ドブスは脅される
色々あったけど明日からやっと夏休み。部活をしていない私は丸々休みだ。学校の課外授業にも出ないし塾、予備校にも行かない。家庭教師の先生は来てくださるけど。パパより歳上のおじいちゃん先生、分かりやすくて好きだ。
そして今日は終業式。これが終わったら帰れる。
校長先生の挨拶も終わり全員が教室に戻る。サッカー部が活動停止になることもなく、バスケ部が大会への出場を辞退することもなかった。これについては文句などない。個人の責任を部員全員が負うなんて馬鹿馬鹿しいことだと思う。
1学期最後のホームルームも終わった。帰ろう。
帰ろうとしたら囲まれた。
「御前。話があるわ。ちょっと顔かしてくれない?」
北条が話しかけてきた。明日は雨、いや槍でも降るのかな。
「私はないよ。じゃあ帰るから。」
「顔をかせって私が言ってんの。この私が。ドブスは素直に付いて来ればいいのよ。」
北条と4人の手下。何がしたいんだろうか。
「話があるならここでして。3分だけ待ってあげる。」
「ふん……調子に乗って……忠告よ。佐朝の家と北条家に逆らってこの国で生きていけると思わないことね。」
「もう少し具体的に言って。何をすることがあなたや水本先輩に逆らうことになるの? 私はこれ以上何を耐え忍べばいいの?」
「ドブスのくせに……気に入らないのよ! あんたみたいなね! ドブスは背中を丸めて下を向いて世間に申し訳なさそうな顔して卑屈に生きていくべきなのよ! それを! いつも自分は別格って顔して! 調子に乗りすぎなのよ!」
「私が調子に乗ってる? あなたからはそう見えてるんだ。あなたもこの顔で生きてみたら? 絶望しかないと思うよ。」
「ドブスのくせに……あんたみたいな顔だったら自殺するに決まってるじゃない! よく生きていられるわね!」
「当たり前じゃない。もうその段階はとっくに過ぎてるよ。あなたはいいよね。美しい顔に生まれて。羨ましいよ。でもあなたみたいな人にはなりたくないけど。」
北条は目を剥いて怒りを露わにしている。自分はいくら他人を貶しても、自分が貶されるのは許せないんだね。
「……っ、2学期……無事で学校に通えると思わないことね! このドブス!」
そう言って北条は帰っていった。結局最後まで言いたいことが分からなかった。はぁ……帰ろう。ちょっと早いけど城君のところへ寄ってから。こんな話は城君にはとても聞かせられないけど。
あ、ママからラインだ。
『大学病院に来なさい』
ちょうど行こうとしていた時に。こうもタイミングがいいと嬉しくなってしまう。返事をしておこう。
『今向かってるよ』
今日は急いでないのでバスで向かった。普段あまり乗らないから間違えてないか少し不安になる。
ほっ、無事に到着できた。ママはどこにいるんだろう。