北条 雅子、高校一年生
テストから三日後。答案が返ってくる。
私の合計点は……497点……
くっ、どこで落としたの……!?
ここ、やはり数学か……
くそ……相似の証明を利用して辺の長さを求める問題で……
最高得点は?
なっ……500点? まさか……またブス香が!?
絶対許さない……どこの高校に行くのか知らないけど、どこに行こうが絶対思い知らせてやる。どこの大学にも行けないようにしてやるわ……
春。私が入学したのは国でも有数の進学校『優極秀院高等学校』
私の下僕、春菜、夏乃、秋子、冬美もここに入学した。馬鹿のくせにどうやってこの学校に入ったんだか。不思議なこともあるものね。
この学校に入るにはいくつか条件がある。
一つは成績優秀であること。これは入試で好成績を取れば誰でも入れるのだから言うまでもない。
それからスポーツの優秀者。いわゆるスポーツ推薦ね。これも普通のことだ。
そして、私のような名家にだけ許された裏技。財力だ。ただ、そこらの成り上がりではいくら金を積もうと相手にされない。北条家ほどの家格があって初めて成立する話だ。
この学校のモットーは『弱肉強食』
財力、権力を使うことも許される。ただし、入学後は使えない。全ての生徒は成績のみで序列をつけられる。貧乏人だろうと成績が上位であれば敬われる校風だ。
ならば全てを持っている私は敬われて当然。新入生よ、私に傅くがいい。私は差別などしない。全員平等に扱ってあげるわ、私の下僕としてね。
でもおかしいわ? そろそろ学校側から新入生代表挨拶の知らせが来るはずなのに。いくら私でもいきなり本番で挨拶するなんて難しい。ま、できないとは言わないけどね。
私は北条家の長女。人の前に立つのも、人の上に立つのも慣れたものよ。簡単に草案だけ考えておこうかしら。
結局入学式当日まで私に挨拶の依頼は来なかった。まさか当日にいきなり挨拶をさせるつもり? 私でなければステージで混乱して醜態をさらすだけなのに。厳しい学校ね。
そして入学式が始まった。いよいよ新入生代表の挨拶。まったく……いきなり挨拶をしろと言われてできるのなんて私ぐらいだろう。先生方も無茶をさせるものだ。
『新入生代表挨拶。代表、普通科 御前 静香』
は?
私じゃないの?
私より入試で成績が良かった奴がいるっての!? そんな馬鹿な!
しかも……今の名前……まさか、あのドブス……?
ステージに上がったのは……
間違いない! あの醜いブツブツ顔!
見るだけで吐き気を催すドブス!
あのブス香が!
この学校に!
しかも首席合格!?
許せない……絶対、絶対に……追い出してやる……
あんなドブスが私の上にいるなんて……絶対許せない……
今に見てなさいよ……この学校に来たことを後悔させてやるから……




