北条 雅子の終焉
今の時間なら……
城は学校から帰る頃……
ブス香と一緒に……
小さい頃は私と一緒に遊ぶこともあった城…….
いつも元気で……足が速くて……馬鹿だった……
再会したのは……高校……
馬鹿で貧乏なあいつと……優極秀院で再会できるなんて……
でもその時の私には……佐朝がいた……
千年続く名家の血筋が欲しい水本家と……没落しても贅沢がやめられない北条家の……醜い政略結婚……
佐朝は顔も良く……頭も良かった……
傲慢だけど一途で……浮気もしなかった……
すればよかったのに……猿野郎が……
猿みたいな性欲を……全部私にぶつけてくるな……ド下手くそが……
これがもし城だったら……
城……
どこに……
城……
いたぁ……
ブス香と腕を組んで歩いてる……
私には見せたことのない笑顔で……
城……城……
あなたは私のものになるのよ……
「うん。行き先は任せるよ。楽しみにしてるから。私こそありがとう。たぶん城君がいなかったら一生知り得なかった喜びだと思うよ。」
ブス香が何か言ってる……
お前なんか一生知らなくていいんだよ……
知らないまま……死ね!
「試合、がんばるからな。見に来てく、どけ静香!」
「きゃっ!」
くっ……
城の奴……
ブス香を突き飛ばしやがった……
このぉ……ブス香ぁ……!
私に城を刺させやがったなぁぁぁぁ!
「あ、し、静香……」
「いやぁぁぁぁーーー!」
うるせえんだよ……
ブス香のせいだ……
お前が私に城を刺させたんだ……
「ひひ、馬鹿ね城、ブス香を狙ったのに……」
「その声……北条……何でこんなことを……」
ひひひ……殺す殺す殺す……!
城もブス香もみんな死ねぇぇ!
「なんで? なんでそんなことを訊くの? 当たり前でしょ? あんたは死ぬべきだからよ? ブス香の分際で何をのうのうと生きてるのよ? 私を誰だと思ってるの? 千年続いた名家、北条家の雅子よ? 全ての日本人は私に傅くべきなのよ? それを何? クソ父は下賤な傭兵? ゴミ母は世界中のVIPに股を開いたビッチ? そんな底辺の分際で! よくもこの私をこんな目に遭わせてくれたわね! 今すぐ死ねぇ!!」
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!
くっ……強く刺しすぎた!? くそが! 折れてんじゃねえよ! これだから庶民が使う包丁はぁぁ!
「があぁぁーー! 死ねぇブス香ぁーー!」
だったら噛み殺してやるよ!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!
「そこのあなた! 救急車を呼んでください!」
「えっ? あっ! お、おれ?」
「早く! お願いします!」
「あっ、ああ、救急車……」
余裕かましてんじゃねええええ! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すぅぅぅぅ!
「死ねぇぇぇぇブス香ぁぁぁぁ!」
くそが! 全然刺さらない! 刃はどこ行ったぁぁぁぁぁぁぁ!
うっ? 跳ね上げられた!?
「このぉぉぉブス香ぁぁぁぁ!」
「終わりだよ。」
ぐおう……蹴られ……た?
あの頃……城と遊んだサッカーボールのように……私の……あた……ま……
遠くから……サイレンの音が……
私を連れてって……
私を……遠くに……