北条 雅子の転落
いきなり何するの!
「痛いじゃない! 佐朝ぉ、何するのよ!」
「雅子……お前、その顔は何だ……まさかドブスが感染ったとでも言うのか?」
「は? 私にドブスが感染る? 何を言ってるの?」
何を馬鹿なこと言ってんのよ!
「うるさい! 自分の顔を鏡で見てみろ!」
何なの? 私の顔に何の文句が「ひぃっ!」
う、うそ!? 何これ!? 私の頬が!
これ、まるでブス香じゃん! きゃあぁ! 広がってく! うそうそうそうそ! 顔中に!? 私の美しい顔にブス香みたいなブツブツが!?
「ギャアアアア!」
「テロだ! バイオテロだぁー!」
「逃げろぉー!」
「バケモンだぁぁーー!」
化け物? この私が? うそ……これはうそよ……悪い夢よ……
愛用の手鏡が私の手から滑り落ち、割れた……
なによあいつら……こんな時にもまだ抱き合ってんの……馬鹿じゃない……あれ?
「す、佐朝! あなたの顔が……」
「うるさい! 近寄るな!」
佐朝の顔もブツブツ……ブス香と同じ……
「ヒィイイイイー!」
「やっぱテロだぁー! 伝染病だぁー!」
「どけぇー! 逃げるんだよぉー!」
「ちょっとどいてよ! 私が先よ!」
誰もいなくなった……
いや、城とブス香と……秋子?
「ぷっ、あははははははははははぁ! ぷぷっ、くっ、あーははははははははははははははぁぁぁ!」
秋子は何を……狂ったように……
「あれ? 仮装ダンスパーティーはどうなったんだ? まだ終わる時間じゃないよな?」
「そうだよね。私まだ踊り足りないよ。」
「音楽が止まってるな。吹奏楽部もいなくなってるし。まあいいか。」
「うん、このまま2人で踊ろうよ。城君、リードして。」
こいつら……いい気になりやがって……
「お前があんなドブスなんかに関わるから感染ったんだろう! どうしてくれるんだ!」
「そんなの感染るわけないでしょ! ドブスが感染るって小学生じゃあるまいし! こんなのすぐ治るわよ!」
当たり前だろ……馬鹿なのかこいつ……
「本当だろうな! こんな顔では外も歩けん! 迎えを呼ぶから先に帰るぞ! お前は勝手にしろ!」
「ちょ、佐朝、自分だけ帰る気!? 私も連れて行ってよ! 帝大病院に行くつもりなんでしょ!」
こんな時に自分だけ!? 信じられない!
「うるさい! タクシーでも何でも呼んで後から来い! 治るまで俺に近付くな!」
「そう……そんなこと言うんだ。この私に。もういい、アンタなんかいらない。さっさと消えろ! この、無駄撃ち早撃ちゲス猿野郎ぉぉぉーーー!」
俺に近付くな? ちょっと金を手にしただけの成り上がりの平民が? この野郎……
「ふん、血筋しか取り柄のない売女が! お前だけが女だとでも思っているのか! 今日のことはパパに言いつけるからな!」
はっ、こんな時にもパパ……馬鹿みたい……
いや、馬鹿だったわね……クソが……
あんたみたいな男に付き合いきれる女なんかいるわけないわ……
情けない……
耳障りな秋子の笑い声がやけにムカつく……
「アンタはいつまで笑ってんのよ!」
思いっきり頬を叩く。生意気な下僕には躾が必要だか、何!? 防がれた……
「哀れねぇ北条さぁん? どうしてこうなったんだろぉねぇ? ぷぷっ、今のあんたはブス香そっくり、そうよ! あんたは今日から雅子じゃなくてドブス子よ!」
「秋子、アンタ何考えてんの? 私に逆らってこの先どうやって生きてくつもりなのよ?」
頭悪いんじゃない?
「はぁ!? あんたがそれを言うの!? 私達はもう終わりなんだよ! あんたなんかに付いて来た所為で! こんな学校に来てまで! くっそ下らないイジメをさせらせて! 私らの成績知ってる!? 4人で最下位争いしてんだよ!? こんな成績でどこの大学に行けってのよ! しかもブス香はあんたより美人になるし! あんたは水本先輩に捨てられるし! ブス香よりドブスだし! もう笑うしかないんだよぉぉぉぉーーー!」
勝手に来ておいて? どうやって合格したのかは知らないけど私がここに来いなんて言った? 馬鹿すぎる……
ブス香よりドブスとか……あり得ないし……
もう知らない……このボケがぁ……
「そう。アンタも佐朝もバカばっかりね。なぜ私にこんなブツブツが出来たのかは知らないけど、こんなのすぐ治るに決まってるわ。アンタら4人も佐朝も、好きにしたらいいわ!」
どいつもこいつも勝手にしやがれ……
絶対……許さないから……
「ひゃっはっはぁ! 好きにするわよ! あんたのその顔! もうバッチリ写したからね! せいぜい広めてやるから! 世界中にねぇ! 死ねばよかったのに、ほんっとに悪運だけは強いんだから! あんたもブス香も! せいぜい生き恥晒してもらうからね!」
これか! このスマホか! こんな安物で私を!? ふざけんな! ぶっ壊してやるよ! スマホも、お前の顔も!
「あーははははははははははははははぁぁぁ………………」
くそ!
くそがぁ!
くそぉ……
「ブス香ぁぁぁぁーーー!」




