前編
婚約解消とか、破棄とか面倒臭くねえ?
だから、消した方が早いって思ったのよ。
でよ。だから、絶対に使ってはいけないと言われた王家秘蔵の
魔道転移爆弾を使ったのよ。
『エリザベータ、こっち来い。良いもの見せてやる』
『まあ、殿下とベルタ、どうされたのですか?』
『俺、ベルタと結婚するわ。お前、邪魔』
『グスン、グスン、ごめんなさい。お義姉様、真実の愛のために犠牲になって』
『キャア、お止めになって、何をなさるの』
『ギャハハハハ、死ね。じゃなくて、どっかに転移しろ!』
ピカッ!ドカ~~~~~~ン
☆☆☆聖女市ホストクラブ
「この転移爆弾は使った方も、転移しちまう欠陥品だったのよ。で、今、こうして、娼婦である君たちの男娼をしているわけなのよ。でさ、もうすぐ、1時間だからよ。本指名して、シャンパン入れろ!早よせい」
「「「・・・・・・・・・」」」
「外人ホスト、チョーレアだからついてきたけど、ムリーーーパワハラ系!」
「おい、待て、お前ら娼婦だろ!金を持っているだろう!こっち来い!
「「「キャア」」」
「おい、馬鹿王子、お前がこっち来いだ」
「姫!申し訳ございません。この無料お試し券を差し上げます」
「「「無理―――」」
・・・・・バックヤード
「おい、王子、何してくれちゃってんの」
「あいつらが、俺を本指名しないのが悪い!」
「クビね。就労ピザも持ってこないし、はい、今までの給料、7万6千円」
「後悔するぞ!」
「今、あんたを体験入店で入れたこと、後悔してんの」
・・・畜生、おかしい。ベルタは、巧いことやってるし、ベルタの所に行こう。
☆☆☆聖女市繁華街
「おじ様、実は、借金があって、風俗に働きにいくしかないの。だから、もう会えないの。おじ様は、とっても話しやすくて、素敵だったのに、グスン」
「な、何だと。定期を解約する。当座は、このお金でしのいでくれ」
「おい、ベルタ、ホストクラブの寮を追い出された。泊めてくれ」
「ヒィ、美人局!」
・・・
「ちょっと、もう少しでパパさんからお金を引き出せたのに」
「ウルセー、こっちは、クビになったんだ!」
「ホテル泊まればいいでしょう」
「何だ。そこは」
・・・俺はベルタに言われて、ホテルに泊まろうとしたが、
「御料金は、スイートで30万円になります」
「な、何だと」
安宿にしか泊まれない。
みすぼらしい。
やがて、金が底をつき。
「おい、ここで寝るな!」
と平民に追い払われたり。
衛兵隊が俺を捕まえようとする。
「外国から来られた方ですか?パスポートを見せてもらっても」
「ノー、ニホンゴ、ワカリマセーーン」
「待て!」
街では、俺は目立つ。服もあの世界から来たときから変えていない。
山奥に入った。もう、数週間、湯浴みもしていない。
臭い。
お、池だ。
バシャン。
ここで、体を洗い。服も干す。
パンツいっちょで過ごしていたら、
あの元凶、エリザベータがやってきた。
自転車に乗ってやがる。二人だ。男を作ったのか?
チャリン!チャリン!
「キャア、殿下!」
「エリザベータ、婚約を復活する。俺の面倒を見ろ!」
アタフタアタフタ~
「ナオヤ様、これは違くて、ええ、違うの」
「別にいいよ。エリさん。一七歳でしょう。それに、この婚約も仮だし、好きな人がいたら、報告して、少し寂しいかな」
「おのれ、エリザベータに手を出す不埒モノ。我が討伐してくれるわ!」
「ナオヤ様に手を出してはいけませんわ!ファイヤーボール!」
ボン!
「グハッ」
「エリ姉さん。すごい手品、だけど殺しちゃったらダメだよ」
シュン、「申し訳ございませんわ」
「でも、僕を守ろうとしてくれたのでしょう。有り難う」
「ナオヤ様・・」
「おい、早くヒールを掛けてくれ・・・ください」
「ヒール!」
「すげー、一瞬で治った。これも手品?」
・・・・
「なるほど、エバンリゲスさんは、エリ姉さんの元婚約者で生活に困っていると」
「そうだ」
「良い方法があるよ。今日、僕たちは、この池にバス釣りにきたよ」
・・・ほお、なるほど、この魚を捕まえて、漁業協会に持って行くと買い取ってくれると?
「そうだよ。必ず。殺して、ビニール袋に入れて持って行く。生きたまま運ぶと違法だからね」
「ほお、いくらになるのだ」
「うまくいけば千円かな」
「やってられるか!」
ギロ!「せっかくのナオヤ様のご提案を!」
「ヒィ、分かりました!やらせてもらいます」
俺は、落ちていた竹を竿にして、ナオヤ殿から、針と、糸をもらい釣りをした。
エサはそこらに落ちているブルーギルとかいう魚の死体だ。
バスシャン!
