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4-1

 ボサボサの髪。艶のない肌。クマのある顔。カサカサの唇。どう見ても健康そうに見えないある少女は、騒いでいた。


「どういうことよ! 」

「えっとですね、赤と金の睡眠劇薬ちゃんは、作れなくなってしまいました」


 赤と金の睡眠劇薬ちゃんは、私の好物であるりんごを模して作った薬である。動物で研究したら、衰弱死したらしい。名前の通り、劇薬物のようだ。

 私には、アディクの作った薬しか効かないというのに……。他の薬でもいいけれど、あれはお気に入りだった。それが作れなくなるのは、どういうことなのか聞きたくもなる。

 ちなみに、アディクは、茶色の髪を一つに結び、眼鏡をかけた青年だ。顔はいい部類に入る。ただ、感性がおかしい。醜い私を可愛いと言っているから。

 その彼は、私の顔色を伺っていた。そして、オドオドしていた。


「ざ、材料が手に入らなくなったんですよ」

「材料? そんなのなんとしてでもどんな手を使ってでも手に入れるのよ」

「いやいや、無理です。薬作ってる貧弱そうな僕に熊の住処に行けって言うんですか? レノンは酷い人です! 薄情者!!」


 いつもどこまで材料取りに行ってるのよ。熊の住処っていつも山まで登っていたのか。こいつ、何してるのかな。でも、いつもその山登ってたなら、平気そうだよね。今、生きてるから。


「アディクはさ〜、弱そうに見える人間なだけで本当は強いんだよ。だから、熊の住処に突っ込んでも生きて帰ってこれるよ」

「なんの根拠があってそんなことが言えるのですか?」

「えっ? いつも山に登って材料取ってきてたなら、熊の住処も平気だろうと思って……」

「僕、強くないですから! 山に登って材料採取なんてしてませんよ。熊と対峙したら、死にます! 死にますから!! 死にますからね!? 僕が生きていなかったら、二度と僕の薬は飲めませんからね!?」


 必死すぎる。ちょっとした冗談だよ。そんなに焦らなくてもわかってる。反論しなかったら、その熊の住処に行かせた。でも、死ぬって騒いでるから、行かせたら死んじゃうんだろうね。嘘かもしれないが、二度とこいつの薬が飲めなくなるのは嫌だ。違う方法を考えよう……、アディクがね。


「いつもどうやって薬の材料手に入れてるの?」

「仕事ができる人に頼んでます。依頼書を提出して、誰かが受理してやってくれます」

「誰かって信用できるの?」

「さあ? 管理者がいるので、大丈夫だと思いますよ? 材料は届きますし、今まで問題なかったです。もし間違ってたら、お金返して貰えばいいんですから」


 大雑把すぎる。もっと考えて行動するべきだ。自分が作った薬を売って、たくさんお金を持ってるアディク。それは高いが、効き目もよく、人気らしい。これからもお金に困ることはないだろう。だからといって、薬の材料の依頼を適当にすることはよくないこと。いつかお金を騙し取られて困りそう。


「それで? なんでアディクは、熊の住処のこと知ってるの? 現地に行ってないはず……」

「それは行ってないですよ。死んじゃいますから。でも、僕お得意様なので、交流があるんです。依頼書出しにいったら、熊が住み着いてしまったから、無理って言われました」


 遠くを見つめるアディク。そんなに重要な材料だったのだろうか。私としては、赤と金の睡眠劇薬ちゃんを作るのはやめないでほしい。足りない材料の代わりになるものがあれば、作れないだろうか。


「ねぇ、なんの材料なの?」

「はちみつです」

「はちみつって、あの黄金色でトロトロしてて甘いはちみつ?」

「それ以外のはちみつがあるんですか?」


 何当たり前のこと聞いてるんだって言う目、やめてくれないかな。小馬鹿にしたような感じで話された。私、悪くないと思う。意外なもので驚いたんだよ。


「はちみつが必要なら、他で代用すれば? はちみつは他にもあるよね?」

「はぁ、あなたのために最高級のはちみつを使っていたんですよ。他のはちみつでもいいですが、やっぱりあなたのために私は最高級のものを提供したいのです。最高級のものでなければ意味がない!!」

「いや、そこまで気にする必要ないと思う。私はあの劇薬ちゃんがあれば十分。最高級のはちみつじゃなくても作れるなら、作ってほしいな」


 アディクはフルフル震えていた。口元を手で押さえている。ヨロヨロと後退りして、私から距離をとっていった。



Copyright(C)2019-莱兎

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