元ドブスはイケメンと美少年と同衾する
それから城君にはお風呂に入ってもらったのだけど、珍しく両親の意見が別れた。
パパは客室で寝ろと言うし、ママは私の部屋でもいいと言う。結牙は帰れと言うし、朝比奈さんはパパと寝ると言うし。
「じゃあ静香はどうしたい? 結局はあなたのことなんだからね。」
「う……ん、同じ部屋がいい……かな。」
なんだかすごく恥ずかしいことを言っている気がする。でも、あくまで同じ部屋ってだけだ。まだ、同衾までする気は……
城君の膝のこともあるし……
「だめだよ! あんな狼野郎なんかと! どうしてもって言うなら僕だって姉さんと寝る!」
結牙は中学生になっても何か嫌なことがあると私に添い寝をせがむ。中3になっても甘えん坊なんだから。
「仕方ねぇなー。そんなら静香の部屋でもいいぜ。まあよぉ結牙もちったぁ姉離れしろや?」
「この子ったら私達には全然甘えてこないくせに静香にばっかり甘えるんだから。」
「だってマザコンってカッコ悪いじゃん。」
結牙は自分をどう思ってるんだろう? シスコンの自覚はないのかな。私はどうなんだろう? ファザコンとは思ってないけどパパもママも大好きだ。
「どうもお先でした。いいお湯でした。」
城君がお風呂から出てきた。なんだろう……普段と違う魅力を感じる。さっきまで上に立たせて後ろに流していた髪の毛が全部降りてるからかな。
「おう、オメーが泊まる部屋が決まったぜ。夜更かしすんなよ?」
「後は静香から聞きなさい。じゃあおやすみ。」
「は、はい! おやすみなさい!」
パパとママは今から寝るわけではない。お風呂に入るだけだ。朝比奈さんが羨ましそうにみている。
「はぁーあ。ボスもいなくなったし帰るとするわ。私も奥様みたいにきれいになりたいものね……」
朝比奈さんは妖艶できれいだと思うけどな……
「あ、はい、今日はどうもありがとうございました。」
「リハビリからボディーガードまでありがとうございました!」
朝比奈さんが帰ると居間に残ったのは三人。
「それで、俺はどこで寝るんだ?」
「ここのソファーでいいだろ。」
「私の部屋だよ。行こう、こっちだよ。」
「おお、静香の部屋か。ドキドキするな。」
「僕も行くからな! 姉さんは襲わせないぞ!」
「おお、弟君もか。なんだ、川の字になって寝るのか?」
「か、かか、川の字!? さ、三人で寝るの!?」
それは想像もしてなかったな。
「そんなわけないだろ! 僕は姉さんのベッドに寝るからな! 狼野郎は床で寝てろ!」
「オッケー。じゃあ静香は床で俺と一緒に寝ような。」
「う、うん……」
「うぉおぉぉーい! 待て待て! それなら僕だって床で寝るよぉ!」
「そうか? なら俺はベッドで寝ていいのか?」
「そうだよ! ベッドで寝ればいいだろ!」
「じゃ、じゃあ私もベッドで……」
「姉さぁぁぁーーーん! そりゃないよぉーー!」
ふふ、楽しい。芸能界の荒波に揉まれてるはずの結牙がこんなにも無邪気に。
結局私を挟んで三人で川の字になって寝た。正直かなりドキドキしてしまった。私の左手を握る城君の手が暖かった……いい夢が見られるかな。
ちなみに結牙は早々と寝息を立てている。この子は昔から寝付きがいいんだよね。
「静香、起きてるよな。」
「うん、起きてるよ。」
「ありがとな。」
「ううん、私の方こそ来てくれてありがとう。」
「弟君が言ってたよな。安すぎるって。ボディーガードの相場なんか俺には分からないけど、命の値段って言われちゃあ当然だよな。」
「そうだよね。私も分からないよ。でも両親とも動いてくれて、私も嬉しいよ。城君の膝だって治りそうだし。」
「ああ、もう一ヶ月すれば試合にも出られる見込みだ。慶三の分まで頑張らないとな……あの、バカ……」
弁田君とサッカー部の4人。今ごろどうしてるんだろう。弁田君はともかく口の軽そうなあの4人が何も喋らず塀の中に入ったなんて変な感じ。助かるためには何でも喋りそうなのに。つまり、あの4人は喋らなければ助かると考えてるってことかな。やはりパパが言うように水本グループと何かの密約でもあるんだろうか。




