北条 雅子、中学三年生
前回のテストも私が学年トップだった。当然よね。私は日本有数の名家、北条家の長女だもの。ロクに勉強もせず口を開けば親と学校の文句しか言わないクズどもとは根本的に違う。
この中学は三年生ともなると内容はそれなりに難しくなってくる。数学なんて高校一年の内容が普通に出てくるし。チェバメネなんてあいつらに理解できるのかしら?
二学期の期末テストが終わった。暗記系は得意だけど計算系は少し苦手。それでも私のトップは揺るがない。成績、家柄、そして美貌。全てにおいて私は頂点だ。
そしてテストが返却される。ほとんどの教科が98や100ばかり。でも、数学が……95!? そんなバカな!? いったいなぜ!?
くっ、ここね……せっかく場合分けをしたのにx≧1ってことを忘れてたのね……
x=-1±√6で終わってしまってた。これで2点マイナスか……もう一問は普通に分からなかったから仕方ないとしても。
別紙、テストの得点分布をまとめた紙によると数学の最高点は99……
そんな……
私ですら95だったのに? 私が解けなかったあの問題を解いたってこと!? そんな奴がこの学年にいるの!? 信じられない……
で、でも合計点なら……嘘……私が2位……最高点は……496点……私は490点……
数学で満点をとったとしても私の……負け……
許さない……
一体誰が? 思い当たるのは男子、東堂か西原あたりだろうか。女子なら……いるとは思えない。とりあえず取り巻きの下僕たちに指示を出す。点数の良さそうな奴からチェックするようにと。あいつらはそこそこ顔がいいから軽くボディタッチしながらおねだりでもすれば簡単に知ることができるだろう。
その結果、東堂も西原も違った。どちらも私より20は低かった。他のクラスの情報も集めさせたが、最高でも400点そこそこ。成績優秀者はこの一組に集まってるのだから当然か。
結局判明したのはそれから三日後だった。
一人を除いてクラス全員の点数をチェックさせた結果、全員違うということが分かった。つまり最後に残った一人。学年中から無視されている気持ち悪い女、御前 静香。
あだ名は『ブス香』
顔中ブツブツだらけ、視界に入るだけで鳥肌が立つほど気持ち悪い奴。誰とも喋らないから完全にノーマークだった。あんな平民のドブスが私に勝っただなんて。教師を買収できる程の金持ちとも思えないし、きっとまぐれね。でも、まぐれで調子に乗られちゃたまらないわね。身の程を知ってもらうとしようかしら。
私は何もしない。あんな気持ち悪い奴やその持ち物に触るなんて冗談じゃない。ただ下僕たちに愚痴るだけ。ブス香が調子に乗ってる、気に入らないってね。
そうすると下僕たち、春菜、夏乃、秋子、冬美が気を利かせて動くって寸法だ。ご褒美に今度会員制ナイトプールにでも連れていってやろう。こいつらは『映え』とやらが好きだからな。
こいつらがブス香に何をしたかなんて私は知らない、知る必要もない。あいつがこれで身の程を知ればそれでいい。地べたに這いつくばって許しを乞うなら寛大な心で許してあげよう。
そして高校入試を目前に控えた最後のテスト。高校入試を見据えた内容となっており難易度は落ちる。その代わり範囲は広い。ふふ、結果が楽しみだわ。
 




