ドブスは手術を受ける
翌日。早朝から手術だ。私は歩いて手術室へと入った。さっきまではママも一緒だった。
ベッドに横になった私の顔や胴体、手足が固体されていく。口の中にも何かをはめ込まれた。麻酔は最低限しか行わず痛みには耐えるしかないそうだ。
顔の一部に何かを塗られている。これが麻酔なのかな。
「さあ、それじゃあ始めるよ。3分だ。3分だけ耐えるんだよ。」
まばたきしかできない私は目で返事をした。そして次の瞬間、頬を鋭い痛みが襲った。顔を覆う無数のブツブツ、その一つを切除するだけで……こんなに痛いなんて! でも声が出ない。歯を食いしばろうにも口の中いっぱいに詰め込まれた何かが邪魔をする。痛い! 痛い!
今度は何!? 切り取った傷口に何かが刺さってる! 注射!? 傷口に注射してるの!?
痛い! 痛いよ……
「終わったよ。」
はっ、気を失ってたのかな……本当に痛かった……
「さあ立って。自分で歩くんだ。君ならできるだろう?」
「は、はぅ……」
うまく話せない、口が回らないんだ……
でも立てる。歩くのにも問題はない。
「静香、よくがんばったわね。でもこれからよ。これからしばらくはこんな日が続くの。あなたならできるわ。耐えてみなさい。」
「う、うぅ……」
口が回らないので頷いてみせる。城君はもっと痛いんだ。私のなんか自力で歩ける程度の痛みなんだから。
「静香にリハビリは必要ないわ。今からの時間はやりたいことをやりなさい。」
「うぅ。」
まずは病室に帰って休もう……顔が燃えるかのように痛い……
病室前、ちょうどリハビリに向かう城君と入れ違いになった。
「静香……大丈夫なのか!? 包帯で顔色が分かんねーけど。」
「うん、大丈夫だよ。3分で終わったから。今日からしばらくはこうやって少しずつ手術していくんだって。」
ほっ、口が回るようになってた。城君には心配かけたくないから。
「そうか……俺には何もできないけど、後で部屋に行くからな。」
「うん、待ってる。城君もがんばって。」
城君は基本的にはリハビリルームで専門の先生と一緒にリハビリを行なっているそうだ。それ以外に部屋で行う時は朝比奈さんが面倒を見てくれていると。
城君と話したら痛みも少し減った気がする。これなら少しぐらい勉強できるかな。私も頑張ろう。
「おう由乃、手術ぁ大丈夫だったんだろうな?」
「ええ、西条先生なんだから。問題なかったわよ。そっちはどう?」
「病院の周囲は問題ない。が、水本 溜知はかなりあいつに執着してんな。よっぽど『適合』するんだろうぜ。」
「ついこの間腎臓移植をしたばかりじゃなかった? もう次なのね。」
「大して悪くもなってないくせにな。どうあっても全盛期の体を維持したいんだとよ。鬼畜の所業だぜ。」
「水本グループも長くないわね。」
「まったくだ。俺としてはあんなガキが死のうが生きようがどうでもいいんだがな。まあ静香の魅力に気付いた点は評価してやらんでもない。」
「あなたったら。私はあの子好きだわ。そこそこイケメンだし正直なところも好感が持てるわ。まあ何にしてもあなたが頼りよ。トドメは私に任せてもらうけれど。」
「おう。そこまでは任せておきな。それと結牙の件はどうなった? あの事務所が文句つけてきてんだよな?」
「ええ、表向きには結牙は今の事務所では実力を発揮できない。だからうちに来いってね。目的は私。私の息子ってことを大々的にPRして一気に売り出すつもりみたいね。ついでに私も表舞台に引っ張り出したいみたいだわ。」
「舐めたこと考えてるぜ。あいつが今までどんだけ努力してきたかも知らないでよ。まあいい、まとめてどうにかしてやるよ。」
「やっぱりあなたは最高ね。頼りにしてるわ。」




