SS:ドンドンハーツ(前編)
ナレーション:今夜のドンハーは……。
「ちょっと! この役は私がやるんじゃなかったの!? このブスどこのどいつよ!」
今をときめく人気アイドル、『安珠薇』がバラエティー初登場! 映画ドッキリで女子中高生のカリスマの意外な素顔が暴かれる?
ジングル:ドンドンハーツ!
*
マツシ「こんばんわ、『ドンドンブーツ』3号4号のマツシです。今回のドッキリの見届け人は……」
ザラキヤマ(以下、ザラキ)「ザラキヤマがー、あ、ドンドンハーツにー、くる~っ!」
マツシ「今回のターゲットはあの人気アイドルのアンジュラちゃんなんですよ」
ザラキ「あー、今大人気ですよねえ、キレイな顔してるし」
マツシ「でも、こんな気になるタレコミがあるんですよね。20代女性スタッフから、『スタジオに入って来るなり罵声を浴びせられた。収録中もハ◯ゲンダッツを買ってこいなど、ADをアゴでこき使うし態度も悪い。あれが人気アイドルなんて信じられない』」
ザラキ「あら、ぜんぜんイメージと違いますね」
マツシ「それから10代男性AD、『会うたびに話しかけられ、ベタベタと身体を触られる。あんまりしつこいので僕には彼女がいますと言うと一変して、ブサイク! メガネ! と罵られた。僕はメガネをかけてないのに』とのことですね」
ザラキ「メガネじゃないのにメガネって言われるんですか!? 表裏が激しい娘なのかな?」
マツシ「という訳で検証VTRがあるけど、見たい?」
ザラキ「そりゃ、もちろん見てみたいですよねえ」
マツシ「それでは、こちらをごらんください。どうぞ」
ナレーション:十代女子のカリスマ、人気アイドル『安珠薇』の意外な生態!
◯月某日……。
隠しカメラを仕込んである控室に入って来る、アンジュラ。
「おはようございます」
「ジャーマネ、うぃーっす」
ドカッ!
いきなり、マネージャーの尻に蹴りを入れる!
人気アイドルの生態①:マネージャーへのあいさつは蹴りから。
マツシ「蹴りが入りましたね」
ザラキ「しょっぱなから飛ばしますねえ」
隠しカメラがある事を知らず、横暴な振る舞いを見せるアンジュラ。イスに座るも、膝を組んでエラそうな態度。
「安珠薇が出たいって言ってた吾妻監督の映画『復讐令嬢フランソワの逃亡』。フランソワ役で主演が決まったぞ」
「おー、マジで! やるじゃん!」
「端役だけど、あの『浜ゆいが』も出る事が確定したらしい」
「やればできんじゃん! 後でハイヒールで踏んでやるよ」
「ブヒッ、ありがたき幸せ」
人気アイドルの生態②:マネージャーはドM。
マツシ「あー、あの蹴りはあいさつじゃなかったんだ」
ザラキ「ごほうびだったんですね。ところで『浜ゆいが』っていうのは?」
マツシ「番組の調べによると、子役出身の俳優でアンジュラのお気に入りらしいよ」
ザラキ「へー、どんな子か見てみたいですね」
人気アイドルの生態③:若手俳優『浜ゆいが』がお気に入り。
「で、撮影はいつから?」
「来週の月曜日からだ」
「なら、もうすぐじゃねーか。げへへへ、あの『ゆいが』の若いエキスを吸いまくってやるずぇ……」
人気アイドルの生態④:言うことがおっさん。
ザラキ「彼女、どういうキャラクターなんですか?」
マツシ「うーん、ドSのショタコン? なのかな?」
そして、控室を出るアンジュラとドMのマネージャー。
マツシ「というわけで、VTRを見てもらったわけですけど、実はさっきアンジュラたちが言ってた映画の撮影は、今からこのスタジオでやるんです」
ザラキ「えっ? ということは、その映画は……」
マツシ「全部ドンハーのドッキリです」
ザラキ「ええーっ!?」
マツシ「ちなみに吾妻監督もドッキリの仕掛人です」
ザラキ「世界的な映画監督ですよ? 良くオファーを受けてくれましたねー」
マツシ「では、スタジオの様子をモニタリングしていきましょう」
昔風の赤レンガ倉庫、中には木箱やコンテナが所狭しと並べられている。パイプイスに座ってADにうちわで仰がせながら不機嫌そうにアイスを食べているアンジュラ。
「アイス溶けちゃってんじゃないのよ! 私はハ◯ゲンダッツはガチガチを食うのが好きだっつってんだろ!」
人気アイドルの生態⑤:ハ◯ゲンダッツは固いのがお好き♡
マツシ「あ、ちなみにこのスタジオは、ドンドンハーツで建てました」
ザラキ「1回のドッキリにどんだけ金かけてるんですか?」
マツシ「ここで1つ、アンジュラにドッキリを仕掛けてみます」
ナレーション:検証ドッキリその1『もしも、エキストラに出番を取られたら?』
アイスを食べ終わったアンジュラにスタッフが、『今回のシーンは危険だからエキストラがやる事になった』と事情を説明。
すると。
「はあ? 私そんなの聞いてねーし!」
いきなり不機嫌に!
「ざけんじゃねーよ! 『ゆいが』の顔も見てねーのに、帰れっていうわけ?」
マツシ「なるほど、出番を取られたというより、お目当ての俳優に会えなくなる事にキレてるみたいですね」
ザラキ「いったい、何をしに来てるんでしょうねえ」
人気アイドルの生態⑥:映画の撮影よりも、お目当ての俳優。
そして、アンジュラはウォーミングアップをしているエキストラの女性に歩み寄ると。
「ちょっと! この役は私がやるんじゃなかったの!? このブスどこのどいつよ!」
いきなり、罵声を浴びせかける!
