「いえ、嫌いではありません。でも、エリ姉さんの気持ちは・・」
「そんなの見れば、分かるよ」
「キャア、そんな。でも、私は・・・キャ」
「ナオヤ様!」
「何だよ。エリ姉ちゃん」
「政略ですが、愛を育もうと思いますわ。婚約破棄をされた身ですが、よろしくお願いしますわ!」
そんなかんやで、エリザベーターさんは、イオラで働くことになった。
「部屋着は、ナオヤ様の中学の時のジャージをもらいましたわ。お義母様と同じですわ」
「ヒィ、何だよ。せめて、名札とってよ」
「ほら、ほら、ほら、お義母様」
「まあ、まあ、エリさんったら」
結構楽しく暮らしていたけど、
ある日、警察がやってきた。
「ちょっと、ビザを見せてもらおう」
「署まで来て下さい」
エリ姉ちゃん目立つからな。
「貴方の出身国は?」
「はい、ドドリゲス連合王国ですわ」
「・・・フン、そんなの検索に引っかからない」
僕は小声で、エリ姉ちゃんに言った。
(逃げて、僕がおとりになる)
分かっていた。一緒に暮らせないほど、彼女は素敵だ。育ちが違う。
きっと、何か理由があって、日本に来たのだろう。
エリ姉ちゃんは、ギュウと僕の手を握った。
そのとき、
「待て、待て」
「誰だ!」
神主の佐々木源治郎さんたちが、大勢、人を引き連れてやってきた。
「ほお、かなり前から、実習生あがりがコンビニでバイトをしているが、密入国を公言しているタレントもいる。ある県では、移民かどうかわからん奴らが大勢好き勝手しているのに、女性一人だと、連行するのか?
彼女は、しっかりとした身元の証明書がある」
神主さんは、名刺を見せると、警官は、慌てた。
どこかに、無線で連絡をする。
「ほら、これが、町内会長であるワシが書いた婚約証明書だ。直也君は、15歳だから、18歳になって、結婚するのだ」
「分かりました」
警察は、すごすごと引き下がった。
「エリザベータさんは、異世界から来られたのですね」
「ヒィ、どうして、分かったのですか?私は、有害外来人族ではございませんわ」
「分かっているよ。ヒールが使える。医者になって、正々堂々、人を治してみないか?」
「そんな、でも、これ以上、負担を掛けては」
「資金はワシらが出す。まずは、この世界の勉強だ。ついてきなさい」
「「「さあ、エリザベータ様は、シルビア様の後継者でございます」」」
「エリ姉ちゃん!」
「ナオヤ様―――」
こうして、僕は、エリ姉ちゃんと別れた。
☆☆☆数ヶ月後
「ヤーイ、佐々木、コスプレ外国人にふられてやんのー」
「顎・・・」
狭い町だ。すぐに、エリ姉ちゃんの噂が広まった。
女神神社は、独立した宗教法人だそうだ。
医学部に行って、医者になって、合法的に人を治すとか。
本当かどうか分からない。
「ナオヤ様―――――――――」
バシ!
「エリ姉ちゃん!どうしたの?抱きつかないで」
「高校卒業程度認定試験合格しましたのよ!聖女大学入学ですわ!」
「ヒィ、あのコスプレ外国人!」
「え、どっかに行ったのじゃないの?」
「東京の有名予備校に通いましたわ。缶詰状態ですわ。そして、入試は、推薦で、聖女大学医学部ですわ!だから、ナオヤ様とお母様の家に居候しますわ!」
「居候って」
「だって、婚約者ですもの!」
「ゴホン、それぐらいにしたまえ」
「神主さん」
「別に、分かれるとは言ってはいないだろ。彼女は医者になって、合法的に人を治して対価を得る。
そして、政治家になる予定だ」
「君はどうする?」
「僕は・・・」
エリ姉ちゃんを支えよう。
そのために、大学に行こう。
奨学金を借りて、でも、返さなきゃいけないし。
「えっ」
「つまりだ。外国人留学生ばかりを優遇しないで、本当に勉強をしたい日本人の子が大学に行ける日本をつくる」
「さあ、勉強ですわよ!みっちり見てあげますわ。恩返ししますわ!」
「ヒィ」
☆☆☆家
母さんに大学に行きたいと相談した。エリ姉さんと同じ大学だ。
「大丈夫よ。お父さんの保険金は、直也が大学に行くために、手をつけていないわ」
「母さん」
「お義母様!」
ガバ!
「だから、僕の母さんだよ。抱きつかないで」
こうして、エリ姉さんは、今も僕の家にいる。
最後までお読みいただき有り難うございました。