北条 雅子の再生
熱い……
顔が熱い……
いや、顔だけじゃない……
全身が……焼かれて……
熱い……
もしかして……火葬されてるの……
いい……それでいい……
私にはもう……
何もない……
城を刺してしまった……
私が……
この手で城を……
燃やして……私を……
灰になるまで……
終わらない……
この苦痛はいつまで……
早く私を……
終わらせて……
……熱い……
……熱い……
……痛い……
まだ私は生きているの……
それとも……ここは地獄……
……私に相応しいのかな……
……痛いよ……
……だんだん分かってきた……
私は生きてる……
きっと化け物のような顔のままで……
……死にたい……
でも……
……死にたくない……
……え?
誰かが顔を……
叩いている……
あ……目が覚め……
「誰よ……」
「やっと起きたかい? この寝坊助が。」
「その声は……あの時の……」
「へぇ? 覚えてんのかぁい。脳みそまで腐っちゃいないようだねぇ。さぁてと、改めて聞こうか。治したいか? 条件次第で相談に乗ってやるって言ったなぁ?」
治る? 私の顔が?
「本当……に?」
「本当さぁ。ドクター西条に口利いてやるよぉ。まっ、相談次第だけどねぇ?」
さっきまで死にたいと思ってたのに……
目の前に希望が現れたら……簡単にすがりつきたくなった……
私は……
たぶん今の私は……治してもらうためなら何でもする……
足の指だって舐めることができそう……
「お願い……治して……ください……」
痛い……流れた涙が傷にしみて……痛い……
「よぉし。分かった。では条件を言おうか。あんたの犯した罪に比べりゃあ破格の条件さ。奥様のご温情に感謝するこったねぇ。」
「おく……さま?」
「静香の母親さぁ。もう日本にゃいないけどねぇ。」
いその……よしの……
「条件……は?」
「ふっ、まずはこのまま刑に服すること。当たり前だねぇ。それから出所後、静香に土下座すること。おっと、詫びの言葉は言うなよ? 白々しい謝罪なんざいらないんだよ。態度で示すのが一番さぁ。」
私が……ブス香に……土下座……
笑える……今やあいつはかつての私以上の美女。片や私はかつてのあいつ以上のドブス、どころか化け物……
このままホラー映画に出演できるわね……
「やるわ……」
「そして最後の条件だ。あんた映画に出てもらうよぉ? そしてそのまま女優デビューだ。そして、あんたが稼ぐギャラの半分は奥様のものだ。一生な?」
「映画……? 女優……? この顔……で?」
「そうさぁ。その顔がいいのさぁ。で、返事は? 映画の内容なんざどうでもいいだろぉ? どうせ出所してからの話なんだからねぇ。」
「そうね……分かった……その条件飲むわ……土下座だけでいい……の? 何なら靴でも足の裏でも……舐める……わよ?」
「あんたの汚い舌で静香を汚すんじゃねぇよ! 黙って土下座だけしてりゃあいいんだよ! 分かったらここにサインしなぁ。と言っても指が動かないねぇ。拇印もらうよぉ。どうせ今のやりとりは全て録画してるしねぇ。」
「いいわよ……」
「賢明だ。よぉし、これでいい。そんじゃあ次に会う時ぁ出所ん時だ。迎えに行ってやるよ。今後の話はそん時だな。おっと、これ私の名刺だ。今度は捨てるんじゃないよ?」
「ええ……」
名刺……あの時は握り潰したんだっけ……
SSS Special Security Service A級エージェント 朝比奈 巴
あさひな……ともえ……
眩しくて……強い名前……
私も……そんな風にいつか再び輝ける時が……