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1.一度目(1)

変な夢を見た。目の前に広がる光景はどこか懐かしいように感じた。だが、あれは夢だったのか。誰かが俺を呼んでいた?いや、助けを求めていた。よく思い出せない。でも、こんなに胸が苦しくなるのはなんでだろうか。何か大事なことを忘れている気がする。

目から流れた涙は、もう乾いていた。


―うっすらと覚えているのは、誰かが助けを呼ぶ声だけだった―



『トッポ〜。起きなさい!ジークくん来てるわよ!』

『ん〜...もうちょっとだk.....いでっ!』

『さっさと起きる!ジークくん待ってるんだから』

『あ〜い』

俺はぼぅっとしながら、したくを済ませた。


この春から(サルバトーレ・トッポ)は、魔法育成学園「raffica(ラフィカ)」に入学する。世界中からエリートが集まるこの学園は、卒業すれば約束された地位や名誉が手に入るらしい。そんなお利口さんたちが集まる学園に平凡な俺がいるのは、とても気が引ける話なのだが。


『おまたー。わりぃな、待たせちまって』

『まったく。相変わらずだね』

玄関で待っている、クールぶった口調(実際にクールなのだが)の男は、インフィニート・ジーク。名門インフィニート家の次期当主。正真正銘のエリートだ。

10年前に現当主が、ここカルマに訪れた時この地をえらく気に入ったらしく、そのまま移り住んだんだと。こんな一般人な俺がなぜエリート様とつるんでるかって?まぁ、とある出来事がきっかけなんだけどその話はまた今度な。


それ以来、俺とこいつは腐れ縁ってわけだ。

『大事な日だというのに…。これでは先が思いやられるよ。』

やれやれと肩をすくめているジークを余所に、学園へと足を運ぶ。

『あー。どんな奴がくるんだろーなー』

『さぁね。わかってるのは、みんな"超"がつくエリートってことだけだね』

『だろーなー。ま、一般人なんて俺だけだろ』

『それは断言していいね』

『坊ちゃん嬢ちゃんだらけの学園か』

歩きながらそんな話をしてると、

『…〜い。…お〜いってば!』

振り返ると、見慣れたシルエットがこちらへと近づいてくる。


『おー。おはy…ぐあっ!』

『へへーん!やっと追いついた!いつも置いて行ってくれちゃって』

『その辺にしといてあげたら?もう虫の息だし』

『ええ?…あっ!ごめんごめん。大丈夫?』

『……オモカッt…ぐふっ!』

虫の息であるというのに追い打ちをかけてくるとは。なかなか恐れ入った。

暴力的ということを除けば、そこそこ可愛いやつなんだが…。


間髪入れずに俺のみぞおちを狙い撃ちしてきたこいつは、アステリア・ムーサ。おてんばな性格をしてるが、こいつもれっきとしたエリートお嬢様だ。…まぁ、そんな風には到底みえないのだが。

『いてて…』

『だいじょーぶ?』

あからさまに心配してない。というかその可愛い子ぶった喋りが怒っていることを悟らせている。


『…ムー。また体重ふえt…おわっ!あぶねーじゃねーか!』

『トッポがそんなこと言うからでしょ!』

『俺は思ったことを言っただけですー。』

『二人とも初日から遅刻したいのかい?』

こんなやり取りを諫めてくれるのもジークの役目といっていいだろう。いがみ合いもそこそこにして俺達は学園へと向かった。








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