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3-2

 ベッドに入ったら、十秒ほどで寝てしまう私が眠れなかった。眠気が全くやってこなかった。その日は一睡もせずに、ベッドから起き上がった。そのようなことが何度も続いた。

 心配した母にいくつもの病院に連れられるも、原因不明と言われ、投げ出された。母はそれでも諦めなかった。優秀な医者であった人を見つけてきて、その人に私を診察させた。


「これは、魔女の呪いじゃな。私たちにできることはなにもない。お嬢ちゃんも、変なのに目をつけられたのう」


 私は知っていた。だが、この元医者はどうやって魔女の呪いとわかったのだろうか。気になって聞いてみるも、教えてはもらえなかった。

 母は、優秀と言われていた医者に手の施しようがないと言われ、泣いた。魔女の呪いなんて、そんなおとぎ話のようなことあるはずがない。喚いていた。

 そのときからか、母はおかしくなっていったように思う。ぼんやりと宙を眺めたり、何もないのに泣いたり、何もないのにニコニコ笑ったりしていた。


 ある時、母は疲れたという手紙を一言残して消えた。その言葉の通り、母は疲れていたのだろう。魔女の呪いなんて、非現実的なもので私が眠れなくなっている。気が気じゃない。でも、母自身は何もすることができない。私とこれからどう付き合っていくべきか。これから母自身は娘のために何をしていけばよいのか。いろんなことを考えて、行動して、精神が疲弊したのだと思う。耐えられなくなって逃げたんだろう。

 眠れないとぼやいて、暗い顔をしている私との付き合いに、十年も持った母はすごい人。普通だったら、数日で根をあげてると思う。母がいなくなってからの生活は大変だった。だが、生活に困ることはなかった。母が私にお金を置いていってくれたからである。


 私は魔女を見つけなければならない。それで、暇な時に探しているのだが、見つけることはできなかった。顔も見ていない。小さい頃に会ったので、あんまり覚えていないこともある。ただ、魔女を見つけなければ、呪いは解かれないということだけは記憶に残っていた。


***


 魔女は君の近くにいる。君は気づいていないみたいだね。僕は、ある日迷子になった女の子に会った。女の子は泣きながら母を呼んでいた。僕はその子がなんだか気になったんだ。だから、その子に近づいて声をかけた。

 僕はそのときに気づいてしまった。女の子が僕の運命の相手だということに……。その子は印を持っていた。魔女の僕にしかわからない印。僕はその子を手に入れたくて手に入れたくてしょうがなかったんだ。だから、僕の下に来るようにいろいろなことをした。

 僕の願いは一つの縛り。呪いも僕のため。彼女の呪いがどんなものになるのかはわからない。だが、僕がそれを軽減するための手助けをしたら、僕から離れられなくなるだろう?


 申し訳ないが、彼女の母親には消えてもらった。死んだわけではない。僕が彼女の呪いを解いてあげることを条件に、母親には彼女から離れてもらったんだ。その際、母親が彼女を大事に思っていると悟られないように、ちょっといじった。精神を揺さぶった。

 頭の中で毎日毎日声が聞こえて、きっと怖かっただろうね。僕にとってはどうでもいいことだけど、失敗は許されないから真面目にやった。


 彼女の母親が僕の言葉に騙されてくれてよかったよ。呪いを解くも何も彼女次第だから、僕にはどうにもできない。嘘も方便ってやつだよね。

 僕以外が彼女のことを愛さないでほしい。彼女の可愛さを知らないでほしい。そう思ってやったことだ。


 またある時は、彼女と接触して自分さえ醜く見えるようにした。周囲の人間に彼女を取られたくなかったから、彼女の容姿を隠した。彼女と話すのは、僕だけでいい。彼女を見るのも、僕だけでいい。


 嫉妬に狂って、周囲に認知されないようにしたこともあった。彼女を無視する人たち。気づかない人たち。流石に、泣きそうな彼女をみて、やりすぎだったかなと思った。別に悲しそうな彼女を見ていたいわけではない。だから、認知されないようにしたのは、途中でとめた。


 君はいつになったら、僕がしたことに気付くだろうか。多分、僕が言うまで一生気づくことはないと思う。知ってしまっても、彼女が僕に愛想をつかさなければ、それでいい。もし拒絶されたら、どうしようかな。その時に考えよう。


 僕は君を待っている。いつ、僕を見つけたと言ってくれるのだろうか。僕は今の君との生活にも満足してるけど、ちょっと物足りない気もしてる。君が僕を好きになって愛してくれたらいい。とはいえ、感情は思うままに操れないから難しいものだね。

Copyright(C)2019-莱兎

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