人気アイドルの生態⑦:いきなり怒鳴るのは基本。
「✕✕ ✕✕と申します。エキストラとして呼ばれました」
「知らねーっての! ちょっとぉジャーマネ!? どうなってんのよぉ!」
あわてて走ってくる、ドMマネージャー。
「失礼、君はどこかの事務所に所属は?」
「しておりません。今日はたまたま呼ばれただけです」
「だったらさっさと帰れば? はーいお疲れー。だいたいエキストラ風情にできる役じゃねーし!」
マツシ「態度わりーなー!」
ザラキ「口も悪いですね」
人気アイドルの生態⑧:エキストラには横柄な態度。
「それが監督のご指示であれば従います」
「分っかんないかなぁー? かーえーれって言ってんの。頭大丈夫? 顔は手遅れみたいだけど」
マツシ「うわ、ひどいですね」
ザラキ「いやいや、これ放送しちゃっていいのかなぁ?」
「私でなく監督におっしゃってください」
「ふーん? エキストラなんかにしがみついても将来ないよ? この業界でウチに逆らって生きていけると思ってんの?」
「関係ありません」
「あったまきた! ジャーマネ! こいつ摘み出してよ!」
「監督には僕から話しておこう。それでどうだい? 明るいうちに帰った方が安全だよ?」
人気アイドルの生態⑨:脅し文句が昔のヤ◯ザ。
「そちら様が監督にお話しされるのはご自由ですが私の口から何も言うことはありません」
ザラキ「なんか、この娘の方がしっかりしてますね」
マツシ「これはちょっとお仕置きの必要があるかな? ここで話題の『ゆいが』くんと繋がってます。ゆいが君!」
《マツシさん、ザラキヤマさん初めましてー!》
ザラキ「えっ!? めっちゃ美少年じゃないですか」
マツシ「君が『浜ゆいが』くん?」
《はい、そうです》
マツシ「すごい美少年だね。君、これから間違いなく売れると思うよ」
《いえいえ、そんな……》
マツシ「じゃ、今からあの場に君を投入するから。アンジュラをヘコましちゃってよ」
《はい、わかりました。行ってきます!》
ナレーション:検証ドッキリその2『もしも、エキストラの女性が好きな若手俳優のお姉さんだったら?』
「姉さんどうしたの?」
「ゆっ、ゆいが君! 会いたかったよ! 久しぶりだね! この映画、ゆいが君が出るって聞いたから! 私も出てみたくなったの!」
ザラキ「あれ? さっきと全然態度が違うなあ」
マツシ「明らかに猫をかぶってますね」
人気アイドルの生態⑩:好みの男の前では、態度が真逆。
「やあ、安珠薇さん。誰役で出るの?」
「フランソワ役だよ。だから逃走経路を確認しておこうと思ったら変な人がいて……ゆいが君助けて!」
「変な人? どこに?」
「この人よ! 私が練習するのを邪魔するの!」
すると、ゆいが君の表情が一変!
「ふぅん……この人は僕の最愛の姉なんだけど……今日は無理言って来てもらったんだよね……それを変な人? 売れっ子で事務所も大きいからって勘違いしてない? いい身分だよねぇ……たいして演技力もないくせにフランソワ役? そりゃあセリフもないしただ走るだけかも知れないよ? でもあなたにできるのか!? スタントなし! 撮り直しなしの一発勝負だよ!? 踊りも下手くそで顔しか取り柄のないあなたに!」
ザラキ「うわ、迫真の演技じゃないですか?」
マツシ「ちなみに、あのエキストラの娘はゆいが君の実のお姉さんで、顔が出ないことが条件で仕掛人になってくれたらしいですよ」
ザラキ「あ、リアルお姉さんなんですね」
マツシ「ゆいが君、ムカついてたら手を上げてみて」
シュバッ!
いきなり挙手をするゆいが君に、ビクッとするアンジュラ。
マツシ「あはははは、ガチでキレてんだね」
「ね、姉さん!? 嘘! こんなドブスが!? 全然似てないじゃない! 冗談はやめてよ!」
「ドブス? 安珠薇さん、あなたは頭だけでなく目まで腐ってるのか? それより福原さん、いつフランソワ役を安珠薇さんがやることになったんですか? 監督からは何も聞いていませんよ」
ザラキ「このマネージャーさんは福原さんと言うんですねえ」
マツシ「初めて名前が分かりましたね」
人気アイドルの生態⑪:ドMのマネージャーは『福原』さん。
「そ、それはその、安珠薇が急に……」
「いつものわがままですか。福原さんも大変ですね。一度現場を走ってみることをお勧めします。じゃあね、二度と僕に話しかけないでね」
「そ、そんな、ゆいが君……」
人気アイドルの生態⑫:好きな人に嫌われたら普通にしょぼん。
マツシ「あっ、ニラんでるニラんでる。うわ、めっちゃ殺し屋の顔してんじゃん」
ザラキ「いやー、あの顔はテレビで見せちゃいけないやつですよ」
マツシ「あっ、吾妻監督に『あれは自分がやるべき役だ』と直談判してるね。これなら、こっちから仕向けなくても次の展開に行けそうですね」
*
次回のドンドンハーツは、人気アイドル『安珠薇』の意外な生態、完結編!
チュドーン! チュドーンッ! チュドドーンッ!
「ぎゃあああああーっ!」
あの女子中高生のカリスマが、爆破アクションに挑戦!?
「水本グループに逆らって、ただで済むと思うなよ!」
「いや、ちょっと何言ってるか分からない」
「サンドウィ◯チマンのギャグをパクってんじゃねーよ!」
最後はドンハー名物、落とし穴も!?
次回をお楽しみに!
作者:マックロウXK氏
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