元ドブスは教室に入る
『黄金比の女〜統計学を制するものは確率を制する〜』を書かれております『幸田遥』さんより7件目のレビューをいただきました!
ありがとうございます!
落書きだらけの私の机。課外授業には出席しなかったので、およそ1ヶ月ぶりかな。
クラス内にはすでに数人の生徒が来ているけど、言葉を交わすことなんかない。いつも通り、黙って予習でもしよう。
「ね、ねえ君、もしかして転校生かい? その机は座らない方がいいよ? 君みたいなきれいな人が座ると……」
知らない男の子が話しかけてきた。
「ブスがうつるって言いたいの?」
「あっ、知ってるんだ。この席の女さぁ死ぬほど不細工なんだよ。顔中ブツブツで気持ち悪くてさぁ。あれ絶対何かの病気だよ。だからここには座らない方がいいよ?」
病気って思われてたんだ。大きな意味では間違ってないのかな。
「病気が治ったらどんな顔になると思う?」
「さあ? あの顔じゃあブツブツがなくなっても大差ないんじゃない? というか普段からキモすぎてあんまり顔を見てないんだよね。」
「こんな顔だよ。」
あんまり言いたくはなかったけど。どうせ分かってしまうことだしね。
「は、えっ!?」
「私は御前 静香だよ。ここは私の席。病気が治ったと思ってくれたらいいよ。」
ついさっきは整形って伝えたけど。どっちも嘘じゃないよね。
「はあぁ!? 君みたいな美人がドブ、いや御前さん!?」
「美人と言ってくれてありがとう。でもブスがうつるといけないから話しかけてこない方がいいよ。」
「あ……ごめ……」
ふう。去ってくれた。
結局ホームルームが始まるまでに同じことが3回起こった。そのおかげで改めて自己紹介する手間が省けたかな。
それから休み時間ごとにざわざわする教室内。他のクラスからも見物人が押し寄せて私を見ようとしているらしい。中には写真を撮ろうとする人まで。さすがにそれは注意した。あまりにも無礼すぎる。
「ちっ、ブス香のくせに調子に乗るなよ!」
なんて言われてしまった。これがママの言う美人の苦労なんだろうか。はあ……無視しておいてくれればいいのに。
昼休み。やっと城君に会える。
屋上に向かう廊下、前方に現れたのは水本先輩だ。男の子の取り巻きを数人連れている。
「あのドブスが変われば変わるものだな。だが、いかにスーパードクター西条と言えど所詮は一匹狼だ。その手技には疑問が残る。もっとマシな病院に行けばいいものを。」
余計なお世話だ。私は目を伏せ、無視して通り過ぎる。
その手を掴まれそうになったので身をひねり躱す。気安く触らないで欲しい。
「待て。そのままでは城の身が危ないぞ? いいのか?」
私には関係のない話だ。通り過ぎようとしたら囲まれた。そもそも何の話をしているのか。
「それが返事だな? せっかく歩けるまでに回復した城がどうなってもいいんだな?」
いいわけがない。でもこんな奴らと会話などする気はない。無視だ。サッカー部や弁田君をいいように使って私にあんなことをしたくせに。何の証拠もないけど……悔しい……私には睨むことしかできない。
「ふっ、以前は顔を見るだけで虫唾が走ったものだが今のお前は美しい……時が止まるほどに。俺の側にいることを許してやってもいいぞ? あんな貧乏人と一緒にいても将来などあるまいに。」
「いい加減にしてください! 私達に関わらないでください!」
「ふっ、そのうちお前にも分かるだろう。金の力がな。」
私はただの高校生だ。お金の力なんか分からない。でもパパとママが働いてくれているから美味しいご飯も食べられるし、今回だって手術を受けることもできた。だからって……お金がそんなに……
屋上に着いた。早く城君に会いたい。
「静香、遅かったな。待ってたぜ。」
「ごめん、お待たせ。食べよ。」
さっきの出来事は言いにくいな。
城君はおいしく食べてくれた。放課後は一緒に病院に行くことになっている。このまま何事もなく過ごせたらいいな。もうすぐ文化祭か……ちょっと楽しみかな。
黄金比の女〜統計学を制するものは確率を制する〜
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