北条 雅子、高校一年生2
今まではやらなかったことだが、生温いことをされてはつまらないので、逐一私が指示を出してみた。
下駄箱の靴には我が家のペットの糞を詰めたり教科書は切り刻んだり。机には落書き、ブス香以外の全員が入ってるクラスのグループRINEはいつもブス香の悪口で盛り上がっている。
身の程知らずのブス香。この学校はアンタじゃ無理ね。何せここはイジメ禁止ではないのだから。弱肉強食、つまり弱い方が悪い。イジメられる方が悪いんだよ。せいぜいこの学校に来たことを後悔するといいわ。さっさと辞めればいいのよ。
私が指示をするのは最初だけ。後は適当にやっていればいい。私はいつまでもブス香なんかに関わってはいられない。やるべきことがたくさんあるのだから。
その一つが婚約者、水本 佐朝の完全籠絡。
私が高校に入学するとともに婚約が確定した相手。成り上がりで金しかない家柄だけど、金だけはある。せいぜい利用してやろう。
「佐朝、今日はどこに行くの?」
「肘川アーバンインペリアルホテルで夜景を見ながらディナーはどうだい?」
「素敵ね。行ったことがないから楽しみだわ。」
もちろん行ったことはある。あの時は確か西の平華コーポレーションの関係者と一緒だったかしら。冴えない顔してたからよく覚えてないわ。それに比べると、佐朝は二枚目と言っていいレベルだ。成績だってトップ。背が低いことと、アレが下手で早いってことを除けば理想的な男だ。
今夜もディナーの後はホテルの一室で逢瀬。いや、逢瀬なんてロマンティックなものじゃないわね。こいつは完全に猿ね。何回やれば気が済むのかしら。そりゃあ私の美貌と完璧な体を目の前にすれば抑えが効かないのも分かるけど。
「他に女がいてもいいの……私、あなたの側にいられるだけで幸せだから……」
「馬鹿言うなよ。俺は雅子しか要らない。お前しか見えてないんだから。」
ホントこいつ馬鹿。せっかく浮気していいって言ってんのに。金持ちのくせに甲斐性なしか。まったく、これだから成り上がりは……