裏話1
ひさびさに、小さな喧嘩を息子としたわ。もちろん、レノンちゃんを傷つけないように、避けていたわよ。隅っこで私たちの様子を見ていたようなのに、いつのまにか膝に顔をうずめていた。
部屋に数々の物やガラスの破片が散らばる中、レノンちゃん自身には傷一つついていない。彼女の周りに破片は落ちているため、危ないことには変わりないが……。
「レノン、もう終わりましたよ。危ないからそこを動かないでくださいね」
「……」
「あら? 返事がないわね。寝ているのかもしれないわ。アディク、レノンちゃんが寝ていたら、ベッドに運んであげなさい。優しくよ優しく!」
「お母様に言われなくてもわかってますよ」
ぶすくれた息子に、イラッとしたものの、表情には出さなかった。息子はフワッとレノンちゃんを浮かせると、散乱しているものを遠慮なく踏み抜いて、部屋を出ていく。
まったく、……貴方も後から片付けるのよ。でも、貴方がレノンちゃんを寝室に運んで帰ってくるまでは、私が片付けするのよ。さらに部屋を散らかしていかないでちょうだい。
文句を言ってやりたかったが、我慢をして、魔女の力を使った。粉々になったり、バラバラになったり、欠けたりした物たちが、少しずつ形を取り戻していく。
ガラスはガラスがあったところに、フヨフヨ浮いて戻っていき、ヒビは溶け合うように消えていく。他のものも同様だ。欠けたものが繋がり、ピシピシと音を立てて、元通りになっていく。
「時間を操るのはタブーなのに、便利だから使ってしまうのよね。まあ、バレなければ大丈夫よ。バレなければ……」
さて、一息つきましょう。その間、紅茶が飲みたいわね。私の分を淹れるついでに、息子の分も用意しておきましょう。喧嘩した後の仲直りは大事よね。家が吹っ飛ばなかっただけ、今回は軽かったわ。
息子が戻ってきて、軽口を言い合い、数日まったりとしていた。時々、レノンちゃんの様子を見に行き、彼女の無事を確認する。私たちは彼女が目覚めるのを待っていた。だが、一向に彼女が目覚める様子はない。三日目にして、驚いたことに、彼女は死にそうになっていた。
「私たちがレノンちゃんの体調管理もしているのになんで!?」
「そんなことより早く、レノンを目覚めさせましょう。死なせません。死んでは僕が困ります」
「ええ、そうね。レノンちゃんのことを見つつ、目覚める薬を作りましょう。なるべく早く材料を集めるわ。貴方はレノンちゃんのことを見ていてちょうだい!!」
「早くしてくださいよ!!」
言われなくても、早くするわよ。でも、急ぎすぎて、失敗したら元も子もないから、慎重かつ早く動くわよ。
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