北条 雅子の絶望
「お、おい雅子! お前その顔……」
見るな……こんな私を……そんな憐れむような目で見るな!
「うるさい! そこのドブスが感染ったんだよ! どうしてくれる!」
消えろ! クソどもが! さっさと消えちまえ!
「城君、帰ろうか。たくさん踊ったし、城君の膝も心配だからね。」
ブス香……私なんか眼中にないって顔しやがって……こいつは昔から……いつだって!
「お、おう、帰ろうな。おい雅子! タクシーか救急車呼ぶか? 病院に連れてってやる気はないけどそんぐらいはしてやるぞ?」
ふざけるな! 私に憐れみをかけるな!
「うるさいんだよ! どいつもこいつも馬鹿にしやがって! こんなブツブツなんかすぐ治るんだよ! ほっとけ!」
「それなら安心だね。私帰りにドナに寄りたいな。」
消えろ! どいつもこいつも消えちまえ!
「おう。じゃあな、そっちの阿波さんだっけ? 何とかしてやれよ。それにあんなクソ兄貴だけどよ、付き合いきれるのは雅子ぐらいだろうぜ? まあ知らんけどよ。」
「さっさと消えろ! だせぇ仮装しやがって!」
ぴくりとも動かない秋子。こいつなんか死ねばいいんだ……顔もスマホもぶち壊してやった……
城……私をそんな目で見るな! 憐れむな!
私は……私にはもう……
ううっ……ううう……
ふぐぅぅぅ………………
床が……ぐっ……冷たいよ…………
「くっくっく……無様だねぇ。天唾って言葉を知らないのかぁい?」
…………だれ…………
「アンタのその顔、簡単に治ると思ったら大間違いさぁ。静香があの顔を治すのに費やした時間は20年近い。まあほぼ研究と解明に費やした時間だがねぇ。」
その名前を出すな……気分が悪い……
ケバい顔しやがって……
「治したくなったら言ってきな。条件次第で相談に乗ってやるさ。あぁでも、アンタその顔になったら自殺するんだったわねぇ? それなら問題ないねぇ。」
「条件って何よ!」
ふん……聞くだけ聞いてやる……
「別にぃ? 自殺するアンタには関係ない話さ。そもそも自殺しなくたって長生きできそうにないしねぇ?」
「なっ、何を知ってるって言うのよ!」
私が自殺なんかするわけない……
「アンタだって気付いてんでしょお? 取り巻きがもう言うこと聞かないって。それどころか4人が4人とも追い詰められ過ぎてトチ狂ってるよぉ?」
なっ……
「まあどうせ少年院のあいつらが白状したらアンタもボンボンも豚箱行きさぁ。どんな約束で口封じしてんのか知らないけどさぁ、年貢の納め時だねぇ?」
「なっ! あれは佐朝が!」
「へぇ? ボンボンの指示だったんだぁ? 証拠ゲーット。でもそんなボンボンにおねだりしたのはアンタだよねぇ? まあ喋りたくなったら言いなぁ? 聞いてやらんこともないからさぁ。」
「何なんだよ! 何がしたいんだよ! てめぇ何もんなんだよぉ!」
どいつもこいつも! 私をなめんじゃねえ!
「別にぃ? ただうちのかわいい静香を長年イジメた奴らを苦しめたいだけさぁ? 苦しむのが嫌ならさっさと自殺でもしなぁ!」
「くっ、こんなの治るし! 証拠とか何の話か分からないわ! 自殺なんかするわけないし!」
私は……私だけのために……
「そうかい。そんならその顔で一生過ごすんだねぇ。ちっとは静香の苦労が分かるだろうよ? あぁそうそう。アンタが壊したそのスマホ、ダミーだよ。そこでのびてる子、悪知恵が働くのねぇ。もうとっくにアンタのブツブツ顔はあちこちに公開されてるよ? ははっ、可哀想にねぇ?」
「そ、そんな……」
なっ……秋子……まさか……
「じゃあねー? あ、これ名刺。要らなきゃ捨てなぁ?」
いるか! こんなもん! 捨ててやる! 捨てて……
「ああああああああーーーーー!」
くそ! どいつもこいつも!
「あああぁぁぁあああーーーー!」
なぜ私がこんな目に! くそ! くそくそくそくそぉぉぉ……
床……こんなにも硬い……
くそぉ……手が……痛い……