「お、こいつ、簡単に食いつきやがる」
・・・・数週間後
「こんにちは」
「やあ、王子、こんにちは」
ペコ「・・・・」
平民も釣りに来るようになった。
フン、俺に優しくして、うまい汁を吸うつもりだな。全く、俺の王子の地位を・・・って今は違う。
やつら、何が目的だ。
「come from?」
「何だ?」
「王子さんは、どこの国からきたんですか?」
「おう、国か。ドドリゲス連合王国だ」
「「「・・・・・・」」」
「ハハハハハハ、そーだよね。大変だったよね」
(可哀想に・・・きっと、辛いことがあったんだね。英語を知らない。もしかして、本当に戦争を逃れてきたユーラシア系の難民?)
「王子、外人だからパン持ってきたよ」
「オムスビも食べてみなよ」
「コーラだよ」
「お、おう、有り難う」
「そーだ。王子に釣ったブラバスを持って行ってもらおう」
「お互い助かるじゃん」
「い、いいのか?金になるぞ」
「竿とリールもあるよ。ルアーもあげる。落ちていたルアーも使いなよ」
み、みんな。
奴らは、法令を守ってきちんとルアー釣りをする。
ブルーギルという奴も沢山とれる。
皆が釣ったブラバスを合計して持って行ったら、日に2千円にはなった。
ようやく、生活の基盤が出来そうだぜ。
風呂は池だ。
冬になったら、大変だ。
金は1万5千円も貯まった。
そろそろアパートに住めるか?
しかし、
変な奴も来る。
「ヒャッホー、ナイスファイト!」
バシャン!
「やったじゃん。スマホで撮るべ」
「四〇センチ!すげー」
「じゃあ、リリースだ」
「こら、待て!リリース禁止の立て札を知らないのか?」
「はん。何だ、お前?!」
「やっちまえ!」
バシ!ビシ!バシ!
・・・殴られた。こんな奴がいるから、真面目な釣り人が白い目で見られるのだ。
漁協組合に行ったら、いつもの偏屈親父がいた。
「ほれ、バンソウコウだ。つけろ」
「おい、何のつもりだ」
「フン。たまたまバンソウがあったから、つけやがれ」
バスを量りに乗せて、100グラム単位で金をもらう。
「ほい、1300円」
「おい、少し多いぞ」
「おまけぞな。ところで、日差しが強くなって、熱中症で倒れて、漁業組合のせいにされてもかなわん。この帽子をかぶっとけ」
ポイ!
「おう、もらっとく」
その帽子には、聖女市漁業組合と書かれていた。
王子は気がつかないが、仲間として認められたのだろう。
☆
「王子、大変だったね。ニュースになったよ」
「何故、知っている!」
「ほら、昨日、スマホで動画を撮って、警察に届けた人がいたのよ。ネットで実況中継で上がっていたよ。バズっていたよ。♯聖女市ため池バスとかで検索可能だよ」
「悪質な釣り人は逮捕されたわ」
「な、何だと」
つまり、我も衛兵隊に引き渡されるのではないか?
「あ~警察です。通称、王子様はいますか?署への事情聴取をお願いします」
そのとき、ビシと腕を捕まえる女性がいた。
いつも、釣りにきている奴じゃない。誰だ?
「オラの婚約者だぞ。結婚する予定だと!」
「強制送還は、勘弁してください」
「え、誰だ。お前は知らんぞ。うわ。すごい力だ!」
「好きだーーずっと好きだっただ!」
ニッコリ、
「ええ、あくまでも傷害事件の被害者として、事情聴取を行いますよ」
何故、衛兵隊は笑顔なんだ!
その後、事情を聞いたら、ヨシコさんと言って、我の後をつけて、写真や動画などを撮って、ストーキングとやらを楽しんでいたら、あの現場に遭遇して、SNSにアップしたそうだ。
いつも写真撮影とか、動画を撮っていたとか、モテる男は辛いぜ。
((それって、ストーカーじゃない?))
「でも、王子が幸せなら」
「応援するぜ!」
「皆、有り難うよ」
「キャア、オラ、頑張るだ!」
☆ヨシコの家
「我は、エバンリゲス・フォン・ドーリアである。娘子を嫁にもらいたい」
「キャ、お父ちゃん。オラ、幸せになるんだから」
「ぎゃ、あの偏屈親父!」
「フン、今日から川漁にでるぞ。ついてこれるか」
「まあ、まあ、お父さんったら」
あの偏屈オヤジの娘だったと!
そのとき、聖女市に関するニュースが流れてきた。
地元の地名で、皆の耳目はテレビに向かう。
「え~聖女市を中心に、いわゆる。いただき行為をしていた。国籍不祥のベルタと名乗る女性が詐欺容疑で捕まりました。県警本部は・・・」
「まあ、怖い。この市ね」
「全く、良子を見習ってほしいものだよ」
「さあ、ついてこい」
「おう、分かったぜ!」
こうして、
我は、川漁師になった。
最後までお読みいただき有り難うございます。