3話 赤髪太股女VS初代従者(笑)
前方の3人も追っ手側の馬も、それほどスピードは出ていない。双方の騎馬とも限界が近いようで、セーブした手綱使いだ。しかし……。
「ビオラ様。もう馬が持ちません!」
「もう直ぐ国境よ。バス、諦めないで!」
一番大柄な男の馬の口から泡が溢れる。街道を外れたルートも馬の疲労に拍車をかけていた。潰れる寸前だろう。
そして潰れた!
地面の僅かな凹凸に足を取られた馬が勢い余って前方に倒れ込む。男は、それを読んでいたかのように自ら飛び出し1回転。2回転、3回転目で起き上がると、その両手に戦斧があった。
「ビオラ様、先にお逃げ下さい!」
「バカな事を言わないで!」
女ともう一騎が止まり、振り向く。
「セロ、援護を!」
「はっ!」
セロと呼ばれた男は素早く馬を降りて戦斧の男の左脇に立った。手には両手剣だ。女は騎乗したまま追っ手と向き合う。
3人は迎え撃つ覚悟したようだ。
追っ手側はスピードを緩めながら距離を詰める。先頭の騎士が声を発した。
「諦めろ。もう逃げられんぞ!」
* *
俺は、この状況を上空で旋回するパールから乗りだすように見ている。【隠蔽】で姿を隠したままだ。
「見たことがある鎧だと思ったら、あの騎士はゼクスじゃないか?!」
ゼクスは御手洗先輩の初代従者(笑)であり、俺の剣術の先生でもあり、そして俺を毒のナイフで殺そうとした男だ。(3章 第8話参照)
何故、近衛騎士団のゼクスがこんな国境まで来ているんだろう?
「パール。もう少し速度を落とせるか?」
わずかにスピードは落ちたが、少しふらつく。これが限界のようだな。そう思った時、中空に魔方陣が発生。
「アイスジャベリン!」
赤髪太股女、ビオラお得意の魔法攻撃だ。
広範囲に氷の槍が追っ手側の十数騎に降り注ぐ。この攻撃は騎士達も想定内だったのか散開して避ける。
一人ゼクスのみ、迫る氷の槍を抜き打ちで迎撃した。
「無駄だ。この程度の魔法は私には効かない。諦めて武器を捨てろ!」
ゼクスは切っ先を向けて警告するが、向けた先には2人しかいない。馬上のビオラを護るように戦斧のバス。もう1人は?
「なに? 何処へ!」
もう1人、両手剣のセロは散開した敵を各個撃破の為に忍び寄っていた!
アイスジャベリンは囮だったようだ。
「ぐわっ!」「クソ、汚いぞ!」
セロは、まともにやり合わず、騎乗した敵の脚だけを斬りつける。2人が落馬し、1人は騎乗したまま大きく距離をとった。
実に汚い。そして俺は、こういう汚い攻撃が大好きだ!
しかし、多勢に無勢。たちまち数人の騎馬に囲まれた。技量はセロの方が上だが馬の勢いを上手く使われている。徐々に防戦一方になっていく。
ゼクスはその様子を見て、ビオラの方に馬を寄せる。
「また、魔法で攻撃しますか?」
そう挑発すると同時に鐙で馬の腹を突いた! あっという間もなく、ビオラに迫る。
バスが身を挺してビオラの前に出た。
ガキィーン!!
ゼクスの馬上からの剣圧に2挺の戦斧をクロスしても耐えられない!
「ぐがっ!」
大きく後方に跳ばされたが、自分で跳んだようにも見える。
「ふん。賊風情が、なかなか楽しませてくれる」
ゼクスはバスの位置を確認した後、ビオラを目で牽制した。
さすがはゼクス、腕だけは達者だ!
「パール。俺は降りるから、このまま旋回していろ。決して攻撃はするなよ!」
* *
ともあれゼクスがいる以上、どちらに味方するのかは決まっている!
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