北条 雅子の目覚め
あれから……私がどうやって病院に運ばれたのか……何がどうなったのか……
まったく記憶がない……
ここはどこ……
暖かい風……季節は……もう春なの……?
「くそっ! くそくそくそくそぉーー! 雅子がうまくやらんから! 水本グループとの縁談を破棄せざるを得なくなったじゃないか! 分かっているのか!」
「仕方ないでしょう! かわいい雅子をあんな目に遭わされたんですよ! あんな家と縁談だなんて冗談じゃないわ! 水本グループが駄目なら西の平華コーポレーションでいいわよ!」
「水本グループは会長の逮捕もあったからな! さっさと縁を切って正解ではあった! 平華コーポレーションを狙うにしても雅子の顔が治らんことにはどうにもならん! くそっ! もう半年だぞ!? なぜ治らん!」
「知らないわよ! 何度手術で切除してもその度に現れるなんて! 気味が悪いったらありゃしないわ!」
気味が悪い……
そうだ……
私の顔は……バケモノだ……
ピンポーン……
誰か来た……
「もう! こんな時に誰……警察!? な、なぜ!?」
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約に関する重大違反で逮捕状が出ている! 大人しくしてもらおうか!」
警察が……両親を……
ならば私は……北条家は……千年続いた家が……終わる……?
私は、バケモノ……
このブツブツがあるから……バケモノ……
じゃあ、これさえなければ……
「お、おい! 君! やめろ! 何をしてるんだ!」
痛くない……
ブツブツを剃刀で削ぎ落とすことなんか、痛くない……
「やめろ! こっちだ! 来てくれぇー!」
ひひ、これで、私は、元の、美貌に……
ぞりっ……ぞりぞり……
剃刀が私の顔を撫でていく……
痛くない……こんなの……全然……
あれ?
ここは……
うっ、顔が……痛い!
燃えるように痛い!
顔が……熱い!
誰か!
誰かいないの!
パパ!?
ママ!?
誰か!
城!
城はいないの!?
城……はっ……
なんで城はあんな……ドブスと……
ドブス……
そうだ……
あいつさえ……
ブス香さえいなければ……
城が……私のところへ……
殺せばいいんだ……
ブス香……
ブス香を……




